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学園
ヒーローとヒロイン志望(弱NL要素有)
しおりを挟む私はミクハ・ユーレーン。この国の第一皇女の娘。
そのことに誇りを持ち、母様の名字、母様から頂いた名前に恥じぬよう、精一杯努力してきたつもりです。ただ、その結果はあまりにも悲惨なものでした。
周りからは賞賛を頂けるがそれは建前だけで、裏では私の耳に届いても構わないというほど、『お高くとまった』印象が流れ始めました。
呼ばれる『ミク様』という呼称だって、初めは嬉しかったのですが、今は形骸化したレッテルのように感じます。
そもそも、『ユーレーンの御息女様』が嫌だと召使いに訴えたところ、「それでは、愛称として『ミク様』はどうですか?」と問われたのが最初です。
『様』は取れないのね……。なんて思ったのですが、親しく感じて、私はそう読んで欲しいと願ったのです。
それがいつしか貴族の中にも浸透し、何がどうしてそうなったのか、『ユーレーンの御息女様は心のつながりを求めるが故にミク様と呼ばれることに親しみを感じる』ということになり……いや、あながち間違いとは言えませんが、見ず知らずの人に唐突にミク様と呼ばれて、嫌悪感を感じずにはいられませんでした。
今では、皆が私の本名を言えるか怪しい程に『ミク様』と連呼します。
多くのものに慕われることの素晴らしさ、尊さ、そして重要性。わかっているつもりですが、それに中身が伴わないならばなんと寂しいものでしょう。
私のことを『ミクハ』と呼んでいただけるのはもはや母様のみです。
私は、心のどこかで求めているのでしょう。
私をただの『ミクハ』と呼び、共にこの学園で過ごすかけがえのない存在を。
母様も、それを応援してくださりました。
*:†:*:†::†:*:†:*
かと言って、そうは言っても、たどしてもです。
「あー、お前……名前なんだっけ?」
ちょっとこれは予想してませんでした!
「ミク様を知らないなど……!お前一体どこの貧民だ!?」
「ミク様、こちらの者は穢れておりますゆえ近寄らないようにしてくださいませ」
取り巻きAとB(と私は呼んでいます)が庇うように前に出たが、それを押しのけて私は彼の前に立ちました。
神獣の東方神話に基づいて『八叉大蛇』と呼ばれる八匹の龍。その長のような存在にして、随一の攻撃力を誇る光龍を召喚した彼。
貧民街出という、火走炎。
ああ、なんでしょうこの高揚は。膝を襲う震えは。
彼を前にして取り巻きたちが平然としているのが不思議でなりません。
どうしてわからないのかしら。彼はこれほどにも雄々しく、決して貧民らしくない雰囲気を纏っているというのに。
つまらなそうな瞳が私を刺した時、心臓が早鐘を打ち、脳内が彼一色に染まりました。
ああ、彼が、欲しい。
私の直感がそれを告げ、次にそれにつられてとってしまった行動。
「お前……」
「炎様、私をあなた様の彼女にしてくださいませ!」
「…………………………………………………………………………………………は?」
いくらか他に方法があったかも知れませんが、決して後悔はしておりません。
数秒置いて、先の私の召喚より、炎様の召喚より、ずっと大きく甲高い絶叫が響き渡りました。
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