追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

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第一話 クズ勇者、改心する

その十四

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 リームという町で、オレたちのあとをつける人物を取り押さえる。すると、その人物はこの国の王女、フィリシアだった。
 彼女はオレたちと一緒に旅をしたいと言い出す。

 彼女の話はこうだ。

 それは勇者選抜のために開催された剣術大会のこと。フィリシアは勇者候補たちの戦いぶりを陛下と一緒に見ていた。そのとき、オレを見かけたらしい。
(なんと凛々しい殿方なんでしょう)彼女はオレのことをそう思ったそうだ。

 それから、心の中で応援していたフィリシアは、勝ち上がっていくオレに運命を感じたらしい――いや、運命って……

「そして、グエル様は優勝しました! 私の愛が届いたのです!」
「え、えーと」
 なんか、ひとりで盛り上がっているんですけど――

 それから、オレの身辺を調べさせ、女魔導士のニグレアと恋仲であることも調べあげたそうだ。

「ですが、私はわかっていました。ニグレアさまとはカラダだけの関係だと!」
「えっ? いや、その――」

 フィリシアは勇者に選ばれたオレをことあるごとに呼び、ふたりだけになるような場面をいろいろと作ったらしい。まあ……そうだった気がする……
 そして、オレが彼女に求婚するように仕向けていった――とのこと。まさか、そんなだったとは……いや、そういえば、思い当たる節がいくつも――

「実はお父様にずいぶんと反対されたのですが、私は根気強く説得し、晴れて私たちは婚約となったのです! 魔王討伐が条件になってしまいましたが」

 フィリシアの父、つまり今の国王陛下が彼女の母である王妃――フィリシアを産んですぐ、亡くなられたらしいが――と結婚する時も、周囲から大変反対されたそうだ。それでも、陛下が結婚を強く望み、周りが折れたんだとか。
 それを引き合いに出して、陛下を説得したそうだ――うーん……つまり、恋愛に対する執着心は遺伝ということか。
 それにしても、たしかにオカシイとは思ったんだ。辺境伯の息子、しかも三男のオレが王女殿下と婚約することになるなんて――勇者ってスゴいんだなあ――と、勝手に納得していたのだが……

「――いや、だから、オレは殿……アナタと婚約したあとも、ニグレア……他のオンナと関係を――」

 一応、誰が聞いているかわからないので、フィシリアを『殿下』と呼ばないように、気をつける。

「ですが、婚約者はこの私です! 私は信じておりました。グエル様が他の女性に気移りしたとしても、最後は必ず私のところへ帰ってくると――」

 帰ってくる――って……オレは苦笑いになる。

「それで子供ができてしまったとしても、手切れ金を握らせて、子供と一緒に国外へ追い出せばイイことですし――」

 なんか、怖いことをさらりと言ったような気もするが……

「と、とにかく、オレはもうアナタの婚約者ではないのですよ」

 昨日、王宮へ行って、正式に婚約破棄を申し出た。いや、そんなことをしなくても、勇者でなくなり、魔王討伐が不可能になった時点で、もはや婚約が成立していないはずなのだが――

「わかっています。想定外でした――」
 そ、想定外って――
「ですから、こうして王宮を飛び出してきたのです」
 その「ですから」はどこつながっているの?

「私の母は聖女でした」
「――えっ?」
「その血も受け継いでいる私は、治癒魔法を使えます。実は『女神の加護』もいただいています!」

 えっ?『女神の加護』って何!?

「護身のため多少の剣術も心得ています! きっと、グエル様のお役に立てるはずです! ですから、どうか私も連れて行ってください!」

 フィリシアの美しい顔がオレに迫って、懇願してくる。

「いや、だからって――」

 いくらなんでも、王女殿下と一緒にダンジョンに入るなんて、常識的に考えても――

「ボクからもお願い!」
「――えっ?」

 突然、マルタも言い出す。
 コイツの顔を見て焦ってしまう。なんで号泣しているんだぁ? ちょっと引いた――

「こんなに姫さまが頼んでいるんだよ。お願いを聞いてあげようよ」
 そんなことを言い出す。

 なんなんだ? もしかしたら、オレのほうが常識外れなのか?
 ――いや、そんなはずないよな。とにかく一度落ち着くため、オレは目をつぶりしばらく考える。そして――

「わかった。それじゃ、旅に加わってもらおう」
「イイんですか!?」
「イイの!?」

 フィリシアとマルタが身を乗り出す。そんな表情を見て、ため息をついた。

「しかし、条件がある。まず、旅の間、髪の色はそのままで。呼び名も変えたほうがイイな……フィルでどうだ?」

 偽名……というほどではないが、さすがに『フィリシア』は知られすぎている。

「わかりました、グエル様」
「それと、その『さま』も禁止!」
「――えっ?」

 普通の市民同士で『さま』なんて使わない。なにより、恥ずかしい!

「わかったか? フィル?」
「は、はい、グエルさ……ん」

 なんか、『さ』と『ん』が間延びしているのだけど……まあ――ヨシとしよう。
 フィリシア――いや、フィルはうれしそうな表情を見せた。

「ボクからもよろしく、フィルさん」
「はい! マルタさん」

 こうして、元勇者、運び屋、姫様という、バランス最悪のパーティが誕生したのだった。それにしても、フィリシアがこんなに重い性格だったとは……付き合い方を少し考えよう……
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