追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

文字の大きさ
45 / 84
第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く

その五

しおりを挟む
「ロゼルを助けてほしい」とナタリアが懇願している時、突然、現れた祭服の男――つまり、ロゼル本人だった。

 ナタリアも驚いている――ということは、彼女も知らなかったということか――

「ちょうど今、来たところです。アレンの無礼を謝罪しようと思いましてね」
 そう声にすると、ひざまずく。

「ナタリア様、そして、フィリシア様、先ほどは恥ずかしいところをお見せしました」
「――えっ? 私にも気づいていたのですか?」

 彼女は金髪を魔法で赤毛にして変装している。よほど親しい者でなければ気づかないと思っていたのだが――

「大聖堂で姿をお見受けした時には、少々驚きました」と笑う。

 あの時はかなり離れていたよなあ――まあ、ロゼルなら当然か。周囲への注意力は勇者パーティでも一番だった。

「今ごろ、王都は大騒ぎでしょうね。王女が家出したなんて――」
 そう言われ、全員苦笑いする。

 まあ……そうだろうね。あまり、考えたくない。

「――それはそうと、どうしてファーナンド遺跡へ行くんだよ? ナタリアに死ぬと言われたのに? いや、いっそのことロゼルだけでもパーティから抜ければイイじゃないか?」
「それはありえません」

 ――えっ? どうして?

「そこが勇者パーティだからですよ」

 ――そうだった。彼は両親を魔族に殺されたんだ。なので、魔族に強い遺恨を持っている。教会から魔王討伐への参加を打診されたとき、彼は自ら進んで加わったと聞いている。

「だ、だからって、死ぬかもしれないのだぞ?」
「それでも、神書を手に入れなければならないのです。魔族を滅ぼすためには――」
「――!?」

 魔王を討つために必要な三種の神器――神剣クサナギ、神盾アイギス、そして、失われた術について女神が記したという、神書アスタリアズノート。
 この三つを揃えるために、オレたち、勇者パーティは旅を続け、クサナギとアイギスを手に入れた。残る神器はあと一つ。神書を手に入れれば、人類は晴れて魔族へ――魔王へ戦いを挑める。両親を殺した魔族に復讐するため、自らの能力を極限まで鍛えたロゼルにとって、それを諦めることはありえないのだろう――

「魔族とはいえ、生きるモノを殺めることに執着するなんて――私は聖職者として失格ですね」
 そうロゼルは笑う。

 ナタリアの言う通り、ロゼルを説得することはムリなようだ。そうなると、不本意だが――

「わかった。それじゃ、オレも勇者パーティに同行する」

 ああぁぁぁぁっ! 成り行きでそう言ってしまったけど、これって破滅へ向かってないかぁ? だからって、ご馳走をいただいてしまった以上、ロゼルを見捨てたら、「ただメシ食いやがって――」となるよなあ。
 それどころか、教会の指示に従わなかったと、なんだかんだと理由をつけて犯罪者にされるかもしれない。なにせ、ここは聖教国だ。結局、どちらを選んでも破滅しかないのかぁ?

「ありがとうございます――と、言いたいのですが、それもお断りします」

 ――えっ? 断る? それって――

「アナタが加わることをアレンが認めることはないですから」

 そういえば、アイツのことを忘れていた。アレンはオレに対して、異常なまでのライバル意識がある――どうして、そこまで嫌われたのはよくわからないが――アイツのことだ、断固として認めないだろう。

「そ、そうか――残念だ」

 表向きはそう応えたが、内心はホッとした。アレンよ、今だけはオマエに感謝だ。

「それに、アナタたちには別の作戦があるのでしょ? だから、ココにいる。違いますか?」

 うっ……完全に見透かされている。ロゼルめ、まさかオレたちの策を横取りするつもりか?

「な、なんのことだ?」そう、しらばっくれる。

「そんなに警戒しなくても、横取りするつもりはないですから。それではお互い、別行動といきましょう。そのほうが、神書を手に入れられる確率が増えます」

 たしかに、単純計算で二倍に上がるわけだが――

「それで、ロゼルはイイのか?」
「ボクとしては、三種の神器が揃えばそれで構いません」

 彼にとって、目的は魔族への復讐。神器が手に入れば、誰が実行するかは関係ないという。

「――わかった、そうしよう。ひとつだけ言っておくことがある」

 オレがそう言うと、ロゼルが「なんでしょう?」とニッコリする。

「リッチが現れたら、逃げろ。相手にしようと思うな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...