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第二話 クズ勇者、旅に出る
その十
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衛兵の詰所から出てきたオレたちは、さっそく、ファーナンド方面へ向かう峠越えの乗合馬車を探した――が、明日まで満員でもう乗れないのだと言われる。
「仕方ない、歩くか――」
実のところ、峠道はきつく、馬車でも人が歩くほどの速度でしか進まない。荷物を運ぶキャラバンでは、少しでも負担を減らすため、御者以外は全員下ろされ歩かされるくらいだ。
「マルタはフィルの荷物を持ってくれるか?」
フィルはローブの下に、片手剣や小物が入ったバッグなどいろいろ持っていた。
「うん、それは大丈夫だけど、それでも峠は大変だよ」とマルタは心配する。
「荷物を持っていただかなくても、私は平気ですよ」とフィルは言うが、マルタのリュックは無限収納の特別品。一度仕舞ってしまえば、重さはなくなってしまうので、体力を温存するためにも、マルタへ預けるようにお願いした。
町を出るとすぐに急な坂になる。一昨日まで大雨だったそうで、道がぬかるんで馬車は余計大変そうだ。中には、立ち往生している馬車も見かけた。
「峠の頂上まではあとどのくらいだ?」
歩き始めて二時間ほど。いっこうに山頂が見えないので、しびれを切らしたらオレはマルタにたずねる。
「あと一時間くらいで頂上だよ」
お、意外と早かったな。
「それからいったん下って、二つ目の峠の頂上に到着するのは夕方くらいかな?」
なんだよ、二つ目って――どうやら、次の街、ガルチ聖教国のファーナンドまでは峠を三つ越えるのだそうだ。
二番目の峠がいちばん高いのだが、山頂は緩やかな丘となっており、大半の旅人はそこでキャンプを張るらしい。
うーん。そんな記憶はないなあ……前の人生では、どうやって峠越えをしたのだろう――
そんなことを考えていると、先のほうでキャラバンが立ち往生している。荷馬車に記されたマークから帝国からやってきた商人らしい。車輪が轍にハマってしまったようだ。何人かで押しているのだがビクともしない。
「仕方ない、オレたちも手伝うか」
これだけ大きな旅団だ。助けてやれば、きっとお礼があるはず――なんて、下心を抱きながら、荷馬車を押した。
「せいの!」ガタガタという音がして、馬車が轍を乗り越えると、「おーっ!」という歓声があがった。
「いやあ、助かったよ。儂はこのキャラバンを率いている、アスワンだ」
恰幅の良い男性が現れたので、オレは「げっ――」と小声でつぶやいてしまう。
足首あたりまである長い白シャツ――トーブという南国の民族衣装を纏った、いかにもおカネ持ちっぽい人物。
この商人のことをオレは知っている。前の人生でも会ったことがあったのだ。商人というわりに不愛想な男という覚えがある。たしか、町を出るときに飲み物を買い忘れたので、『商人なんだろ? 酒を売ってくれ』と言ったら、『オマエなんぞに売る酒はない!』と断られたんだよな。
それどころか、『オマエみたいなヤツはいつか破滅するぞ』と難くせつけられ、さすがに頭にきたから、殴りかかろうとしたところ、ロゼルが制止してくれたんだ。『この方は大陸でも有名な人で、王族からも一目置かれているんですよ』とか言われて――
まいったなあ。このオヤジじゃあ、お礼なんか望めそうにない。なんか損した。
アスワンと言ったオヤジは、オレの背中にある両手剣を見て、顔色が変わる。
「オマエさん、冒険者か?」
ん? 冒険者ならなんかあるのか? まあ、イイ。
「いや、数日前に冒険者をクビになった。今はこの三人で旅をしている」
そう応えると、オヤジの顔色がパッと明るくなった。
「おう、そうか! オマエさんたち、聖教国まで行くんだろ? そこまで、一緒に行かないか?」
そう誘ってくれた。
あれ? こんなに愛想の良い人だったっけ?
