便利スキル持ちなんちゃってハンクラーが行く！ 生きていける範疇でいいんです異世界転生

王都

２７ 妖精たちとの戯れ

　それからどういうことなのかと詰め寄るダニエル少年をなだめてガロン親方のいる工房へ会いに行ける日取りを確認した。
　まだちょっと少し確認事項があることと、俺はこの後妖精たちとの逢瀬が待っているので（真顔）今日のところは遠慮してもらった。
　アンナちゃんと別れて、るんたかたった彼らの根城へ向かうと丁度お仕事上がりだったらしく小休憩していた。
「やっほ、ハンネス君、エレナちゃん。元気してた？」
　声をかけるといきなり殴られた。愛が痛い（物理）。
「てめーは俺らのことは、どこぞの小僧にでも金でも握らせて呼び出せって何度言やわかるんだ！　いくら信用してようとホイホイ裏路地に入ってくんなって言ってんだろ！」
「やーん、ハンネス君怒っちゃいやーん」
「きっしょくわるいわ！　金持ってる奴が気軽にこっち入ってくんなっつーの！」
「えー、だって俺王都に個人的に借りてるような場所もないから呼び出せないもん」
「だから一日だけ借りれる部屋とかあるっていってんだろーが！　そういうところで借りろ！！」
　命と金を天秤にかけるのはバカのすることだぞ！！　とハンネス君はご立腹だ。
「ユーラス兄さん、危ないことしちゃだめだよ」
　そうだ！　聞いてくれたまえよ同士諸君！！　この！！　可愛いの権化といっても過言じゃない、月夜の妖精がごとき美少女のエレナちゃんが！！　とうとう俺に口を聞いてくれるようになったんだよ！！　マジ忙しい合間を縫って足しげく通った成果だとは思わんかね！？
「エレナちゃんめっちゃ可愛い」
「おいやめろ変態。それ以上妹に近づくな」
　相変わらずお兄ちゃんガードが堅い。今度こそあの形の良いまぁるい頭を撫でれると思ったのに。
「ひどくない？　流石にそこまで言うのはひどくない？」
「そういうことは一度でもエレナと会話を成立させてから言ってみろ」
「こんなにも愛らしいエレナちゃんを前にしてこの迸る情熱を言語化しないのは失礼にあたる行為だと認識しています」
「そんな頓珍漢な礼儀など投げ捨ててしまえ」
　ハンネス君のツッコミもキッレキレである。
「も～、俺のこと労わってよ～。ようやく大仕事終わったと思ったのに実はまた新しい仕事増えちゃってさ～」
「ついこのあいだ見ず知らずの女の子押し付けられたって愚痴ってたばっかじゃないか。今度は何押し付けられたんだ」
「その女の子のところに商品の補充とお裾分け―――あ、忘れてた。これお裾分けね――いった時にさぁ、なんかその子の友達？　その家族の恩人？　の手助けみたいなこと頼まれちゃった」
「その女、助けてもらったくせに恩人に厄介事持ち込んだのか？　信じられん神経してるな」
「ユーラス兄さん、騙されてない？　大丈夫？」
「うへへ、ゲロ可愛かよ。マジ妖精。すいません、ハンネスさんその炉端の汚物を見る目やめてください。すみません。―――っと、あー、俺、ここに来ると愚痴っちゃうからあれだけどアンナちゃん自体は割といい子だよ。俺のこと純粋になんでも即解決できる超人みたいに思ってて断りづらいっていうのはあるんだけどね」
　そう、あの純粋キラキラなお目目さえなければ断れるのだ。ねぇ、だって断れなくない？　俺には無理だよ、あんな顔した幼女のお願い断るの。
「で、お前が調子に乗って引き受けて自主的に忙しくなってると」
「いや、まあ、今回は俺も流石に疲れてるし。ハインリヒさんに丸投げしようと思ってるから大丈夫」
「そんなこと言ってまた勝手に忙しくなるんだろ。知ってる」
「そんな、人を労働中毒者みたいに」
「俺は覚えてるからな。最初は取引相手が見つかるまでに数を増やしたいから、次は取引相手が大手だから見劣りしないようにしたいから、その次は厄介な女の子の家ごと面倒見る羽目になって別の商品作りだしたからって、来るたび目の下のクマ濃くしてったの」
　うっぐ、そうです。生産販売交渉オール！　ミー！　だからね。体は一つだけどやること存外多くて一月ぐらい結構無茶した。一つ一つは作るの別に難しくないんだけど量が量で、結果的にフル稼働してたんだよね。
「大丈夫！　エレナちゃんとハンネス君の顔を見ればめっちゃ元気になるから！！」
　全力で宣言すると、二人そろってそういうことじゃない、とキッパリ言われてしまった。