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学園
ヒーローと『仲間殺し』
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「ごめんなさい……ごめんなさい……」
どうして、お前が、こんな、ことを……。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!」
赤い血が、彼女の首から噴き出した。
真っ赤な真っ赤なソレが、俺の頬も濡らして飛び散った。
「あ、ああ……」
「この死をもって償います……」
掠れた声はもう聞き取れない。やがて、彼女は息絶えた。
崩れた死骸に縋り付き、俺はただ慟哭を上げる。
「あああああああああああああああ!!」
誰も聞きはしない、辺境の密林奥地。俺しか生存しない、戦場。敵味方に関わらず、彼女の魔法でみんな死んでしまった。
俺は、また、独りになる。
「あああああああああああああああ!!」
ああ、喉も枯れた頃、俺は独りで立ち上がり、歩を進める。仲間の死骸を超えて、血みどろの屍を超えて。
一体彼女は、何人目だっただろうか。
*:†:*:†::†:*:†:*
跳ね起きた。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
ぐっしょりと寝汗が張り付いてうざったい。前髪をかきあげ、向かいのベッドに目をやった。内海が幸せそうに「うへへ……」間違えた、気色悪く眠っていた。
それでも、ほっとした。
『まだ、生きてくれている。』と、ほっとした。
そう、『まだ』なのだ。これから先、内海がいなくなる可能性はある。自分が鏡篝である限り。
彼女のように、いや、彼女に限らず自分の周りから消えていった多くの仲間たちのように。
「……あいつもそうだ」
もう日付は変わってしまったのだろうか。この夜が明けたらミクハに返事を伝えなければならない。
「決まってる。どんな理由だろうが、俺の側に人はおけない」
寂しい人だと言われても、事実なのだからしょうがない。幼い時に呪いでもかけられたのか……本当に、俺の周りでは人が簡単に死んでしまう。俺が、殺さざるをえない状況に人は陥る。
恋人を作るなど言語道断だ。
「……誰も、近寄らせては、ならない。わかってるだろ、篝。俺は、この学園に……」
魔法制御を身に付けるためだけにやって来ている。間違えるな。馴れ合いが生むのは悲劇的な死別しかない。
『ごめんなさい』
ふと、彼女のセリフが気にかかった。
彼女は敵の手中に堕ち、自らの肉体を媒介として広範囲魔法で一つの戦区を終結させた。そしてその魔力を抑えきれずに死んだ。
『ごめんなさい』
そう言うならば初めからしなければいいものを。でも違うのかもしれない。真実は死んでしまった彼女にしかわからないが、何かそうするしかない事情が……。
「……やめだ」
過去を考えてもしょうがない。
割り切って今日の講義内容について準備を始めようとしたが、いつまで経っても、脳裏にこびりついて剥がれなかった。
『ごめんなさい』
うるさい。
いい加減にしてくれ、お前はもう、終わったことなんだ。
そう心で願っても、リピートされる音声。
いい加減に、してくれよ……!
遂に周りの物にあたりかけた時、内海が目を覚ました。
「炎……?早いね……まだ朝日が昇ってないよ……」
寝起きの少し掠れた、でも内海の柔らかい声が鼓膜を揺らす。
するとそれまで唸るように響いていた彼女の声がピタリと止む。
「……?」
「ふあ……まだ寝ない?起床点呼まで二時間あるよ……」
部屋の壁に備え付けられた別々のベッド。だがそれでも俺は内海のべッドに近づいた。
さっきまで人に近づかせるなと心しておきながら、内海が持つ癒しの雰囲気に身を委ねたくなる。
フラフラと足が進み、縁まで来ると、俺は内海のベッドに潜り込んだ。
「ん~……んっ!?」
「うるさい。寝るぞ……」
「へ?」
もうあの声の余韻さえない。そのことに安堵して、でもまた同じ夢を……同じでなくとも彼女とは違う誰かが死ぬ記憶を見ることを恐れる。
……案外、人恋しいのか、俺は。
「炎……」
何かを感じ取ったのか黙る内海。そう、それでいい。もう、瞼が開かな、い……。
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