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そして私たちは
あなたへ
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あの人の少し開いた口から、私の名前を呼ぶ声がした。
「ユーリさま、ユーリ様!」
化粧が落ちるのなんか気にせずに涙を乱暴にぬぐい、一瞬も逃さぬようにあの人を見た。
血が止まった訳ではない、息が正常になった訳でもない。
なのに、それなのに。
少し前から薄く目を開けていたようで、視線が絡む。
時が止まった気がしたー。
※
「あー……じ」
あの人は細い細い息を吐きながら、私の名前を呼ぶ。その手をぎゅっと握りしめて口元に付けて私もあの人の名前を呼んだ。私の息で少しでも暖まればいいと思って。
「ー、なん、ですの?」
「すま…ー、ない」
なぜ、今謝るのですか。なぜ今
「私の方が謝らなければいけません、、貴方を、愛していると言ったのに、私は、私はーーーー。」
言葉につまり、その先が出てこない
貴方を信じきれなかった。
マリー様へ浅ましい嫉妬心を抱いて、私は貴方を傷つけた。私は、恋に浮かれて溺れて、恋をしている自分に酔っていただけだったのだ。
貴方の言葉や態度に勝手に勘違いしていき、こんな最悪な状況になってしまった。
何が私は貴方に伝えていた、だー。
もっと、もっと、話し合えばよかった。
寂しいと、泣けばよかった。
その浅ましいと思う感情を隠さずに、もっと貴方に、等身大の自分でぶつかればよかったのだ。
泣いてすがって離れないで会わないで、と言えばよかった。
変なプライドが、変な自信が、招いた結果だ。
全ては私のせいーー。
「ごめんな、さい…本当に、ごめんなさい、」
こんな時まで、こんな言葉しか出てこない自分に腹が立つ。
目の端に、割れたカップの破片が見えたー。
もう、いっそのこと、私もー。
「あ、じー…あいしてる」
微かに、握った指に力が入った。
この人は死の淵まで私のことを想ってくださってるのに。私は自分のことしか頭になかった。
自責の念は、後ででも感じられる。
今はこの人にだけ、想いを返したい。
この人がくれる、愛を、ただ素直に受け入れたい
「わた、くしも…」
これまでの色んな棘が、溶けていく。
「わたくしも、愛しております…。愛していますわ、ユーリ様」
微笑んで、あの人に口付ける。
きっと最後になる口付けは血の味がして、指であの人の唇から流れる血液を拭い取った。
はくはく、と口があき、少しでも聞き漏らすまいと口ものに耳をやる。
「ぼ、くが、わるい、んだ…あん、じーは、わるくない、から、ね」
涙が溢れた、
「いい、えー。いいえ、いいえ!貴方は悪くない!悪いのは、わたくしなのよ!」
「ーぼく、がもっと、ことばに、していたらー」
もう話す力が無くなったのか、ごめんね、と口が動くが、音にならなかった。
「っー、それは、それはわたくしもですっ、わたくしは聞けばよかったのよ、貴方が何を考えているのか、どのような気持ちなのか、わたくしは貴方のことを何も知ろうとしなかった!わたくしの気持ちばかり、あなたに押し付けたのよっ…ー」
気持ちが溢れて、しかたなかった。
あの人は微かに微笑み、首を左右に振った
「ぼくは、きみなら、わかってくれる、とかってにおもって、なにもいわな、かったから」
僕こそ君の気持ちを考えずに傷付けてしまった、と力なく言って、目を瞑るあの人に、もう本当に最後なのだと感じた。
「いやです、いや!いや!」
「あんじー、きいて」
何を言うつもりなの、最期だと、最期なんて、嫌
「しあわせ、に」
握りしめていた、指から力が抜ける
いや、
いやよ、
まだわたくしは、
わたくしは、貴方になにも伝えていない
声にできない慟哭が。
微笑んでいるあの人が目に入り、
その口から、血が流れ
力が抜けた手から、あの人の手が滑り落ち、床に当たり派手に音を立てー。
ー心が張り裂けそう、
息ができない
