東京大学野球部についての一考察~ただ一つ

西海 広

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抹殺=ミッション

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「来週からうちのあいつがフランスに出かけるんだ」
「伺っております。大統領夫人のご招待とか」
 郷田都は学生時代フランス文学を専攻していた。都は通訳なしでフランス語を話すことができるし、日仏虹色架け橋の会の会長でもある。
「一週間の首相夫人としての訪問だ。なんなら移住してもらっても構わんのだがね」
「ご冗談を」
「ふん。でね、確か君は全日本日本酒大好き……何だったっけ?」
「大好き連盟でございます」
「そうそうそれだよそれ。とにかく日本酒好きが集まる会の会長をしていたよね」
「はい」
「そしてもう一つ、お家のお掃除のことならお任せ隊、通称OOOの隊長もしているそうじゃないか?」
「はい、隊長をさせていただいております」
「そこで」
 郷田はここで一つ大きく深呼吸をした。
「……」
 白鳥は郷田の次の言葉を待った。
「そこでだ、その通称OOOに加盟している清掃会社に我が家を清掃してほしいのだよ」
「総理のご自宅をでしょうか?」
「そうだよ、我が家の清掃だ」
「ならば、何もOOOの加盟している会社でなくとも、総理の」
「いや、だめなんだ」
 郷田は白鳥を制止てそう言った。
「だめ……とは?」
「いろいろ不用品もあってね、まぁそう言う処分もお願いしたいんだよ」
「不用品……処分……」
「日本国首相の不用品がネットオークションにでも出品されたら国際問題になるよ」
「……」
 なるわけねぇだろ、くそ親父。もちろんこれは白鳥の心の中の声だ。
「だからさ、そういう不用品を人目に付かないようにさ、抹殺? して欲しいわけだ」
「抹殺?」
「そう、抹殺」
「抹殺……」
 白鳥は一瞬ぽかんとした。抹殺、ただごとではない。
「心配無用だよ、白鳥君。君に誰かを殺してくれなんて頼まないから。まぁ、殺したいくらい憎たらしい奴は山ほどいるけどね、ははは」
「で、その抹殺する不用品は?」
 白鳥は恐る恐るそう郷田に訊ねた。
「これだ、ここに書いてあるものだよ」
 郷田は胸の内ポケットから封筒を取り出した。白鳥はその封筒見て嫌な予感がした。
「拝見します」
 白鳥は封筒から一枚の紙を取り出した。目をやる。白鳥の目が点になった。その様子を郷田はじっと見ていた。
「どうだね?」
「……総理、これは……?」
 まずい、この不用品に自分は関わりたくない。紙を持っている手が震えた。白鳥は狼狽した。
「いいね、わかっただろうね」
 有無を言わせぬ郷田の低い声。
「これは……本当によろしいのですか? 総理の奥様に」
くどいね。僕がいいと言っているだろ。あいつのことなど気にしなくていいよ」
「……しかし……」
 ❝あいつ❞を気にしない政治家はいない。郷田ごときが足元にも及ばない❝あいつ❞。この国の政治は❝あいつ❞で動いている。決して郷田なんかではない。したがって❝あいつ❞に逆らうということは政治家としての生命を断つことになる。❝あいつ❞の逆鱗に触れることなど……できるわけないだろ! 白鳥は郷田を恨んだ。
「少々気の重いミッションだ。でも白鳥君、君ならやれるよ。何ってったってうちの❝あいつ❞は君の大ファンなんだからね。ははは」
「……」
 白鳥の表情が醜く歪む。
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