お兄ちゃん絶対至上主義☆

藤宮りつか

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最終話 前進

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 さてさて。ゴールデンウィークが終わってしばらくすると、新しい大学生活が当たり前の日常になり、気持ち的にも少し余裕が出てきた。

「真弥ぁ。明日ってバイトかぁ?」

 四月の終わりからアルバイトを始めた俺は、兄ちゃんと過ごせる貴重な時間を犠牲にしなくちゃいけない時もあるんだけれど、アルバイトをすることは兄ちゃんのためであり、自分のためでもあるから、そこは我慢するしかなかった。
 今までは毎月兄ちゃんから小遣いを貰っていたけれど、それってやっぱ兄ちゃんにとっては負担だし。高校生までは兄ちゃんがバイトを許してくれなかったから仕方がないけれど、大学生になったんだから、俺も自分で使うお金くらいは自分で稼がなくちゃだよな。
 それに、毎年やって来る兄ちゃんの誕生日にあげる誕生日プレゼントを、兄ちゃんから貰った小遣いで買うのも何だかなぁ……だし。
 せっかくアルバイトが解禁になったのなら、自分の稼いだ金で兄ちゃんに誕生日プレゼントを買ってあげたいよな。
 まあ、学生の本分は勉強だし、俺は兄ちゃんみたいにオールマイティーな教師を目指しているから、アルバイトも程々にするつもりではあるんだけれど。
 それでも、週に三日バイトをする生活を一ヶ月続ければ、毎月の給料は今まで貰っていた小遣いより遥かに高額になる計算だ。兄ちゃんに頼ってばかりじゃない自立した男になるためにも、アルバイトは俺のやるべきことの一つだった。
 兄ちゃんも大学生になってアルバイトを始めた俺に何も言ってこなかったけれど、毎晩必ずと言っていいほど、俺に明日はバイトがあるのかどうかを聞いてくることを忘れなかった。

「ううん。明日は休み。アルバイトは大事だけど、俺は兄ちゃんと一緒に過ごす時間も大事だから。ちゃんと兄ちゃんと一緒に過ごす時間も持てるようにシフトを調整してるから」
「そっかぁ。じゃあ明日は家にいるんだな」
「うん。そうだよ」

 今日は土曜日。明日の俺が休みだと知って、ホッとした顔になる兄ちゃん。

(もしかして、俺と一緒にいたいのかな?)

 先週は人がいないからって理由で土日のどっちもバイトだったし、その前のゴールデンウィークもずっとバイトだったから、せっかくの休日を全然兄ちゃんと一緒に過ごせなかったんだよな。

「ひょっとして兄ちゃん……」

 淡い期待に胸を膨らませかけた俺だったけれど

「それなら明日は凛を呼んでも大丈夫だな。この前会った時、久し振りにお前に会いたいっつってたから」

 兄ちゃんの見せた安堵の表情は、俺と二人っきりで一緒に過ごせることに対する喜びではなく、大学時代からの親友を家に招ける安堵感からのようだった。
 兄ちゃんは俺がいなくても好きな時に好きなだけ凜さんを家に呼べるし、実際俺がバイトで留守にする機会が増えたと同時に、凜さんを家に呼んで一緒に過ごす時間が増えているみたいだったけれど、明日はどうやら俺が一緒にいた方がいいらしい。
 そう言えば、大学生になってからまだ凜さんに会っていないな。だから、凜さんが俺に「会いたい」って言ってくれているみたいだ。
 ちなみに、凜さんと例の彼女の中は順調で、今度お互いの両親にお互いを紹介するって話にもなっているそうだ。
 兄ちゃんが言うには、近いうちに結婚の話も出るんじゃないかって。
 それはそれで物凄くおめでたい話だと思うけれど、兄ちゃん的には親友の結婚をどう受け止めるのかが気になるところだ。
 両親が亡くなって以来、兄ちゃんには彼女という存在がずっといないけれど、俺が大学生になり、親友の凜さんが結婚するってなると、さすがに兄ちゃんも自分の将来を考え始めるのかな?
 そろそろ俺も……なんて思ったりするんだろうか。

「何だ。明日は久し振りに兄ちゃんと二人っきりで過ごせるかと思ったのに」

 凜さんが家に来ることは全然嫌じゃないし、何なら俺も久し振りに凜さんに会いたい。
 だけど、休日を兄ちゃんと二人っきりで過ごしたいって気持ちもあるっちゃあるから、兄ちゃんを後ろからふんわりと包み込んで、ちょっとだけ拗ねた口調で言ってみると

