お兄ちゃん絶対至上主義☆

藤宮りつか

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第四章 秘密

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 その日。朝から与一が酷く浮かれていたから、何でだろう? とは思っていた。
 蓋を開けてみると、今日は日向の妹と放課後デートすることになっていると聞き、俺は日向に

「え。いいの?」

 と聞いてみた。
 すると、日向からは

「いいんだ。俺が清良きよらに頼んで与一とデートしてもらうことにしたから」

 と、何やら訳ありな様子でそう返された。
 清良というのは日向の二つ年下の妹の名前だ。俺も清良とはそれなりに仲がいいけど、清良はその名前の通り、清楚可憐という言葉が似合う美少女であった。
 女好きな与一は当然清良のことがお気に入りだし、何なら清良と付き合いたいと思っているくらいだが、清良の方はあまり与一のことがタイプではないらしく、仲はいいが、与一のことを異性として見ていないところがあった。
 その清良に与一とのデートを頼むとは一体どういう風の吹き回しなんだろう。そんなことまでして、日向は何をしようとしているんだろう。

(これはきっと何かある……)

 そう思っていた俺は、その〈何か〉がまさか自分に関係があることだとは夢にも思っていなかった。



 俺が二日続けて教師からの呼び出しを受けた翌日のことだ。
 その日の放課後、意気揚々と清良とのデートに向かう与一の背中を見送った後

「真弥。今日は俺と腹を割って話そう」

 日向にそう言われた。

「え⁉」

 俺は当然びっくりした。
 何かあるんだろうとは思っていたけれど、その何かってやつが俺と腹を割って話すことだとは思いもしなかった。
 だけど、ここ最近の自分を振り返ってみると、日向には随分と心配を掛けてばかりだったと思うから、いつも理由を言わない俺に、とうとう日向も我慢ができなくなったのかもしれない。
 だが

(腹を割って話そうって言われても……)

 何をどう話せばいいっていうんだろう。俺が今置かれている状況は特殊過ぎて、日向には理解できないって気もするんだけど。
 とはいえ

「場所は真弥の家でもいいか? 真実さん、今日は早く帰って来る?」
「いや……。昨日休んじゃったから、今日は色々やることがあるって言ってたけど……」
「じゃあ早く帰ろう。真実さんがいたら真弥も話し難いことがあるかもしれないし、俺も真実さんと真弥の邪魔はしたくないから」
「う……うん……」

 今日は俺と腹を割って話す気満々の日向を邪険に扱うわけにもいかないから、俺は日向を連れて家に帰ることにした。
 どうしてそこは与一も一緒じゃないんだ? って思ったけど、それは日向の俺に対する気遣いなんだろうな。
 俺の感情が左右されることといえば兄ちゃんのことくらいのものだ。それを知っている日向は、兄ちゃんと馬が合わない与一抜きなら、俺が悩みを打ち明けてくれると思ったのかもしれない。
 でも、与一に

『与一は来ないで』

 なんて言えないから、妹の清良を餌に、与一を自然に俺達から遠ざけたってことなんだろうな。
 そこまでして、日向は俺と〈話をしなくちゃ〉って思っていてくれたのか。そういう友達思いなところは素直に嬉しいと思った。
 日向を連れて家に帰って来た俺は、まず日向にお茶を出してやると、日向は素直に俺の淹れたお茶に口をつけた。

「真弥の家にお邪魔するのも久し振りだなぁ。ご両親が亡くなって以来だから四年振り……かな? あんまり変わってなくて安心した」

 最初は如何にも友達同士の会話といった和やかな雰囲気だったけれど

「でも、この四年間で変わったこともあるんじゃないかな? 四年前はまだ大学生だった真実さんが社会人になったこともそうだけど、真実さんを取り巻く環境とか、真弥自身の環境の変化とか。真弥ってそういう話を全然俺達にしてくれないけど、最近の真弥を見てると俺は心配で……。真弥は迷惑に思うかもしれないけど、俺は真弥をほっとけないなって、ずっと思ってたよ」

 急に真顔になった日向にそう言われた俺は、内心ギクッとしてしまった。

(もしかして、日向は何か知っているんじゃ……)

 そんな気がした。
 そんな予感と不安が胸をよぎる俺は、真剣な顔で俺をジッと見詰めてくる日向に

「あのさ……。日向って何か知ってる?」

 恐る恐るといった感じで、真っ直ぐ俺を見ている日向にそう聞いてみた。

「……………………」
「……………………」

 息が詰まりそうになる沈黙が数秒流れた後

「あぁー…………。ごめん、真弥。俺、実は見ちゃったんだ。真実さんが鵜飼先生と遠山先生に凄いことされてるところ」

 その沈黙に耐えられなくなった日向が、物凄く申し訳なさそうな顔になってそう言ってきた。
 突然日向から「腹を割って話そう」って言われたことにもびっくりしたけど、日向が兄ちゃんとあの二人の情事を目撃していたことにはもっと驚いた。
 そりゃ日向も俺と「話さなきゃっ!」って気持ちになるよな。
 っていうか、凄いことされてるところって? 日向は兄ちゃんがあの二人に何をされてるところを見たっていうんだ。
 凄いことっていうのは、間違いなく兄ちゃんがあの二人にエロいことをされている場面なんだろうけど、俺はその時の状況というか、あの三人がどうしているところを見てしまったのかが凄く気になる。

「俺、真実さんがそんなことになっているだなんて全然知らなくて……。でも、最近真弥の様子がずっとおかしいし、昨日と一昨日は鵜飼先生や遠山先生に真弥が呼び出されていたから、きっと真実さんのことでゴタゴタしているんだろうってわかっちゃって……」
「何かごめんなぁっ! 兄ちゃんのことでまで日向に心配掛けちゃって!」

