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第二話 クズ勇者、旅に出る
その七
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それから、五人で食事をしたあと、オレは「ちょっと、夜風に当たってくる」と言って、部屋から両手剣を持ち出した。
「散歩なのに剣を持っていくの?」と、マルタがさすがに気にしたようだが――「まあな、用心のためだ」と、適当に誤魔化す。
外に出ると、森の方へ向かう。そのままジャンプして木に登ると、木の枝を渡って移動した。
「地形から考えると、おそらくこのあたりに――アレだな」
森の中に、灯りが――近づくと松明だとわかる。そして、ゴブリンの群れが見えた。ざっと百匹くらいがたむろっているようだ。
「やはり、そうだったか――」
ゴブリンが一匹で行動するのはめずらしい。近くに群れがあるかもと考えたのだ。
それで、群れが隠れられるような地形をまだ明るいうちに目星を付けていたのだが、ビンゴだな。
ゴブリンの群れがいる――そう考えたのはもうひとつ理由がある。それは前の人生で、ファーナンド遺跡の攻略に失敗し、ザブレロに戻ってきたときのこと。ゴブリンの群れが町に襲ってきたのだ。ニグレアとクローゼが出て、他の冒険者とともにそれを制圧したのだが、オレは宿から出なかった。
神書を手に入れられず、ロゼルも亡くし、やる気が失せていたからだ。
みんなが戦っている間、オレは飲んだくれ、くすぶっていたのである。
ニグレアとクローゼは街を救った英雄として市民から喝采を浴び、何もしなかったオレは勇者の面汚しと、よりいっそう評判を落とすことになった。
そういえば、その時の死者はニグレアたちの活躍で、奇跡的に少なかったと聞いた気がする。ただ、町はずれに住む老婆と孫娘が犠牲になったと――その時には気にも留めていなかったが――そうか、そういうことだったんだな。
「世話になった相手に死なれたりしたら、後味が悪いしな」
オレは木から飛び降りるとゴブリンの群れの中に下り立った。そして、剣を抜く。
「この剣の試し切り程度にはなる数くらいか」
そんなことを言いながら、オレは魔物を次々と斬り裂いた。
四、五十匹を殺したところで、ゴブリンたちは勝ち目ナシと逃げ出す。そんなヤツラをオレは無慈悲に斬り続けた。
それでも数十匹は逃げられてしまう。まあ、ひとりで、ゴブリンの群れを一掃しよう思うことがムリだったんだ。
その時、草むらがゴソゴソと揺れる。逃げ遅れたゴブリンか?
剣を構えなおすと、「私です」という声が聞こえた。
「フィル? それに、マルタ――マイッタなあ、バレていたか」
オレが剣を持って外に出て行ったことで、あやしいと思ったらしい。フィルとマルタがあとを追ってきたのだ。
フィルの手にした剣にも血痕が残っている。彼女も手伝ってくれたようだ。剣術の覚えがあると言っていたのも本当だったらしい。
「これほどの数が町を襲えば、かなりの犠牲者が出ていたはずです。これを事前に察知していたとは、さすが勇者ですね!」
そうフィルがほめる。
まあ、もう勇者ではないけどな。察知――といっても、前の人生の記憶があったからわかったことなので、決して、威張れることでもない。
「やはりグエルさんは――」
そう、彼女は話を続ける。
やはり――? その時、オレは「はっ!」とする。マズい、フィルはオレが『死に戻り』なんだと気づいたのかもしれない? そうだよな。こんなところにゴブリンの群れがいるだなんて――気づけるのは、二度目の人生であるオレしかできないことだ。
『前の人生の記憶があったから、知っていたのでしょ? それを恩着せがましく、自分の功績にしようだなんて――この、俗物』
汚物を見るような視線でオレを睨む彼女が目に浮かんだ。
オレは頭を横に振って、その妄想を断ち切る。ダ、ダメだ。これ以上、フィルにそのことを考えさせてはいけない。話題を変えるんだ!
