お兄ちゃん絶対至上主義☆

藤宮りつか

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最終話 前進

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 さて。そんなことがあった後も、兄ちゃんを巡って俺達三人の争いは続くわけなんだけど、時は流れ、俺が高校を卒業する頃には、ようやく決着がついたというか、一つの形が出来上がったという感じになった。
 つまりどういうことなのかというと、兄ちゃんが俺達三人の中からセックスする相手を一人に絞ってくれたということだ。
 まあ、正確に言ったら〈絞った〉のではなく、〈そうなった〉って感じではあるんだけれど。
 でも、俺が高校を卒業する前に、この関係に決着がついて良かったとは思う。
 高校を卒業し、四月から大学生になった俺は――。

「おはよ、兄ちゃん。今日は俺が朝飯作ろっか?」
「んん……頼むぅ……」
「了解」

 相変わらず兄ちゃんとは仲睦まじい生活を送っていた。
 高校生だった俺が大学生になったんだ。俺と兄弟の一線を越えた時はまだ二十四歳だった兄ちゃんも今は二十六歳。今年で二十七歳になる。
 二十代も後半になると、少しはこれまでの疲れや何やらが色々出てくるんじゃないかと思ったけれど、兄ちゃんは全く変わっていなかった。相変わらず元気で若々しいままだし、何なら可愛さは以前より増しているくらいだ。
 きっと兄ちゃんに〈老化〉や〈劣化〉という言葉は無縁なんだろう。

「わりぃ、真弥。お前に朝飯作んの任せちまって」

 俺がベッドから抜け出し、身支度を整えて台所で朝飯を作っていると、服を着替えて顔を洗った兄ちゃんがようやく顔を出し、台所に立つ俺の背中にぽすんっと顔を埋めてきた。
 朝っぱらから何可愛いことしてくれているんだろうか。そんなことをされたら、また兄ちゃんにエッチなことをいっぱいしたくなっちゃうじゃん。ほんと、兄ちゃんは俺を誘惑してくるのが上手いんだから。

「どうしたの? 兄ちゃん。まだ寝足りない? 昨日はちょっと無理させちゃったから、兄ちゃんの身体に負担を掛けちゃったかも。ごめんね」

 俺の背中にぴっとりとくっつき、立ったまま寝てしまいそうな兄ちゃんにそう言うと

「んー……寝足りねぇわけじゃねぇんだけどぉ……」

 兄ちゃんは俺の背中にぐりぐりと頭を押し付けてきて、何やら甘えた態度である。
 可愛いが過ぎるんだけど、俺に甘えてくる兄ちゃんが可愛いから好きにさせてあげることにする。
 昔に比べて今の兄ちゃんはかなり甘え上手になったというか、俺に甘えることにすっかり抵抗がなくなってしまったような気がする。
 おそらく、日常的に俺に抱かれるようになったことで、兄ちゃんの中で俺に甘えるのが当たり前になってしまったんだと思う。
 兄ちゃんに甘えられることが大好きな俺としては、非常に嬉しい変化だった。

「昨日はいっぱいシたから、まだ俺ん中にお前がいるみたいな感じがするんだよなぁ……。だからぁ、もうちょっとお前にくっついていたいっつーかぁ……」
「……………………」

 おい。くっっっそ可愛いな。マジで何なの? どういうつもり? 今日は俺に大学行かせないつもりか? でもって、自分も仕事を休むつもりでもあんの?
 そんな可愛いこと言われたら、俺も我慢ってものができなくなっちゃいそうなんだけど。

「兄ちゃん。朝飯の前にもっかいスる?」

 あまりにも可愛い兄ちゃんにムラムラしてしまう俺が、コンロの火を止めながら兄ちゃんを振り返ると、兄ちゃんは小さく笑って

「ダぁメぇ。今日は朝からやることいっぱいあんだから。朝っぱらから体力消耗するわけにはいかねぇのぉ」

 俺の誘いをやんわりと断ってきた。
 思わせぶりな態度で誘うだけ誘っておいて、いざこっちがその気になったらスルリとかわされてしまうような感覚。
 今日も俺はいい感じに兄ちゃんに振り回されているというか、兄ちゃんに弄ばれているって感じだな。
 まあ、そういう小悪魔的な兄ちゃんも犯罪的に可愛いから、俺はいくらでも振り回されてあげたいって気持ちになっちゃうんだけどさ。

「お前も今日はバイトの面接があるっつってただろ? お楽しみはまた後で……な?」

 俺の誘いをやんわり断った兄ちゃんだけど、どうやらそれは〈今はダメ〉ってだけのことらしく、今じゃないなら構わないらしい。
 そんなこと言われたら俄然やる気が出てきちゃうよな。〈今日一日を全力で頑張ろう!〉って気持ちになれる。

「わかった。じゃあ俺、今日はなるべく用事を早く済ませて家に帰るから、兄ちゃんも早く帰って来てね。帰ったらいっぱいエッチなことしてイチャイチャしよ」
「イチャイチャって……。まぁ、別にいいけどぉ……」