「え、えーと……」
オレが戸惑っていると、「お礼に、道中の食事は全部ご馳走してやろう」と言われた。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
「仕方ない、歩くか――」
実のところ、峠道はきつく、馬車でも人が歩くほどの速度でしか進まない。荷物を運ぶキャラバンでは、少しでも負担を減らすため、御者以外は全員下ろされ歩かされるくらいだ。
「マルタはフィルの荷物を持ってくれるか?」
フィルはローブの下に、片手剣や小物が入ったバッグなどいろいろ持っていた。
「うん、それは大丈夫だけど、それでも峠は大変だよ」とマルタは心配する。
「荷物を持っていただかなくても、私は平気ですよ」とフィルは言うが、マルタのリュックは無限収納の特別品。一度仕舞ってしまえば、重さはなくなってしまうので、体力を温存するためにも、マルタへ預けるようにお願いした。
町を出るとすぐに急な坂になる。一昨日まで大雨だったそうで、道がぬかるんで馬車は余計大変そうだ。中には、立ち往生している馬車も見かけた。
「峠の頂上まではあとどのくらいだ?」
歩き始めて二時間ほど。いっこうに山頂が見えないので、しびれを切らしたらオレはマルタにたずねる。
「あと一時間くらいで頂上だよ」
お、意外と早かったな。
「それからいったん下って、二つ目の峠の頂上に到着するのは夕方くらいかな?」
なんだよ、二つ目って――どうやら、次の街、ガルチ聖教国のファーナンドまでは峠を三つ越えるのだそうだ。
二番目の峠がいちばん高いのだが、山頂は緩やかな丘となっており、大半の旅人はそこでキャンプを張るらしい。
うーん。そんな記憶はないなあ……前の人生では、どうやって峠越えをしたのだろう――
そんなことを考えていると、先のほうでキャラバンが立ち往生している。荷馬車に記されたマークから帝国からやってきた商人らしい。車輪が轍にハマってしまったようだ。何人かで押しているのだがビクともしない。
「仕方ない、オレたちも手伝うか」
これだけ大きな旅団だ。助けてやれば、きっとお礼があるはず――なんて、下心を抱きながら、荷馬車を押した。
「せいの!」ガタガタという音がして、馬車が轍を乗り越えると、「おーっ!」という歓声があがった。
「いやあ、助かったよ。儂はこのキャラバンを率いている、アスワンだ」
恰幅の良い男性が現れたので、オレは「げっ――」と小声でつぶやいてしまう。
足首あたりまである長い白シャツ――トーブという南国の民族衣装を纏った、いかにもおカネ持ちっぽい人物。
この商人のことをオレは知っている。前の人生でも会ったことがあったのだ。商人というわりに不愛想な男という覚えがある。たしか、町を出るときに飲み物を買い忘れたので、『商人なんだろ? 酒を売ってくれ』と言ったら、『オマエなんぞに売る酒はない!』と断られたんだよな。
それどころか、『オマエみたいなヤツはいつか破滅するぞ』と難くせつけられ、さすがに頭にきたから、殴りかかろうとしたところ、ロゼルが制止してくれたんだ。『この方は大陸でも有名な人で、王族からも一目置かれているんですよ』とか言われて――
まいったなあ。このオヤジじゃあ、お礼なんか望めそうにない。なんか損した。
アスワンと言ったオヤジは、オレの背中にある両手剣を見て、顔色が変わる。
「オマエさん、冒険者か?」
ん? 冒険者ならなんかあるのか? まあ、イイ。
「いや、数日前に冒険者をクビになった。今はこの三人で旅をしている」
そう応えると、オヤジの顔色がパッと明るくなった。
「おう、そうか! オマエさんたち、聖教国まで行くんだろ? そこまで、一緒に行かないか?」
そう誘ってくれた。
あれ? こんなに愛想の良い人だったっけ?
「え、えーと……」
オレが戸惑っていると、「お礼に、道中の食事は全部ご馳走してやろう」と言われた。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
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