あの人の頭を震える腕で抱きしめて、
私は大声で泣いた。
愛しているよ、アンジー
そう、聞こえた気がした。
「ユーリさま、ユーリ様!」
化粧が落ちるのなんか気にせずに涙を乱暴にぬぐい、一瞬も逃さぬようにあの人を見た。
血が止まった訳ではない、息が正常になった訳でもない。
なのに、それなのに。
少し前から薄く目を開けていたようで、視線が絡む。
時が止まった気がしたー。
※
「あー……じ」
あの人は細い細い息を吐きながら、私の名前を呼ぶ。その手をぎゅっと握りしめて口元に付けて私もあの人の名前を呼んだ。私の息で少しでも暖まればいいと思って。
「ー、なん、ですの?」
「すま…ー、ない」
なぜ、今謝るのですか。なぜ今
「私の方が謝らなければいけません、、貴方を、愛していると言ったのに、私は、私はーーーー。」
言葉につまり、その先が出てこない
貴方を信じきれなかった。
マリー様へ浅ましい嫉妬心を抱いて、私は貴方を傷つけた。私は、恋に浮かれて溺れて、恋をしている自分に酔っていただけだったのだ。
貴方の言葉や態度に勝手に勘違いしていき、こんな最悪な状況になってしまった。
何が私は貴方に伝えていた、だー。
もっと、もっと、話し合えばよかった。
寂しいと、泣けばよかった。
その浅ましいと思う感情を隠さずに、もっと貴方に、等身大の自分でぶつかればよかったのだ。
泣いてすがって離れないで会わないで、と言えばよかった。
変なプライドが、変な自信が、招いた結果だ。
全ては私のせいーー。
「ごめんな、さい…本当に、ごめんなさい、」
こんな時まで、こんな言葉しか出てこない自分に腹が立つ。
目の端に、割れたカップの破片が見えたー。
もう、いっそのこと、私もー。
「あ、じー…あいしてる」
微かに、握った指に力が入った。
この人は死の淵まで私のことを想ってくださってるのに。私は自分のことしか頭になかった。
自責の念は、後ででも感じられる。
今はこの人にだけ、想いを返したい。
この人がくれる、愛を、ただ素直に受け入れたい
「わた、くしも…」
これまでの色んな棘が、溶けていく。
「わたくしも、愛しております…。愛していますわ、ユーリ様」
微笑んで、あの人に口付ける。
きっと最後になる口付けは血の味がして、指であの人の唇から流れる血液を拭い取った。
はくはく、と口があき、少しでも聞き漏らすまいと口ものに耳をやる。
「ぼ、くが、わるい、んだ…あん、じーは、わるくない、から、ね」
涙が溢れた、
「いい、えー。いいえ、いいえ!貴方は悪くない!悪いのは、わたくしなのよ!」
「ーぼく、がもっと、ことばに、していたらー」
もう話す力が無くなったのか、ごめんね、と口が動くが、音にならなかった。
「っー、それは、それはわたくしもですっ、わたくしは聞けばよかったのよ、貴方が何を考えているのか、どのような気持ちなのか、わたくしは貴方のことを何も知ろうとしなかった!わたくしの気持ちばかり、あなたに押し付けたのよっ…ー」
気持ちが溢れて、しかたなかった。
あの人は微かに微笑み、首を左右に振った
「ぼくは、きみなら、わかってくれる、とかってにおもって、なにもいわな、かったから」
僕こそ君の気持ちを考えずに傷付けてしまった、と力なく言って、目を瞑るあの人に、もう本当に最後なのだと感じた。
「いやです、いや!いや!」
「あんじー、きいて」
何を言うつもりなの、最期だと、最期なんて、嫌
「しあわせ、に」
握りしめていた、指から力が抜ける
いや、
いやよ、
まだわたくしは、
わたくしは、貴方になにも伝えていない
声にできない慟哭が。
微笑んでいるあの人が目に入り、
その口から、血が流れ
力が抜けた手から、あの人の手が滑り落ち、床に当たり派手に音を立てー。
ー心が張り裂けそう、
息ができない
あの人の頭を震える腕で抱きしめて、
私は大声で泣いた。
愛しているよ、アンジー
そう、聞こえた気がした。
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