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第五章 迷い、見失い、それでも
03 取り戻した自分
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その日は土曜日だった。
湊は梓と待ち合わせて映画を見に行った。大仰なキャスケットと伊達メガネで変装しているのは、やましいところがあるからだ。
前夜、梓から電話があった。
『湊、明日映画付き合いなよ』
『君は……私が暇で断らないって前提で話をしてるのかい?』
『じゃあ、付き合って下さい、お願いします』
『まあ、そう言うならやぶさかじゃないけど……』
そんなノリで押し切られ、結局OKしてしまったのだ。
(イケメンだな……。そしてかわいい……)
並んで歩く幼なじみの横顔に、そんな感想を抱く。
もともと梓は女顔で、かわいいイケメンであることを武器にしている。今日も女装こそしていないが、かわいさとかっこよさをバランス良く演出している。
シンプルなアクセサリーと袖あまりが、とてもあざとい。
「手、つないでもいいかな?」
「うん……いいよ……」
梓のことは、今でも大切に思っているし好きだ。
湊は梓と手を重ねる。再び女になったせいだろう。大きくてあったかい。
幼なじみの顔が近い。ドキドキするが、少し不安になる。
最近の梓は、「セックスしよう」オーラをあからさまにまとっていて、少し怖いのだ。そして、自分は本気で求められればきっとやぶさかではない。
「あ……」
「湊、好きだよ……」
不意打ちで人気のない裏路地に導かれ、湊は梓に抱きしめられていた。
背は自分の方が高いが、梓の身体はたくましく暖かかった。ポーッとしてしまい、抵抗する自由を奪われてしまう。
(だめだ……俺には雪美ちゃんが……)
いまさら、彼女に対して悪いと思う。梓の下心を察していてデートに応じておきながら、白々しく浮気に抵抗を感じている。
「卑怯……かな……? 湊が寂しそうだから……。つけいる隙があるからこうするのって……? でも……湊には笑ってて欲しいから……」
「梓……」
歯の浮くような言葉でも、湊はうれしくなってしまう。自分は梓に思われている。そう感じて、胸の奥がキュンとする。
「湊のことが好きだから……ボクのものになって欲しいから……。したい。ねえ……しよう……?」
「そういうの反則じゃない……。うん……いいよ……。しようか……」
ふと、梓が中学まで部活は剣道で、めっぽう強かったことを思い出す。強さの秘密は、間合いの取り方のうまさだった。
相手が押し出してくれば一度引き、隙ができたら一気に踏み込んでたたみかける。
それを恋愛にも巧みに応用している。
(1本取られたかな……。こんなふうに押されたら……。抵抗できないよ……)
湊の下腹部は、すでにジュンと熱くなっていた。梓を求める気持ちが溢れて、がまんができなくなっていた。
ホテルに入り、先にシャワーを使った湊はぼんやりとベッドに腰掛けている。
(梓のことは好きだ……でも……こんなのはいけない……)
自分も梓もれっきとした彼女がいる。これは完全に浮気だ。しかも両者前科がある。今度は許してもらえないだろう。なにより、これではふたりで堕落していくだけだ。
互いに心の弱さゆえに、恋人を裏切って性欲とノリのままに交わろうとしている。
(ものは考えようか……梓のものになってしまえば……。雪美ちゃんと別れる踏ん切りもつくかも知れないし……)
最低の考え方だと、自分でも思う。
だが、自分の弱さと向き合うのがどうしても怖かった。このまま、自堕落な快楽に溺れてしまう方が楽だ。そう思えてしまうのだ。
「お待たせ、湊……」
梓がバスタオル一枚の姿でシャワールームから出てくる。
華奢で肌がきれいだが、胸の膨らみはないし、股間には猛り狂ったものがついている。間違いなく男の身体だった。
(これで……女装するとあんなにきれいでかわいいいんだよな……)
ふとそんなことを思う。
そして、また気持ちが沈む。女装した梓の美しさと色気に迷って、自分は雪美を裏切ってしまった。そして、今また……。
「じゃあ、楽にしててよ……」
そう言った湊は、バスタオルを巻いた姿のまま梓の股間の前にひざまずく。幼なじみが、自分の胸の谷間に目を奪われている。少しうれしくなる。
「あむ……」
勃起したものにキスし、唇と舌で奉仕を始める。
「湊……気持ちいい……出るよ……!」
梓は口奉仕が始まってからいくらもしない内に果てていた。どうやら、自分のテクニックはそれなり以上のものらしい。湊は少し誇らしくなる。
「すごく上手だったよ……湊……」
「ふふ……君のために練習したからね……」
半分リップサービス、半分本当だった。いずれ、梓とセックスをするときは来るだろうと思っていた。自主的に勉強し、研鑽していたのだ。
「じゃあ今度はボクが湊を……」
「うん……気持ちよくしてね……」
仰向けで股を開いた港に、梓が触れる。元が女だからだろうか、驚くほど穏やかで優しいのに、信じられないほど心地いい。
(ああ……だめっ……だめっ……!)