 自分からそういう空気を作り出したというのに、俺に「イチャイチャしよ」と言われると急に照れる兄ちゃんだった。
 まあ、それも仕方がないっちゃ仕方がないことだったりするんだけどね。
 今朝のやり取りを見る限りでは、俺と兄ちゃんって付き合っている恋人同士に見えなくもないんだろうけど、俺と兄ちゃんって別に付き合っているとか、恋人同士ってわけじゃないから。俺とイチャイチャするのには抵抗があるってことなんだろう。
 俺が高校を卒業する頃には、ようやく決着がついた――って言ったけれど、それは何も〈兄ちゃんが三人の中から俺を選んでくれた〉ということではない。消去法でいったら、三人いたセフレが一人に絞られたってだけの話だから。
 それはそれでどういうこと? って話だけれど、それについてもっと詳しく説明すると、ちょっと話が長くなる。
 高校二年生になった俺が兄ちゃんと兄弟の一線を越えてしまってからというもの、俺の日常には本当に色々なことが起こったし、様々な変化もあった。
 だけど、そんな中で唯一変わらなかったのが、兄ちゃんと俺の兄弟という関係であり、兄ちゃんと鵜飼先生や遠山先生の関係も相変わらずセフレのままだった。
 一番変わって欲しい部分が一向に変わらないことに、俺はもちろん、あの二人も次第に痺れを切らし始め、俺が高校三年生に進学して間もなく、まず鵜飼先生が限界を迎えた。
 元々恋多き人間だったみたいだから、ずっと一人の人間に縛られ続けることに疲れたのかもしれない。
 いつまで経っても自分を選んでくれない兄ちゃんに嫌気がさしたのではなく、一向に自分のことを恋愛的な意味で好きになってくれない兄ちゃんに自信を無くして、兄ちゃんを好きでいることが辛くなったんだと思う。

『俺、真実ちゃんのことマジで大好きだけど、これ以上真実ちゃんのこと好きでいるのも辛いから諦める』

 そう言って、兄ちゃんとのセフレ関係を自ら解消する決断をした。
 と言っても、ただ普通に兄ちゃんを諦めたわけじゃなくて、最後にちゃっかり我儘を聞いてもらい、二年間に及ぶ兄ちゃんとのセフレ関係を、自分の納得できる形で清算したんだけどな。
 俺が高三になってから最初の三ヶ月。兄ちゃんと鵜飼先生は期間限定の恋人同士だった。
 それが鵜飼先生の兄ちゃんを諦めるための条件だったのだ。
 三ヶ月でいいから自分と恋人同士になってくれたら、兄ちゃんのことはスッパリ諦めるというのが、鵜飼先生の出した答えだった。
 正直、「そんなやり方アリ⁉」って驚いた。
 だって、たった三ヶ月だろうと何だろうと、三ヶ月は兄ちゃんと恋人同士になれるわけでしょ? それって何かズルくない?
 でもまあ、兄ちゃんのことを好きでいながら、二年間もセフレという関係に留まっていたわけだから、たった三ヶ月でも最後は兄ちゃんと恋人同士になってから、兄ちゃんとの関係を終わらせたいと思うよな。
 兄ちゃんもそんな鵜飼先生の気持ちを汲んであげることにしたから、兄ちゃんに鵜飼先生の彼女になるつもりはなかったけれど、形だけは鵜飼先生と恋人関係を結ぶことにしてあげた。
 兄ちゃんに恋愛的な意味で鵜飼先生を想う気持ちはなかったものの、一応は恋人同士という関係になったから、その間俺は兄ちゃんと一度もセックスができなかった。
 それが俺にとっては地獄のように辛い日々だったけれど、それで障害が一つ減るのであれば――と、俺は辛い毎日を必死で耐えた。耐え抜いた。
 あの地獄の三ヶ月は思い出したくもないし、あんな辛い思いをするのはもう二度とごめんだと思う。
 鵜飼先生のことだから「三ヶ月」と言いながら、そのままずるずる兄ちゃんとの関係を続けるんじゃないかという心配もあったんだけど、兄ちゃんと恋人同士になってからぴったり三ヶ月後。鵜飼先生は本当に兄ちゃんときっぱり別れて、そこからはただの職場の同僚へと戻った。
 まあ、一度恋人関係を結んでしまった以上、兄ちゃんと鵜飼先生の関係はただの職場の同僚ではなく、元カレと元カノってことにもなっちゃうわけだけど。
 でもまあ、兄ちゃんと一度恋人同士になったからこそ、鵜飼先生も兄ちゃんのことを潔く諦められたんだと思う。
 今はもう兄ちゃんとおかしな関係になることもないし、新しい相手を見つけて、その相手と上手くやっているみたいだから、鵜飼先生的にも良かったんだと思う。
 そうやって兄ちゃんと鵜飼先生の関係は後腐れなく清算されたわけだけど、その時点ではまだ遠山先生が残っていた。


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