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第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く
その五
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「ロゼルを助けてほしい」とナタリアが懇願している時、突然、現れた祭服の男――つまり、ロゼル本人だった。
ナタリアも驚いている――ということは、彼女も知らなかったということか――
「ちょうど今、来たところです。アレンの無礼を謝罪しようと思いましてね」
そう声にすると、ひざまずく。
「ナタリア様、そして、フィリシア様、先ほどは恥ずかしいところをお見せしました」
「――えっ? 私にも気づいていたのですか?」
彼女は金髪を魔法で赤毛にして変装している。よほど親しい者でなければ気づかないと思っていたのだが――
「大聖堂で姿をお見受けした時には、少々驚きました」と笑う。
あの時はかなり離れていたよなあ――まあ、ロゼルなら当然か。周囲への注意力は勇者パーティでも一番だった。
「今ごろ、王都は大騒ぎでしょうね。王女が家出したなんて――」
そう言われ、全員苦笑いする。
まあ……そうだろうね。あまり、考えたくない。
「――それはそうと、どうしてファーナンド遺跡へ行くんだよ? ナタリアに死ぬと言われたのに? いや、いっそのことロゼルだけでもパーティから抜ければイイじゃないか?」
「それはありえません」
――えっ? どうして?
「そこが勇者パーティだからですよ」
――そうだった。彼は両親を魔族に殺されたんだ。なので、魔族に強い遺恨を持っている。教会から魔王討伐への参加を打診されたとき、彼は自ら進んで加わったと聞いている。
「だ、だからって、死ぬかもしれないのだぞ?」
「それでも、神書を手に入れなければならないのです。魔族を滅ぼすためには――」
「――!?」
魔王を討つために必要な三種の神器――神剣クサナギ、神盾アイギス、そして、失われた術について女神が記したという、神書アスタリアズノート。
この三つを揃えるために、オレたち、勇者パーティは旅を続け、クサナギとアイギスを手に入れた。残る神器はあと一つ。神書を手に入れれば、人類は晴れて魔族へ――魔王へ戦いを挑める。両親を殺した魔族に復讐するため、自らの能力を極限まで鍛えたロゼルにとって、それを諦めることはありえないのだろう――
「魔族とはいえ、生きるモノを殺めることに執着するなんて――私は聖職者として失格ですね」
そうロゼルは笑う。
ナタリアの言う通り、ロゼルを説得することはムリなようだ。そうなると、不本意だが――
「わかった。それじゃ、オレも勇者パーティに同行する」
ああぁぁぁぁっ! 成り行きでそう言ってしまったけど、これって破滅へ向かってないかぁ? だからって、ご馳走をいただいてしまった以上、ロゼルを見捨てたら、「ただメシ食いやがって――」となるよなあ。
それどころか、教会の指示に従わなかったと、なんだかんだと理由をつけて犯罪者にされるかもしれない。なにせ、ここは聖教国だ。結局、どちらを選んでも破滅しかないのかぁ?
「ありがとうございます――と、言いたいのですが、それもお断りします」
――えっ? 断る? それって――
「アナタが加わることをアレンが認めることはないですから」
そういえば、アイツのことを忘れていた。アレンはオレに対して、異常なまでのライバル意識がある――どうして、そこまで嫌われたのはよくわからないが――アイツのことだ、断固として認めないだろう。
「そ、そうか――残念だ」
表向きはそう応えたが、内心はホッとした。アレンよ、今だけはオマエに感謝だ。
「それに、アナタたちには別の作戦があるのでしょ? だから、ココにいる。違いますか?」
うっ……完全に見透かされている。ロゼルめ、まさかオレたちの策を横取りするつもりか?