あっさりと、湊は果てていた。幼なじみの舌と手は、自分で触れるのとは比べものにならないくらい素晴らしかった。
(でも……やっぱり雪美ちゃんとは違うな……)
不遜にも、湊は梓と雪美を比べていた。
雪美の愛撫も優しかったが、自然な感じが安心感をもたらした。能動的に快楽を送り込もうとせず、こちらが感じるのを待つ。女ならではの丁寧さと繊細さだった。
(まあ……今そんなことを考えるもんでもないか……)
湊は思考を閉じた。今は、ただ梓とのセックスを楽しめばいい。
「じゃあ、四つん這いになってくれるかな……?」
「ええ……? バックから……?」
「初めては……この方が楽だっていうからさ……」
「わ……わかったよ……」
湊は渋々四つん這いになる。犬の交尾のようで恥ずかしいが、梓に逆らえない。
幼なじみの手が腰のくびれをつかみ、背中に心地いい重さを感じる。コンドームをつけたものの先端が、濡れた花びらにあてがわれる。
(しちゃうんだ……セックス……)
そう思った時だった。
(な……なに……? 急にお腹が……)
下腹部がズンと重くなり、背筋を嫌な汗が伝う。
(やばい……生理始まった……こんなときに……)
急速にこみ上げてくる違和感は、やがてズキンという痛みとなって身体を突き抜けた。
その瞬間、湊の中でなにかが切り替わった。
(あれ……? 俺……今までなにしてたんだ……?)
急に夢から覚めた気分だった。
麻痺していた神経がにわかに敏感になり、止まっていた時が動き出す。そんな感覚だ。
ふと、視界の隅に女の顔が見える。
ベッドサイドに平行に貼り付けられた、細長い鏡。自分たちにセックスを観察するためのものだ。
(え……この女誰……?)
鏡に映った自分の顔が、一瞬誰かわからなかった。
媚びを売るようなコスメ。これ見よがしなあざといヘアピンやピアス、ネックレス。
美しいか醜いかでいえば、間違いなく美しい。
だが湊には、自分の虚像があまりにも嘘くさく思えた。自分を見失い、取りあえず飾り付けただけの、字義通り上っ面。
生理が来た瞬間、見える世界が変わった。先ほどまでなんとなく悪くないと思っていた自分の姿が、ひどく忌まわしく感じた。
(違う……こんなの……こんなの私じゃ……俺じゃない……!)
胸中に叫ぶ。急に思考停止していられなくなる。このままではいけないと思えてくる。プカプカ浮いている場所の居心地が悪くなる。
(向き合わなきゃ……はっきりさせなきゃ……。雪美ちゃんのこと……。それに梓のことも……梓は大切な人だから……雪美ちゃんから逃げる口実にしちゃいけない……!)
