追放されたクズ勇者の死に戻り ～「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる～

プロローグ クズ勇者、死に戻る

その三

　人類が魔族に滅ぼされる――まさに、その状況の中で、オレはマルタと再会した。
　オレの幼馴染で、冒険者パーティ結成時からの仲間。そして、役立たずと罵ってクビにした、あのマルタだ。

　今のオレは奴隷らしい、みすぼらしい格好をしている。対して、マルタは威風堂々とした風貌。
　あの時と真逆だ。

「総司令、いかがしましょう？」

　魔族の兵がマルタに向かってそうたずねている。どうして、マルタが魔族に？　それに総司令だって？

「――この人間と話がしたい。下がっていろ」

　マルタがそう伝えると、兵は一定の距離まで離れた。

「グエル――今だから言えるけど、キミから解雇を言い渡された時、ボクはとても悔しかった。とても悲しかった。何もかも失った気がして、絶望した。キミが憎いとも思った。いつか、復讐してやる――と、その時は思ったよ。でも、今はそんな気持ち、どこにもない。どうしてだろうね。グエル？　キミはどうなの？」

　オレはマルタのそんな話を黙って聞いていた。そして、最後にクスッと笑う。

「ああ、憎いね。オマエが心底憎い。それと同時に自分が情けない。何が情けないのか――だって？　オマエが人類を滅ぼすほどの男だと、近くにいながら見抜けなかった――からだよ。なあ、最後の望みを聞いてくれないか？」
「――なに？」
「オマエの手で死なせてくれ」

　オレがそう願うと、マルタは「――わかった」と短く応えた。そして、ヤツは剣を取り出し、構える。

「その剣は――」

　神剣クサナギ――オレが勇者だったときに所持していた神器のひとつだ。
「そうか――オレはその剣にも恨まれていたんだな」
　そうつぶやき、顔を伏せた。刹那――クビに激しい痛みがあり、オレの意識は飛んだ――






「――はっ！」

　な、なんだ？　ココはどこだ？　どうして、ココにいる？

　血生臭いがれきの中にいたはずだったのに、意識が戻ると酒の匂いがプンプンする店にいた。周りは冒険者らしい客で満席である。ワイワイと騒いでいる――そう、オレは酒場の席に座っていたのだ。

「わかった。長い間ありがとう。グエル、必ず魔王を倒してね。それじゃ」

　そういうマルタの声が聞こえる。運び屋だったころのみすぼらしい服を着たマルタが立ち上がったところだった。

　これって、オレがマルタをクビにした場面――なのか？