「な、なんのことだ?」そう、しらばっくれる。
「そんなに警戒しなくても、横取りするつもりはないですから。それではお互い、別行動といきましょう。そのほうが、神書を手に入れられる確率が増えます」
たしかに、単純計算で二倍に上がるわけだが――
「それで、ロゼルはイイのか?」
「ボクとしては、三種の神器が揃えばそれで構いません」
彼にとって、目的は魔族への復讐。神器が手に入れば、誰が実行するかは関係ないという。
「――わかった、そうしよう。ひとつだけ言っておくことがある」
オレがそう言うと、ロゼルが「なんでしょう?」とニッコリする。
「リッチが現れたら、逃げろ。相手にしようと思うな」
ナタリアも驚いている――ということは、彼女も知らなかったということか――
「ちょうど今、来たところです。アレンの無礼を謝罪しようと思いましてね」
そう声にすると、ひざまずく。
「ナタリア様、そして、フィリシア様、先ほどは恥ずかしいところをお見せしました」
「――えっ? 私にも気づいていたのですか?」
彼女は金髪を魔法で赤毛にして変装している。よほど親しい者でなければ気づかないと思っていたのだが――
「大聖堂で姿をお見受けした時には、少々驚きました」と笑う。
あの時はかなり離れていたよなあ――まあ、ロゼルなら当然か。周囲への注意力は勇者パーティでも一番だった。
「今ごろ、王都は大騒ぎでしょうね。王女が家出したなんて――」
そう言われ、全員苦笑いする。
まあ……そうだろうね。あまり、考えたくない。
「――それはそうと、どうしてファーナンド遺跡へ行くんだよ? ナタリアに死ぬと言われたのに? いや、いっそのことロゼルだけでもパーティから抜ければイイじゃないか?」
「それはありえません」
――えっ? どうして?
「そこが勇者パーティだからですよ」
――そうだった。彼は両親を魔族に殺されたんだ。なので、魔族に強い遺恨を持っている。教会から魔王討伐への参加を打診されたとき、彼は自ら進んで加わったと聞いている。
「だ、だからって、死ぬかもしれないのだぞ?」
「それでも、神書を手に入れなければならないのです。魔族を滅ぼすためには――」
「――!?」
魔王を討つために必要な三種の神器――神剣クサナギ、神盾アイギス、そして、失われた術について女神が記したという、神書アスタリアズノート。
この三つを揃えるために、オレたち、勇者パーティは旅を続け、クサナギとアイギスを手に入れた。残る神器はあと一つ。神書を手に入れれば、人類は晴れて魔族へ――魔王へ戦いを挑める。両親を殺した魔族に復讐するため、自らの能力を極限まで鍛えたロゼルにとって、それを諦めることはありえないのだろう――
「魔族とはいえ、生きるモノを殺めることに執着するなんて――私は聖職者として失格ですね」
そうロゼルは笑う。
ナタリアの言う通り、ロゼルを説得することはムリなようだ。そうなると、不本意だが――
「わかった。それじゃ、オレも勇者パーティに同行する」
ああぁぁぁぁっ! 成り行きでそう言ってしまったけど、これって破滅へ向かってないかぁ? だからって、ご馳走をいただいてしまった以上、ロゼルを見捨てたら、「ただメシ食いやがって――」となるよなあ。
それどころか、教会の指示に従わなかったと、なんだかんだと理由をつけて犯罪者にされるかもしれない。なにせ、ここは聖教国だ。結局、どちらを選んでも破滅しかないのかぁ?
「ありがとうございます――と、言いたいのですが、それもお断りします」
――えっ? 断る? それって――
「アナタが加わることをアレンが認めることはないですから」
そういえば、アイツのことを忘れていた。アレンはオレに対して、異常なまでのライバル意識がある――どうして、そこまで嫌われたのはよくわからないが――アイツのことだ、断固として認めないだろう。
「そ、そうか――残念だ」
表向きはそう応えたが、内心はホッとした。アレンよ、今だけはオマエに感謝だ。
「それに、アナタたちには別の作戦があるのでしょ? だから、ココにいる。違いますか?」
うっ……完全に見透かされている。ロゼルめ、まさかオレたちの策を横取りするつもりか?
「な、なんのことだ?」そう、しらばっくれる。
「そんなに警戒しなくても、横取りするつもりはないですから。それではお互い、別行動といきましょう。そのほうが、神書を手に入れられる確率が増えます」
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「それで、ロゼルはイイのか?」
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