それまでできなかった決心が、一瞬でついていた。湊は、自分と、周囲と向き合う腹を括っていた。雪美とも、梓とも。今のままではいけない。
「梓……ごめん……。生理始まったわ……今日は勘弁して……」
「そうなの……? わかったよ。女の子には深刻な問題だもんね……」
梓は素直に腰を引く。こんな状況だが、湊は梓をまた少し好きになった。
「梓は優しいな……」
「湊は大事な女の子だもん……。強引にするなんてできないよ……」
勃起したものを持て余して苦しいだろうに、梓は優しく笑ってくれる。
(俺はなにをやってるんだ? こんなに優しい梓に……いい加減な気持ちで接しちゃいけない……)
湊は、不実で優柔不断な自分を恥じた。今ならはっきり言える。ムードに流されずに、梓をきっぱりと拒絶すべきだったのだ。
梓のことは好きだ。セックスもしたいと思っている。でもそれは、雪美とのことをきっちりとして、みんなで幸せになる準備ができてからのことだ。
その場の流れで身体を許してはいけない。それでは、みんな意味もなく傷ついて終わるだけだ。
「なあ……梓……。申し訳ないけど……もう少しだけ待ってくれないか……? 俺……やっぱり雪美ちゃんのことが好きだ。彼女に隠れてこそこそ梓と突き合うのは……やっぱりいけないと思うんだ」
湊は、今日初めて梓の目をまっすぐに見つめる。怖かったのだ。幼なじみで大好きな男の目を見ると、自分の不実を見透かされそうで。
「そっか……。待ってるよ、湊……。なにがあっても、ボクはキミが好きだ」
「うん。俺も梓が好きだよ。待っていてくれ」
笑い合ったふたりは、シャワーを浴びてホテルを出る。
空はいつの間にか雲行きが怪しくなり、今にも降り出しそうだ。
(この空は、この先の俺たちの運命……。でも、もう逃げない)
湊はどんよりした空に、却ってすがすがしい気分だった。覚悟を決めたから。プカプカ浮くのはもうやめ。どんな雨風の中だろうと、嵐の海だろうと必死に泳ぐと。
愛おしい人が待つ場所へと向かうのだと。
湊は梓と待ち合わせて映画を見に行った。大仰なキャスケットと伊達メガネで変装しているのは、やましいところがあるからだ。
前夜、梓から電話があった。
『湊、明日映画付き合いなよ』
『君は……私が暇で断らないって前提で話をしてるのかい?』
『じゃあ、付き合って下さい、お願いします』
『まあ、そう言うならやぶさかじゃないけど……』
そんなノリで押し切られ、結局OKしてしまったのだ。
(イケメンだな……。そしてかわいい……)
並んで歩く幼なじみの横顔に、そんな感想を抱く。
もともと梓は女顔で、かわいいイケメンであることを武器にしている。今日も女装こそしていないが、かわいさとかっこよさをバランス良く演出している。
シンプルなアクセサリーと袖あまりが、とてもあざとい。
「手、つないでもいいかな?」
「うん……いいよ……」
梓のことは、今でも大切に思っているし好きだ。
湊は梓と手を重ねる。再び女になったせいだろう。大きくてあったかい。
幼なじみの顔が近い。ドキドキするが、少し不安になる。
最近の梓は、「セックスしよう」オーラをあからさまにまとっていて、少し怖いのだ。そして、自分は本気で求められればきっとやぶさかではない。
「あ……」
「湊、好きだよ……」
不意打ちで人気のない裏路地に導かれ、湊は梓に抱きしめられていた。
背は自分の方が高いが、梓の身体はたくましく暖かかった。ポーッとしてしまい、抵抗する自由を奪われてしまう。
(だめだ……俺には雪美ちゃんが……)
いまさら、彼女に対して悪いと思う。梓の下心を察していてデートに応じておきながら、白々しく浮気に抵抗を感じている。
「卑怯……かな……? 湊が寂しそうだから……。つけいる隙があるからこうするのって……? でも……湊には笑ってて欲しいから……」
「梓……」
歯の浮くような言葉でも、湊はうれしくなってしまう。自分は梓に思われている。そう感じて、胸の奥がキュンとする。
「湊のことが好きだから……ボクのものになって欲しいから……。したい。ねえ……しよう……?」