「そ、それはそうと、結構、逃げられたみたいだ。明日、町の衛兵に事情を説明し、見回りを強化してもらうことにしよう」
オレが苦し紛れに言うと、フィルは「そうですね! すばらしい考えです!」と目を輝かせる。
ふう、どうやら誤魔化せた。口から出まかせだったのだが、言った以上、衛兵へ話をしなければならない。オレは衛兵に信じてもらうため、数匹のゴブリンの死体から耳を斬り落とした。これを見せれば納得するだろう。
ちなみに、ゴブリンの耳を冒険者ギルドに持っていけば報酬がもらえる。しかし、それは冒険者登録がある者に限る。冒険者でないオレたちは残念ながらもらえないのだ。
「ざっと見ただけでも百匹。銀貨百枚は下らなかったのに、もったいないね」とマルタは残念がっていた。
「散歩なのに剣を持っていくの?」と、マルタがさすがに気にしたようだが――「まあな、用心のためだ」と、適当に誤魔化す。
外に出ると、森の方へ向かう。そのままジャンプして木に登ると、木の枝を渡って移動した。
「地形から考えると、おそらくこのあたりに――アレだな」
森の中に、灯りが――近づくと松明だとわかる。そして、ゴブリンの群れが見えた。ざっと百匹くらいがたむろっているようだ。
「やはり、そうだったか――」
ゴブリンが一匹で行動するのはめずらしい。近くに群れがあるかもと考えたのだ。
それで、群れが隠れられるような地形をまだ明るいうちに目星を付けていたのだが、ビンゴだな。
ゴブリンの群れがいる――そう考えたのはもうひとつ理由がある。それは前の人生で、ファーナンド遺跡の攻略に失敗し、ザブレロに戻ってきたときのこと。ゴブリンの群れが町に襲ってきたのだ。ニグレアとクローゼが出て、他の冒険者とともにそれを制圧したのだが、オレは宿から出なかった。
神書を手に入れられず、ロゼルも亡くし、やる気が失せていたからだ。
みんなが戦っている間、オレは飲んだくれ、くすぶっていたのである。
ニグレアとクローゼは街を救った英雄として市民から喝采を浴び、何もしなかったオレは勇者の面汚しと、よりいっそう評判を落とすことになった。
そういえば、その時の死者はニグレアたちの活躍で、奇跡的に少なかったと聞いた気がする。ただ、町はずれに住む老婆と孫娘が犠牲になったと――その時には気にも留めていなかったが――そうか、そういうことだったんだな。
「世話になった相手に死なれたりしたら、後味が悪いしな」
オレは木から飛び降りるとゴブリンの群れの中に下り立った。そして、剣を抜く。
「この剣の試し切り程度にはなる数くらいか」
そんなことを言いながら、オレは魔物を次々と斬り裂いた。
四、五十匹を殺したところで、ゴブリンたちは勝ち目ナシと逃げ出す。そんなヤツラをオレは無慈悲に斬り続けた。
それでも数十匹は逃げられてしまう。まあ、ひとりで、ゴブリンの群れを一掃しよう思うことがムリだったんだ。
その時、草むらがゴソゴソと揺れる。逃げ遅れたゴブリンか?
剣を構えなおすと、「私です」という声が聞こえた。
「フィル? それに、マルタ――マイッタなあ、バレていたか」
オレが剣を持って外に出て行ったことで、あやしいと思ったらしい。フィルとマルタがあとを追ってきたのだ。
フィルの手にした剣にも血痕が残っている。彼女も手伝ってくれたようだ。剣術の覚えがあると言っていたのも本当だったらしい。
「これほどの数が町を襲えば、かなりの犠牲者が出ていたはずです。これを事前に察知していたとは、さすが勇者ですね!」
そうフィルがほめる。
まあ、もう勇者ではないけどな。察知――といっても、前の人生の記憶があったからわかったことなので、決して、威張れることでもない。
「やはりグエルさんは――」
そう、彼女は話を続ける。
やはり――? その時、オレは「はっ!」とする。マズい、フィルはオレが『死に戻り』なんだと気づいたのかもしれない? そうだよな。こんなところにゴブリンの群れがいるだなんて――気づけるのは、二度目の人生であるオレしかできないことだ。
『前の人生の記憶があったから、知っていたのでしょ? それを恩着せがましく、自分の功績にしようだなんて――この、俗物』
汚物を見るような視線でオレを睨む彼女が目に浮かんだ。
オレは頭を横に振って、その妄想を断ち切る。ダ、ダメだ。これ以上、フィルにそのことを考えさせてはいけない。話題を変えるんだ!
「そ、それはそうと、結構、逃げられたみたいだ。明日、町の衛兵に事情を説明し、見回りを強化してもらうことにしよう」
オレが苦し紛れに言うと、フィルは「そうですね! すばらしい考えです!」と目を輝かせる。
ふう、どうやら誤魔化せた。口から出まかせだったのだが、言った以上、衛兵へ話をしなければならない。オレは衛兵に信じてもらうため、数匹のゴブリンの死体から耳を斬り落とした。これを見せれば納得するだろう。
ちなみに、ゴブリンの耳を冒険者ギルドに持っていけば報酬がもらえる。しかし、それは冒険者登録がある者に限る。冒険者でないオレたちは残念ながらもらえないのだ。
「ざっと見ただけでも百匹。銀貨百枚は下らなかったのに、もったいないね」とマルタは残念がっていた。
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