 マジかぁぁぁぁ……。俺でさえ見たことがないあの三人の衝撃的な場面を、日向は目撃しちゃったっていうのかよ。
 純粋無垢な日向にとって、それは言葉では言い表せないくらいの衝撃だったよな。一番見ちゃいけない人間が見ちゃったって感じだよ。
 というより何より、あいつらどこでヤってたんだよ。ヤるならヤるで、ちゃんと鍵とか掛けとけよな。
 見たのが日向だから大事にならずに済んだけど、他の人間に見られていたら、大騒ぎになるだけじゃ済まなかったぞ。

「真実さん、鵜飼先生や遠山先生と付き合ってるの?」
「いや……付き合ってるわけじゃないんだ。兄ちゃんはあの二人のこと、身体だけの関係だって言ってた」
「真実さんがっ⁉ え⁉ 真実さんってそういう人⁉」
「多分、あいつらのせいでそうなっちまったんだと思う。俺のせいで兄ちゃんしばらく彼女いなかったし。そんな時にあの二人から手を出されちゃったもんだから、兄ちゃんの中で何かが変わっちまったんじゃないかな」
「そうなんだ……意外。俺、真実さんは真面目で責任感がある人だと思ってたから、付き合ってもいない人とそういうことするような人じゃないと思ってたよ」
「俺もそう思ってたよ。でも、兄ちゃんも男だし。性欲だって普通にあるだろうから、付き合っていない相手でもセックスはできるってことなんだろ」
「うぅ……俺の知らない大人の世界だぁぁぁぁ……」

 まさか腹を割って話す内容が、いきなり兄ちゃんとあの二人の関係についてになるとは……。
 これは兄ちゃんに報告する必要ありだな。

『兄ちゃんとあの二人がヤってるとこ、日向に見られてんだけどっ! 何でそうなんの⁉ そういうことする時は気を付けろよなっ!』

 って、兄ちゃんを叱ってあげなきゃいけないし。

「それで、真弥は今どういう状況なんだ? 真実さんが鵜飼先生や遠山先生とそんな関係だってこと、真弥が許せるはずないから、今は鵜飼先生や遠山先生と争ってるって感じなのか?」
「ん……んん。まあ、そういう感じ……」

 本当はただ争っているだけじゃなくて、俺も兄ちゃんとヤることヤっているわけだけど。それを日向に言う必要はないよな。
 ただでさえ、日向は兄ちゃんとあの二人の衝撃的な場面を見てしまい、「俺の知らない大人の世界だ」ってショックを受けているんだから。
 そこへ「俺も兄ちゃんとヤってる」なんて言ってみろ。日向の精神状態が危ぶまれる事態だわ。

「そっかぁ……。それで真弥は二日続けて鵜飼先生や遠山先生に呼び出されたってわけなのか。大変だな」
「まあな。でも、このこと与一には……」
「もちろん言わないよ。そのために、今日は清良にも協力してもらって、真弥と二人だけで話す時間を作ったんだから」
「何か悪いな。でも、良かったのか? 俺のためとはいえ、清良を与一と二人っきりにさせちまって。清良は嫌がってなかった?」
「大丈夫。清良も与一のことは異性としてちょっと……って思っているだけで、与一そのものが嫌いなわけじゃないから。それに真弥は清良のお気に入りだから。俺が真弥の力になってあげたいって言ったら、与一とのデートも快く承諾してくれたよ」
「そっかぁ。今度何かお礼しなくちゃな。清良に」
「清良は真弥のことも真実さんのこともお気に入りだからな。来年はうちの高校に通うって、今は受験勉強頑張ってるみたいだよ」
「へー。そうなんだ」

 ここ最近、俺の様子がおかしいと思っていた日向は、その理由をやっと俺の口から聞けて安心したみたいだった。
 そういう俺も、今までずっとひた隠しにしていた秘密を日向に打ち明けることができて、ホッとしたところはある。
 別に嘘を吐いていたわけじゃないけど、友達にずっと隠し事をしているのも後ろめたいものがあるもんな。
 もっとも、日向が俺にこういう話を振ってきた背景には、兄ちゃんとあの二人のいかがわしい行為を目撃してしまったこともあるんだろうけど。

「何はともあれ、これで俺も真弥の事情ってやつがわかったわけだから、これからはあんまり一人で悩まず、困った時は遠慮なく俺に相談してよ」
「うん。そうする」

 事情が事情だし、まだ大事な秘密が残っているから、何でもかんでも相談することはできないかもしれないが。
 でも、こうして俺のことを気に掛けてくれる友達は大事にしようと思う。

「とりあえず、今すぐ俺に聞いて欲しい話はない? もしあるなら何でも聞くよ」
「そうだなぁ……。じゃあ……」

 ぶっちゃけ、昨日散々兄ちゃんに甘えて、俺の言いたいことも全部兄ちゃんに聞いてもらった俺は、今すぐ日向に聞いて欲しい話はないっちゃないんだけれど

「日向が見た兄ちゃん達って、何してるところだった?」

 日向が見てしまったという凄いことは、直接それを見た日向本人にしかわからないことだから、それについては日向の口から説明してもらいたいと思った。
 俺が話したいことではなく、俺が日向に聞きたいことを口にしたものだから

「えっ⁉」

 日向は物凄く驚いた声を上げ

「そ……それは……」

 顔を真っ赤にして、もじもじと恥ずかしそうにしていた。
 下ネタや猥談の類が苦手な日向に、この質問は酷だと思ったけれど、日向の恥ずかしがりようを見ると、何が何でも聞き出したいと思ってしまう俺がいた。


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