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押しかけ護衛はNoとは言えない
9 テンプレに憧れてました、ちょっとだけ
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ジャダはいつもの服に、黒い革のベストを着ていた。
なんとかの皮で、刀どころか物理攻撃は弾くと言う優れ物だ。
腰に二本の剣帯だけの姿は、伸びた背筋と締まった筋肉ボディを際立たせて
イケメン度が神々しいくらいに三割以上はUPしていた。
ザ・上位冒険者って感じでドキドキしちゃう漢っぷりだ。
かたやレンはといえば、お約束のフードをすっぽりとかぶらされて「顔を出さない」という約束をさせられていた。
こんなん被ってたら周りが見えないじゃん!
というちっちゃい不満は、すぐに泡となって溶け落ちた。
だって、冒険者ギルドの近くはそれっぽいのだ。
周りの通行人も、堅気っぽくないのだ。
屋台のおっちゃんもおばちゃんも二の腕は樽で入れ墨が入ってる。
しかも"クレーマーは潰すぜ"を前面に出してるようだった。
レンの知ってるのほほんとした市場や屋台とは人種が違う気がする。
その視線が見知らぬ自分に集まってる様で、レンはちょっとビビりながら小走りでジャダの後ろに着いていた。
両開きの扉を押し開けると、油の足りない蝶番が嫌な音を立てた。
明るい外から入ると室内は薄暗くて目が眩んだ。
埃と酸っぱい汗の匂いがする。
雑多な煮物とアルコールの匂いもする。
目が慣れてくるとギルドの中は広くて、天井は高く天窓から光が差し込んでいた
上から吊るされたギルドの紋章のタペストリーが、埃の粒を弾いてキラキラ光っている。
辺りを見回すと二階がある。
資料室とか会議室とかだろうな。
もっとざわざわ賑わってると思ったのに、人はまばらだった。
今日はこの地区のギルドに到着申請だけだからと言われて、逸る心を押さえ込んでゆっくり朝食を食べてきた。
だから早朝に仕事に行く人はいなくなってるようだ。
騒めく気配は左側にある待合室の様な所からしている。
その奥にお約束の酒場や食堂になってるようだ。
食べ物と酒の匂い。うん、近寄らないぞ。
正面のカウンターに向かうジャダについて行く。
「ジャダ。久しぶりじゃないか」
スキンヘッドの職員が手を上げた。
うん、でっかい。
日本ならグレートなんとかとか、デストロなんとかって言うプロレスラーになってそうな強面だ。
それが超ウェルカムな笑顔でジャダを迎えている。
なんでもジャダは年の半分弱を領地で、残りを王都で活動してるそうだ。
この南門近くのギルドは貴族街とは遠いから庶民相手の依頼が多い。
そこでの討伐や駆除や護衛。
あと南門を利用する王都在住じゃ無い貴族の依頼にはマナーのあるジャダはとてもありがたいそうで、いつも引き抜きをかけてるらしい。
「弟が田舎から出て来たんだ。
慣れるまで採取や雑用をこなさせる。
しばらくはレンと一緒だから日帰りしか受けないからな。」
そういって自分とレンのタグを渡した。
「へぇ?弟?」
スキンヘッドの目が値踏みする様に眇められる。
あ、とレンは真っ直ぐ前に立つと、フードを外して頭を下げた。
「レンといいます。よろしくお願いします」
くっと息を呑む音が前と横からして、頭を上げる前にフードがぐいっと被された
「顔を出さない約束はどうした…」
力任せにフードの布をぐりぐりと押さえつけられて、地を這う小声に
「え?挨拶だよっ⁉︎」と声を上げると、溜め息が返って来た。
「…という訳だから、目が離せない。」
「なるほど。」
いや、どういう訳だよっ⁉︎
鼻の下までずり下がったフードを整えながら、ぷりぷり思った。
天候だの魔獣の種類だのと話し込む二人に、飽きて辺りを見回す。
振り向くと入り口に近い壁に掲示板が見える。だよね、お約束だよね、
そこに残り少ない依頼書がペラペラと揺れて、レンを誘っていた。
なんとかの皮で、刀どころか物理攻撃は弾くと言う優れ物だ。
腰に二本の剣帯だけの姿は、伸びた背筋と締まった筋肉ボディを際立たせて
イケメン度が神々しいくらいに三割以上はUPしていた。
ザ・上位冒険者って感じでドキドキしちゃう漢っぷりだ。
かたやレンはといえば、お約束のフードをすっぽりとかぶらされて「顔を出さない」という約束をさせられていた。
こんなん被ってたら周りが見えないじゃん!
