追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

文字の大きさ
82 / 84
第四話 クズ勇者、捕まる

その十四

しおりを挟む
 魔人化したアレンが破壊した区域は、魔族が関わった重大事件としては奇跡的に小規模となった。それでも、衛兵本部はほぼ全壊。そのほか、政府機関の建物が三つほど半壊している。

 それを上空から見下ろしている人物がいた。漆黒のローブを纏い、ドクロの仮面を被っている。回収した紺のジャケットの魔族を右肩に担いだ状態で――

「腐塊が出現したというのに、この程度の被害かぁ……王都が半壊くらいする――と思ったんだけどなぁ……」
 そんな不穏なことをつぶやく。

「さて、クリネロにはあとでいろいろ聞くとして――不肖な『孫』のために、もうひと働きするかな――」

 すると、担いでいたクリネロのカラダがスーッと消えた。どこかへ転送されたようだ。黒ローブの人物はそのままゆっくりと降下し、とある建物の屋根に着地する。

 そこは、冒険者ギルドと呼ばれている場所だ。黒ローブの人物はそこで仮面を外した。二十代――いや、十代と言われても不思議でないほど幼い顔である。そのまま、屋根をスルスルとすり抜けて、屋内に入って行った。

「くそ! いったいどうなっているんだ? アレンが魔族にそそのかされて魔人化した? オレが勇者候補に指名したばかりだぞ? しかも、クビにしたグエルがそれを討伐? そんなことをギルド本部に知られたら、オレの出世はどうなるんだ? まったく、オレの足を引っ張りやがって!」

 そんな独り言を冒険者ギルドのギルドマスター、マコーミックが口にしている。ココは王国ギルドのギルドマスター執務室。本来、彼のこんな愚痴を聞くものなど誰もいないのだが――

「ずいぶんと、荒れているじゃないか? 王国本部のギルドマスター、マコーミック君?」
 そんな声が聞こえ、マコーミックは驚いた。

「だ、誰だ!? 誰が入ってきてイイと言った!!」激しく怒鳴るマコーミックだが、顔を上げたとたん、カラダが膠着する。

「いやあ、すまない。ちょっと、横着してしまった」

 黒ローブの若者は、ちょっと茶目っ気を加えてそう応える。マコーミックは息を飲んだ後、絞り出すような声で、こう言う。

「グ……グランドマイスター……?」

 若者は右手を上げ、「よ! ひさしぶり」と声をかけた。

「二十年ぶり――いや、まだそんなに経っていないか?」

 そんなふうに、マコーミックへたずねるが、彼はそれについて応えない。

「い、いったいどうして――?」
「なあに、キミが王国本部のギルドマスターになったと知ったんでね。お祝いを言おうと思ったんだけど? それにしても、ずいぶんと老けたね? まあ、当然か? 二十年だものねえ?」
「グランドマイスターは、お変わりがないようで――」

 愛想笑いをするマコーミックに、黒ローブの男はクスッと笑う。

「ところで、誰がキミを王国本部のギルドマスターにしたのかな? ボクは聞いていないのだけど?」
「こ、これにはいろいろとワケがありまして――」とマコーミックは手ぶりを入れて、なんとか説明しようとする。
「別に責めているわけではないよ。ただ、不思議だなあ――と思っただけさ。ああ、そう言えば、キミは昔から内部工作が得意だったよね? 今回は誰にお願いしたのかな?」
「そ、それは……」
「言わなくてイイよ。そういうことを探るのもボクは好きなんだ。そうそう、今日はね、キミに頼みたいことがあって来たんだっけ」

 マコーミックは顔をピクピクと引きつらせながら、「なんでしょう?」とたずねる。

「グエル・モリタとマルタ・ギンズのことだよ? ふたりをこのギルドに復帰させてもらえないかな?」
「えっ? それはちょっと――」

 黒ローブの男は、「そもそも、どういう理由で彼らをクビにしたのかな?」と穏やかな口調で質問する。

「いや、それは――アイツ……彼らがこちらの指示に従わなかったからで」
「それって、マルタくんが運び屋だからかい?」
「――えっ? いや、えーと……」とマコーミックはしどろもどろになる。

 グランドマイスターと呼ばれた黒ローブの男は笑いながら――
「ボクがこのギルドを立ち上げた時に言ったよね?『新しいことを切り開く気概さえあれば、いかなる者にもギルドの扉を閉ざしてはならない――』って――まさか、忘れたなんて言わないよね?」
「も、もちろんですよ!」

「じゃあ、なぜ、運び屋をギルドから追放しようとしたのかな?」
「い、いや……その……」
「部外者が口出したりしてないよね? このギルドは、いかなる国、組織からも介入を受けない。そう決めたんだけど?」

「いや、その……」
「なんてね」
「は?」

「だから、キミを責めにきたんじゃないと言ったでしょ? 今日は、本当にお願いだけなんだ。それで、ふたりのことはお願いしてイイかな?」
「も、もちろんです! できるだけ早くやりたいと――」
「やだなあ。約束はかならず期日を決めよう――そういう話をしたじゃないか?」
「で、では、いつまでに?」
「一時間以内だね」
「い、一時間!? しかし、再契約には本人の同意が必要で――」
「なら、本人たちを説得しなよ。まあ、理不尽に解雇されたから、彼らも怒っているだろうし、そう簡単に復帰したいと思わないだろうね。キミが土下座でもして謝れば別だろうけど――」
「ど、土下座!? この私が?」
「そうだよ。約束してくれないと、キミがやっていることを総本部のベンフォードにうっかりしゃべっちゃうかもしれないなあ」
「総本部マスターに!?、そ、それだけは……」
「ところで、こんな話をしているヒマはあるのかなぁ? ほら、あと五十九分だよ」
「ひ、ひいっ! わ、わかりましたぁ!」

 マコーミックは全速力で部屋を出て行くのであった。その後ろ姿を見て、黒ローブの男はクスクスと笑う。

「さて、ボクもそろそろ『闇社会の実力者ごっこ』は終わりにするかな? これからは――」
 そう独り言を口にしたあと、忽然と姿を消した。

 ――これからは、『破滅の時代』だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。 ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。 だから、ただ見せつけられても困るだけだった。 何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。 1~2話は何時もの使いまわし。 亀更新になるかも知れません。 他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...