「そういうの反則じゃない……。うん……いいよ……。しようか……」
ふと、梓が中学まで部活は剣道で、めっぽう強かったことを思い出す。強さの秘密は、間合いの取り方のうまさだった。
相手が押し出してくれば一度引き、隙ができたら一気に踏み込んでたたみかける。
それを恋愛にも巧みに応用している。
(1本取られたかな……。こんなふうに押されたら……。抵抗できないよ……)
湊の下腹部は、すでにジュンと熱くなっていた。梓を求める気持ちが溢れて、がまんができなくなっていた。
ホテルに入り、先にシャワーを使った湊はぼんやりとベッドに腰掛けている。
(梓のことは好きだ……でも……こんなのはいけない……)
自分も梓もれっきとした彼女がいる。これは完全に浮気だ。しかも両者前科がある。今度は許してもらえないだろう。なにより、これではふたりで堕落していくだけだ。
互いに心の弱さゆえに、恋人を裏切って性欲とノリのままに交わろうとしている。
(ものは考えようか……梓のものになってしまえば……。雪美ちゃんと別れる踏ん切りもつくかも知れないし……)
最低の考え方だと、自分でも思う。
だが、自分の弱さと向き合うのがどうしても怖かった。このまま、自堕落な快楽に溺れてしまう方が楽だ。そう思えてしまうのだ。
「お待たせ、湊……」
梓がバスタオル一枚の姿でシャワールームから出てくる。
華奢で肌がきれいだが、胸の膨らみはないし、股間には猛り狂ったものがついている。間違いなく男の身体だった。
(これで……女装するとあんなにきれいでかわいいいんだよな……)
ふとそんなことを思う。
そして、また気持ちが沈む。女装した梓の美しさと色気に迷って、自分は雪美を裏切ってしまった。そして、今また……。
「じゃあ、楽にしててよ……」
そう言った湊は、バスタオルを巻いた姿のまま梓の股間の前にひざまずく。幼なじみが、自分の胸の谷間に目を奪われている。少しうれしくなる。
「あむ……」
勃起したものにキスし、唇と舌で奉仕を始める。
「湊……気持ちいい……出るよ……!」
梓は口奉仕が始まってからいくらもしない内に果てていた。どうやら、自分のテクニックはそれなり以上のものらしい。湊は少し誇らしくなる。
「すごく上手だったよ……湊……」
「ふふ……君のために練習したからね……」
半分リップサービス、半分本当だった。いずれ、梓とセックスをするときは来るだろうと思っていた。自主的に勉強し、研鑽していたのだ。
「じゃあ今度はボクが湊を……」
「うん……気持ちよくしてね……」
仰向けで股を開いた港に、梓が触れる。元が女だからだろうか、驚くほど穏やかで優しいのに、信じられないほど心地いい。
(ああ……だめっ……だめっ……!)
あっさりと、湊は果てていた。幼なじみの舌と手は、自分で触れるのとは比べものにならないくらい素晴らしかった。
(でも……やっぱり雪美ちゃんとは違うな……)
不遜にも、湊は梓と雪美を比べていた。
雪美の愛撫も優しかったが、自然な感じが安心感をもたらした。能動的に快楽を送り込もうとせず、こちらが感じるのを待つ。女ならではの丁寧さと繊細さだった。
(まあ……今そんなことを考えるもんでもないか……)
湊は思考を閉じた。今は、ただ梓とのセックスを楽しめばいい。
「じゃあ、四つん這いになってくれるかな……?」
「ええ……? バックから……?」
「初めては……この方が楽だっていうからさ……」
「わ……わかったよ……」
湊は渋々四つん這いになる。犬の交尾のようで恥ずかしいが、梓に逆らえない。
幼なじみの手が腰のくびれをつかみ、背中に心地いい重さを感じる。コンドームをつけたものの先端が、濡れた花びらにあてがわれる。
(しちゃうんだ……セックス……)
そう思った時だった。
(な……なに……? 急にお腹が……)
下腹部がズンと重くなり、背筋を嫌な汗が伝う。
(やばい……生理始まった……こんなときに……)
急速にこみ上げてくる違和感は、やがてズキンという痛みとなって身体を突き抜けた。
その瞬間、湊の中でなにかが切り替わった。
(あれ……? 俺……今までなにしてたんだ……?)
