追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

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第一話 クズ勇者、改心する

その十二

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 王都を出ると、馬車はガタガタと上下左右に激しく揺れた。
 乗合馬車といっても、荷馬車に人が座るための長椅子を取り付けただけなので、いたしかたない。すると、不安そうな顔でマルタがオレを見ているので――

「なんだ? オレの顔になんかついているのか?」

 マルタは頭を横に振ったあと、オレが怒っていないのか心配だったと言い出す。

「なんで、オレが怒るんだ?」
「だって、馬車が揺れるといつも不機嫌だったじゃない?」

 そういえば、そうだったな――と思い出す。
 勇者の称号を得てから、選民意識過剰で横暴になっていたオレは馬車の乗り心地が悪いと、「もっと、揺れないように走らせろ」と御者に文句を言ったり、「ギルドのヤツらこんなポンコツ馬車を手配しやがって」と身勝手なことを言っていた気がする。
 だが、今はそれほど気にならない。

「まあ……慣れだな」

 奴隷だった時代には、もっと酷い馬車に乗せられ移動していた。時には、一日中裸足で走らされたりしたもんだ。それに比べれば、この馬車なんて天国のようなものである。

「ところで、リームの町まではどのくらいかかるんだ?」
「そうだね、順調なら四時間くらいかな?」
「そうか――」

 リームに到着したら、ザブレロへ向かう乗合馬車に乗り換えるらしい。

「リームの乗り換え時間は?」
 そうたずねると――
「一時間半ほどかな? その間に食事もするけどね」
 マルタが応えるので、「まあ、そのくらいあれば充分だな」と応える。

「えっ? リームになにか用事があるの?」と質問されたので――
「いや、リームに用事があるわけではない」とオレは応えて、向かいに座る人物をチラッと見た。

 黒いローブを纏い、フードを深く被っているので顔はわからない。どちらかというと小柄で華奢なカラダだが、一般人とは思えない魔力を感じる。そんな人物がこちらをうかがっていた。
 まあ、ふつうの人間なら気づきもしないだろう。しかし、オレみたいな武人になると、魔力量と気配で危険な人物なのかどうかくらいすぐにわかる。

 どうやら、ローブの人物はオレたちに用があるらしい。

「オレを狙っている――ということは、魔族の刺客か、闇社会の人物?」

 闇社会には魔族と取引をして私服を肥やしている輩もいると聞く。
 そういった人物は、勇者の存在を良く思わない。魔王が倒され、魔族の勢力が衰えることを恐れるからだ。彼らが勇者暗殺を企ている――なんて話も聞く。
 まあ、もうオレは勇者じゃないけどな……いや、まてよ……勇者じゃないから、邪魔になった冒険者ギルドがオレを殺しに来た?
 それはさすがに考えすぎか――

「えっ? なんか言った?」

 ブツブツとオレが言っていたので、マルタが気にしたようだ。

「なあに、リームでは何を食べようか考えていただけだ」
 そう誤魔化した。

 移動中は何事もなく、中継の町、リームに到着する。さあて、黒ローブの人物はどう動くかな?
 しかし、その前に――「どこで食べるのか考えているのか?」とたずねた。

「この近くの市場があって、そこの屋台で食べるのが普通みたいなんだけど、ちょっと離れたところに、おいしいお店があるという話を聞いたんだ」とマルタは言う。
 リームが故郷だという冒険者からの情報らしい。

「ほう、それは楽しみだ」
「こっちだよ」

 マルタが歩き出したので、ついて行く。そして――やはり、馬車に同乗していた黒ローブの人物もあとを追ってきていた。これで、オレたちが狙いだと確定したな。
 さて、どうするか――途中、適当な分かれ道でマルタの手を引っ張り、路地裏に隠れた。

「えっ? どうしたの?」
「しっ――」

 人差し指を口の前に立てて、声を出さないように伝える。案の定、黒ローブの人物は慌てて路地裏に入ってきた。オレはその人物を背中から羽交い締めにする。

「おい、どうしてオレたちを追ってくる? 何が目的だ?」

 そう威圧的にたずねた――のだが、相手のムネのあたりを押さえている左手に柔らかいふくらみを感じる。
 ――ん? これって?

「きゃあ!」

 短い悲鳴が黒ローブの人物から発せられた。
 その声――えっ? オンナ!? オレは慌てて手を離すと、相手はさっと数メートル離れた。ローブの上から胸の辺りを押さえている。

「ご、ごめんなさい。あやしい者ではありません。いや、充分あやしかったですけど」と、その人物から支離滅裂な返答があった。
 だけど、この声って――いや、まさか――

「私です」

 相手が被っていたフードを下ろすと、キレイな長い金髪がパサッと翻った。蒼玉のような美しい瞳、真っ白な肌。間違いない――

「フィ、フィリシア!?」
「殿下!?」

 オレとマルタは同時に声が出てしまう。そう、この国、ウィルハース王国の王女、フィリシア殿下だったのだ!

「ど、どうして――??」
 なぜ、こんなところにフィリシアが?

「グエル様がファーナンド遺跡へ行かれるとお聞きしまして、こっそりと王宮を抜け出してきました」
 いや、それってつまり――

「家出してきちゃいました」フィリシアはニッコリしながら、そんなことを平然と応える――えっ?

「「え、えぇぇぇぇっ!!」」
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