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学園
ヒーロー志望の想い(弱BL……か?友情っぽい)
しおりを挟む……これは一体全体どういうこと!?
「……ん、さむ……」
「……。炎……」
そう、今、僕の布団の中には炎が潜り込んでいる。
何故かはわからないが……物音に起きると、炎が上体を起こした状態でいた。まだ点呼には早いからと寝るように言ったら、こちらにやって来て布団に入ったのだ。この一連の行動が理解出来ない。
「炎……炎……」
肩を揺するも起きる気配はなく、熟睡している。たまに声を漏らすが、なんだか夜というのも相まって艶めかしく聞こえてしまう。どうしてしまったんだ、僕の耳。あ、いや、炎は顔が普通というだけで声は綺麗なんだけどね。
待って、僕はこんなことが言いたいんじゃなくて。でも炎の声が綺麗なのは本当。
ちょっと僕のアレが上を向きそうなのでね……意識を逸らさないとねっ……!
「……」
炎は僕とは裏腹に心地良さそうに眠っている。僕の片腕を枕にして。いつもシワが寄る眉間はスベスベだ。その肌に手を伸ばそうとして引っ込めた。
「……起きてよ……」
引っ込めて行き場のない手を頬に滑らせてみる。少し冷たいが、体温はちゃんと存在した。
炎が起きているのを見た時、最初は幽霊かと思った。それほど生気が感じられなかった。顔を覆った両手の隙間からブツブツと言葉が漏れていて、思い詰めたような声だった。
「……今眠れてるなら、そっとするべきかな……」
その時だった。炎が、ボソリと寝言で呟いたのは。
「レ、ナ……」
レナ?
「レナ、行、くな……レナ……」
また眉間にシワが寄った。苦い表情で、僕の服をキュッと握る。
誰かを、失ったことがあるのだろうか。いや、単に悪夢?ただあまりにも悲痛なその様子に、僕は炎が少しでも安らげるようにと、遠慮がちだった腕を炎の背中に回す。
トン、トン、と、一定のリズムで背中を軽く叩く。母が、子をあやすように。
「大丈夫、炎。どこにも行かないよ……どこにも……」
少なくとも僕は炎と友達でいよう。君の心の強さ、弱さ、それらをここ二日で垣間見て、それだけは決めたよ。
檸檬寮の名の由来を聞いて馬鹿にしたように笑う、憎たらしさ。貴族にからかわれてうるさそうに顔をしかめた、人に媚びない態度。光龍を召喚して心底驚いた表情の、年相応の感情。ミクハさんの告白を受けて放心していた、対人経験値の少なさ。
全て、炎の一部だった。
「大丈夫、大丈夫……」
友達ならこんなこと考えないかもしれないけれど、こんな、友達相手に欲情しかける奴は友達じゃないって言われたらそこまでだけど。それでも僕は側にいよう。もっとお互いを知り、そしていつか背中を合わせて立ち向かえるような存在になれればいいな。
僕は炎みたいに、光龍を召喚はしなかったけれど。弱っちい僕だけど。君の支えの一つにはなってみせよう。君が誰にも弱ったところを見られたくないなら僕は目をつぶってただ胸を貸そう。
一人の少女の言葉に惑う君を見て、少なからず君にある人間味に惹かれた。どう答えたらいいかわからないというその声に一番に応えてあげたくなった。いつから始まったのかわからないこの想い、何と呼べばいいかわからないこの想い、そして絶対に情を抱いたこの想い。友情なのか、愛情なのか。
「いつか、伝えるよ……」
青白かった君の頬に色づいた朱、多分僕も同じだ。
ねえ、移ったのかな、熟れた林檎の熱が。
やがてリズムは僕の心音に重なり、僕自身も意識を溶かすように深い海に沈めた。
「……おやすみ……」
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