『日本再起動 ―Re:BOOT JAPAN―』

KAORUwithAI

文字の大きさ

大中小

5 / 6

暴かれる真実

しおりを挟む

――203X年・4月下旬。
「再起動」作戦から2週間後。

日本は混乱していた。
テレビも新聞も、この言葉を無視できなくなっていた。

【REBOOT JAPAN】
――「彼らは、国民を裏切った」

SNSを起点に拡散された1本の映像は、やがて政府中枢をも揺さぶる。

そこに記されていたのは、
政治家と企業との癒着メールの原文、
特定宗教団体との秘密献金リスト、
そして、日本政府と某国との間で交わされた「移民定住促進計画」の非公開覚書（MOU）。

⸻

■ 映像の一部抜粋：

「この国は、もう“国民のための国”ではない。
我々の払う税は、老いた親を支えるためではなく、外国の口座に流れている。
年金は削られ、子供の未来は奪われる。
だが、政府の答えは“増税”と“我慢”だけだ。

ならば、問う。
君たちは、それでも黙って生きるか？」

⸻

政治家たちは一斉に否定し、映像を「偽造」と断定した。
だが、そのうちの一人――厚生労働副大臣の天羽重樹が突如辞任し、記者会見を開いた。

「……あの情報は事実です。
　私たちは、国民を守るどころか、自らが傷つける構造を容認してきた。
　神楽坂カイの行動が正しいとは思いません。
　ですが、彼が訴えた“怒り”は……間違っていない」

この発言が決定打となった。

世論は一気に傾く。
「再起動」はテロか、それとも正義か。
答えはもはや、国民の手に委ねられていた。

⸻

■ 公安調査庁・夜

志水京介は、誰もいない会議室で独り資料を見つめていた。

「天羽、あいつ……最後に良心を見せやがったか」

そして、志水の机には、ある“録音データ”が転送されていた。
送信者不明。だが、その音声は確かだった。

「神楽坂カイの計画、今後のターゲットは“法の中枢”。
最高裁、そして内閣府データベース」

データの最後には、ひとつの警告が添えられていた。

『このままでは、国家が壊れる。
　ただし、それは“偽物の国家”だ』

志水は眼鏡を外し、額に手を当てた。
職業として、公安刑事として、自分はカイを止めるべきだ。
だが、信念として、自分は彼の行動を理解している。

「正義がどこにあるのか、もう誰にも分からない……」

だが、そのときだった。
鳴海結花が緊急報告を持って走り込んできた。

「志水さん、カイたちが“最高裁判所”に侵入を計画しています！
　ネットワークのログに、彼らの進行中コードが混入されてました！」

志水はゆっくりと立ち上がった。

「……これは、最終フェーズに入る。
　公安じゃ止められん。
　政府が崩れる日が、近い」

⸻

■ 一方、再起動チーム拠点

神楽坂カイは、薄暗いモニター室で最後のスライドを見つめていた。
次なる標的――それは、国の「正義」を象徴する場所だった。

最高裁と、内閣府。

「最初は塔を壊した。
　次は“正しさ”を問う。
　この国が、本当に正しい国かどうか――国民に判断させるために」

背後でヒナが言った。

「世論は、あなたに傾いてる。でも、それは“希望”でしかない。
　実際に壊してしまえば、あなたは“英雄”ではなくなる」

「……構わない。
　俺は、正義の証明者にはならない。
　ただ、偽りを終わらせる者になればいい」

その言葉とともに、神楽坂カイは最終指令を下した。

「最終作戦コード：Phase3“深層判決”を、起動せよ」

しおりを挟む