「ん~? じゃあ明日は凛呼ぶのやめとくかぁ?」

 兄ちゃんは身体を捻って俺の顔を見上げてくると、めちゃくちゃ優しい顔でそう言ってきた。
 いやもう……俺の彼女感半端ねぇんだけど。これで付き合ってないとか嘘だろ? ってなるじゃん。

「ううん。いいよ。俺も凜さんに会いたい」
「んだよ。どっちなんだぁ?」
「両方だよ。兄ちゃんと二人っきりでのんびり過ごしたいけど、凜さんにも会いたい」
「どっちもなんて欲張りだなぁ、お前は」
「うん。俺って欲張りなんだ」

 如何にも恋人同士っぽい甘い雰囲気に任せて兄ちゃんの唇にキスを落とすと、兄ちゃんも俺のキスに応えてくれた。
 そのまま何度も唇を重ねているうちに、お互いキスだけじゃ物足りなくなってきちゃうから

「真弥ぁ……」
「ん……。ベッド行く?」
「んん……」

 とまあ、そういう流れになる。
 付き合っているわけじゃない俺と兄ちゃんの日常が、まさかこんなに甘々でイチャイチャしているものだとはみんなも思っていないだろうな。
 でも、俺としかセックスしなくなった兄ちゃんは、俺と恋人同士にならなくてもこんな調子だったりするから、俺も〈別に付き合うことにこだわらなくてもいっか〉ってなっちゃうんだよな。
 本音と言ったらめちゃくちゃ付き合いたいけどさ。
 だけど、今の兄ちゃんを見ていると、俺だけの兄ちゃんだって思えたりもするから、俺の心も満たされてはくれる。

「明日何時に凜さんを呼ぶ予定?」
「昼過ぎ」
「だったら朝はゆっくりできるね。俺も明日はバイトないから、今日は兄ちゃんといっぱいエッチなことできるよ」
「ん……」

 俺の部屋のベッドに兄ちゃんを連れて来た俺は、改めて兄ちゃんを抱き締めると、愛情を込めたキスをいっぱい兄ちゃんにしてあげた。
 俺が兄ちゃんに優しいキスをいっぱいしてあげると、兄ちゃんはすぐに感情を昂らせ、明らかに感じている反応を見せ始めた。

「真っ、弥ぁ……ぁんっ……んんっ……」
「どうしたの? 兄ちゃん。今日は感じやすくなってない?」
「んなこと……ぁんんっ、ぁ……いつもと一緒ぉ……」
「そう? でも、今日の兄ちゃんは凄く可愛い。まあ、兄ちゃんはいつも可愛いんだけどさ」
「可愛いって……言うなぁ……」

 ちょっとキスをしただけで、もう全身がふにゃふにゃになってしまっている兄ちゃんの頭を撫でながら、いっぱいいっぱいキスをしていると、兄ちゃんの身体はどんどん熱くなっていった。
 弟相手に可愛い姿晒し過ぎだろ、って思うけど、これが俺の兄ちゃんなんだよなぁ。ほんと、どういうつもりでいるんだか。
 まあ、兄ちゃんが可愛いのは大歓迎だからいいんだけどさ。

「兄ちゃん」
「ん……」

 気持ちが昂ってくると、どうしても邪魔になってしまう服を取り除いてしまうと、俺は兄ちゃんに覆い被さり、兄ちゃんの首に唇を這わせた。

「んんっ……ゃ、あ……痕は……」
「大丈夫。つけないよ。兄ちゃんは俺だけのものだってみんなに自慢したいけど、兄ちゃんの首についたキスマークを見て、誰かに変な妄想はされたくないもん。兄ちゃんのエッチで可愛い姿は、全部俺の目に焼き付けるだけにするよ」
「ぉ……俺もぉ……。エロいことしてる真弥は兄ちゃんだけの真弥だからぁ……。誰にも見せたくねぇし、想像されたくねぇ……」
「そうなの? 何か俺達段々似てきたね」
「ぁんんっ……だってぇ……兄弟だからぁ……似てんのは当たり前っ……だろぉ……」
「そうだね」

 兄弟だから似ているのは当たり前――。それは確かにそうなんだろうけど、俺の言う〈似てきた〉は、兄ちゃんの俺に対する考え方というか独占欲が、恋愛的な意味で兄ちゃんを好きな俺に似てきたって意味なんだけどな。
 おそらく、感じることに忙しい兄ちゃんは、そのことに気が付いていなさそうだけど、ここ最近の自分の変化というものに、全く自覚はないんだろうか。
 自分の言動が今までと違ってきていることを兄ちゃんが自覚してくれれば、俺と兄ちゃんの関係も少しは変わってくるような気がしなくもない。


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