というちっちゃい不満は、すぐに泡となって溶け落ちた。
だって、冒険者ギルドの近くはそれっぽいのだ。
周りの通行人も、堅気っぽくないのだ。
屋台のおっちゃんもおばちゃんも二の腕は樽で入れ墨が入ってる。
しかも"クレーマーは潰すぜ"を前面に出してるようだった。
レンの知ってるのほほんとした市場や屋台とは人種が違う気がする。
その視線が見知らぬ自分に集まってる様で、レンはちょっとビビりながら小走りでジャダの後ろに着いていた。
両開きの扉を押し開けると、油の足りない蝶番が嫌な音を立てた。
明るい外から入ると室内は薄暗くて目が眩んだ。
埃と酸っぱい汗の匂いがする。
雑多な煮物とアルコールの匂いもする。
目が慣れてくるとギルドの中は広くて、天井は高く天窓から光が差し込んでいた
上から吊るされたギルドの紋章のタペストリーが、埃の粒を弾いてキラキラ光っている。
辺りを見回すと二階がある。
資料室とか会議室とかだろうな。
もっとざわざわ賑わってると思ったのに、人はまばらだった。
今日はこの地区のギルドに到着申請だけだからと言われて、逸る心を押さえ込んでゆっくり朝食を食べてきた。
だから早朝に仕事に行く人はいなくなってるようだ。
騒めく気配は左側にある待合室の様な所からしている。
その奥にお約束の酒場や食堂になってるようだ。
食べ物と酒の匂い。うん、近寄らないぞ。
正面のカウンターに向かうジャダについて行く。
「ジャダ。久しぶりじゃないか」
スキンヘッドの職員が手を上げた。
うん、でっかい。
日本ならグレートなんとかとか、デストロなんとかって言うプロレスラーになってそうな強面だ。
それが超ウェルカムな笑顔でジャダを迎えている。
なんでもジャダは年の半分弱を領地で、残りを王都で活動してるそうだ。
この南門近くのギルドは貴族街とは遠いから庶民相手の依頼が多い。
そこでの討伐や駆除や護衛。
あと南門を利用する王都在住じゃ無い貴族の依頼にはマナーのあるジャダはとてもありがたいそうで、いつも引き抜きをかけてるらしい。
「弟が田舎から出て来たんだ。
慣れるまで採取や雑用をこなさせる。
しばらくはレンと一緒だから日帰りしか受けないからな。」
そういって自分とレンのタグを渡した。
「へぇ?弟?」
スキンヘッドの目が値踏みする様に眇められる。
あ、とレンは真っ直ぐ前に立つと、フードを外して頭を下げた。
「レンといいます。よろしくお願いします」
くっと息を呑む音が前と横からして、頭を上げる前にフードがぐいっと被された
「顔を出さない約束はどうした…」
力任せにフードの布をぐりぐりと押さえつけられて、地を這う小声に
「え?挨拶だよっ⁉︎」と声を上げると、溜め息が返って来た。
「…という訳だから、目が離せない。」
「なるほど。」
いや、どういう訳だよっ⁉︎
鼻の下までずり下がったフードを整えながら、ぷりぷり思った。
天候だの魔獣の種類だのと話し込む二人に、飽きて辺りを見回す。
振り向くと入り口に近い壁に掲示板が見える。だよね、お約束だよね、
そこに残り少ない依頼書がペラペラと揺れて、レンを誘っていた。
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