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前編
9夢
しおりを挟む「イル兄様!ディー兄様!」
僕はそう言って扉を開けると、父様と大怪我をし、横になっているイル兄様、そして側にいるディー兄様がいた。
「え?イル兄様!どうしたの!?」
「ハル落ち着いてくれ。イルは致命傷はもう治してある。ただ光属性を持った者はまだ現場に居なくてはならない。あっちではまだ魔物と戦っているからな。だからこうして休ませて、コーデリアを呼ぼうとしたんだが、ハルがいるから問題ないな。悪いがハル、治してやってくれないか?」
コーデリアとは母様の事である。母様もああ見えて、凄い魔法使いだ。
「分かった」
僕はそう言って魔力を巡らせ光属性を発動した。
「ヒール」
普通この怪我を治すには、一人では魔力が尽きるか、ギリギリだ。だから致命傷だけ治してこちらに戻ってきたのだろう。でも僕なら難なく治す事が出来た。
「ありがとうハル」
ディー兄様は泣きそうに僕に抱きついてきた。双子は絆が強い。そのせいでディー兄様はかなり心配していたのだろう。
「イル兄様は僕の大事な兄様だ。治すのは当然だよ」
それだけディー兄様に伝えると、僕は父様に向き直った。
「父様、もしかして今厳しい状況だったりする?」
「……」
「父様~?僕に隠してたのはそれ?なんで僕に言ってくれないの。僕だって力になれる。父様だって分かってるでしょ?」
「分かってはいるが、ハルを戦場に出すのは…….」
「そんな事言ってる場合なの?イル兄様がもう少しで危なかったんだよ?大丈夫、僕は未来予知もできるし、魔法だっていっぱい練習してきた」
「だとしても、怪我をするかもれない。それに、死の危険だってあるんだ。訓練していないハルを出す事はできん」
父様がそう言うと、ジルもそれに同意してきた。
「私も反対だ。ハル、戦場に出るという事は死を伴う。それを分かっているのか?」
僕は痛覚耐性と、即死耐性があるのをまだ隠している。もう言うしかないのか?…………イル兄様がこんなになったんだ。言うしかない。
「父様、僕みんなに黙ってた事があるんだ。僕の固有スキルは分かるよね?」
「ああ、未来予知だろ?」
「うん、それの他に痛覚耐性と即死耐性も僕は固有スキルで持ってるんだ」
「っ!!……なんて事だ」
あぁ、普通そうなるよね。痛覚耐性と即死耐性なんて残酷なスキル。痛覚耐性は本当に痛みを感じない。それはある意味痛みを感じずに、死に近づいている事にも気づかないで死ぬという事だ。そして、即死耐性は例えば、首をはねられても生きているという事。自分が生きながら死を体験するという事と同じだろう。
まあ僕は前世で何度も死を体験しているから、そんなのはどうって事ないけど。普通十歳の子がそんなスキルを持ってたら青い顔をするのは当たり前だ。
「父様?僕は大丈夫。だから行かせて」
「ハル……そのスキルがどういったものか分かって言っているのか?」
「分かってるよ。大丈夫。………僕は死ぬのに慣れてるから」
僕は最後、誰にも聞こえない程の小さい声で呟いた。それを聞いている者がいたとも知らずに。
「ハル、私も行こう。それなら許可する」
「本当に!?父様!ありがとう」
僕は父様と行く準備をしていると、近くで意外な声がきこえた。
「では、私も行きましょう。ショーンさんよろしいですか?私は一応訓練を受けていますし、ハルの能力を知っている者もショーンさん以外にいた方がいいでしょう」
「しかし、それは陛下に許可を頂かなくては」
「大丈夫です。既に魔石通話で伝えてあります。許可も出ているので問題ありません」
「そうですか。ならお願いします」
そして僕達は、イル兄様とディー兄様を置いて魔物討伐に向かった。もちろんジルの馬に乗せられて……
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