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前編
32夢
しおりを挟む「ねぇ、ジルは前世って信じてる?」
「んー、どうだろうね。あるのかもしれないとしか言えないかな」
「僕は……その、前世の記憶を持ってるんだ。……それに……もともとこの世界の人間ではないんだよ」
僕がポツポツと話をすると、ジルは驚いた表情をしているが、しっかり聞いてくれていた。
「つまり、ハルは転生者って事でいいんだね?」
「うん」
僕はその後少し黙ると、ジルが再び聞いてきた。
「それで?転生者って事と何か関係があるのか?」
僕は、パラレルワールドという物がある事と、僕の体質、それに自分がどういう状態だったのかも、全て時間をかけて話した。ジルはずっと黙っていたが、眉間に皺を寄せている。
「だから、僕はこの世界でもあっちに引っ張られない為に、自分の魂に結界を張ってるんだ」
「……スキルもそれに関係しているって事だよね」
「う、うん。未来予知もそうだし、痛覚耐性も即死耐性も、あっちで何度も……数え切れないほど死んでるから……」
僕は念話を終えると、ジルは僕を抱き寄せた。
「ジル?……どうしたの?」
「ハル……」
ジルは暫くの間何も言わずに、僕を抱きしめ続けた。ジルの身体は少し震えている様で、どうしてなのかは僕には分からない。
「ハル、すまない。辛い事を思い出させてしまった」
「大丈夫だよ。僕の魂は脆いみたいだけど、思い出しただけでは壊れないから」
「ハルはさっきから、誰かに聞いた様な話し方をするね」
流石にジルは鋭いな。でもファンファンは神様だし。これは言ってダメだと思う。
「そうだね。聞いた事だから。でも誰かは言えないんだ。ごめんジル」
「……そうか、言えない事は言わなくていい。それよりハルの事を話してくれてありがとう」
ジルは優しく微笑んでくれたが、どこか悲しそうな表情をしていた。
「ジル。僕との婚約だけど……」
「それは絶対に破棄しないから。それにハルの事は私が必ず守る。だから、しっかり言うよ。……私と結婚してください。ハル」
ジルは僕の手をとってキスをした。それは恥ずかしいと思うけど、それよりもジルに結婚して欲しいと言われた事が嬉しかった。自分の過去を知っても愛してくれる事に僕は自然と涙を流していた。
「……はい。喜んで」
僕が泣きながら必死に笑顔を作ると、ジルは僕の涙を拭い、キスをしてくれた。
「ありがとうジル。僕は幸せだよ」
僕もジルが好きだ。今までのフワッとした好きより、本当にジルを愛しているんだと思った。
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