急に夢から覚めた気分だった。
麻痺していた神経がにわかに敏感になり、止まっていた時が動き出す。そんな感覚だ。
ふと、視界の隅に女の顔が見える。
ベッドサイドに平行に貼り付けられた、細長い鏡。自分たちにセックスを観察するためのものだ。
(え……この女誰……?)
鏡に映った自分の顔が、一瞬誰かわからなかった。
媚びを売るようなコスメ。これ見よがしなあざといヘアピンやピアス、ネックレス。
美しいか醜いかでいえば、間違いなく美しい。
だが湊には、自分の虚像があまりにも嘘くさく思えた。自分を見失い、取りあえず飾り付けただけの、字義通り上っ面。
生理が来た瞬間、見える世界が変わった。先ほどまでなんとなく悪くないと思っていた自分の姿が、ひどく忌まわしく感じた。
(違う……こんなの……こんなの私じゃ……俺じゃない……!)
胸中に叫ぶ。急に思考停止していられなくなる。このままではいけないと思えてくる。プカプカ浮いている場所の居心地が悪くなる。
(向き合わなきゃ……はっきりさせなきゃ……。雪美ちゃんのこと……。それに梓のことも……梓は大切な人だから……雪美ちゃんから逃げる口実にしちゃいけない……!)
それまでできなかった決心が、一瞬でついていた。湊は、自分と、周囲と向き合う腹を括っていた。雪美とも、梓とも。今のままではいけない。
「梓……ごめん……。生理始まったわ……今日は勘弁して……」
「そうなの……? わかったよ。女の子には深刻な問題だもんね……」
梓は素直に腰を引く。こんな状況だが、湊は梓をまた少し好きになった。
「梓は優しいな……」
「湊は大事な女の子だもん……。強引にするなんてできないよ……」
勃起したものを持て余して苦しいだろうに、梓は優しく笑ってくれる。
(俺はなにをやってるんだ? こんなに優しい梓に……いい加減な気持ちで接しちゃいけない……)
湊は、不実で優柔不断な自分を恥じた。今ならはっきり言える。ムードに流されずに、梓をきっぱりと拒絶すべきだったのだ。
梓のことは好きだ。セックスもしたいと思っている。でもそれは、雪美とのことをきっちりとして、みんなで幸せになる準備ができてからのことだ。
その場の流れで身体を許してはいけない。それでは、みんな意味もなく傷ついて終わるだけだ。
「なあ……梓……。申し訳ないけど……もう少しだけ待ってくれないか……? 俺……やっぱり雪美ちゃんのことが好きだ。彼女に隠れてこそこそ梓と突き合うのは……やっぱりいけないと思うんだ」
湊は、今日初めて梓の目をまっすぐに見つめる。怖かったのだ。幼なじみで大好きな男の目を見ると、自分の不実を見透かされそうで。
「そっか……。待ってるよ、湊……。なにがあっても、ボクはキミが好きだ」
「うん。俺も梓が好きだよ。待っていてくれ」
笑い合ったふたりは、シャワーを浴びてホテルを出る。
空はいつの間にか雲行きが怪しくなり、今にも降り出しそうだ。
(この空は、この先の俺たちの運命……。でも、もう逃げない)
湊はどんよりした空に、却ってすがすがしい気分だった。覚悟を決めたから。プカプカ浮くのはもうやめ。どんな雨風の中だろうと、嵐の海だろうと必死に泳ぐと。
愛おしい人が待つ場所へと向かうのだと。
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