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可愛い娘sideリチャード
しおりを挟む「まだ、眠ってなかったのかい」
「う、うん。今寝ようと思ってた」
彼女の真っ白な頬が真っ赤に染まっていた。シャワーを終えると大きくドアが閉まる音がしていたが、彼女が先ほどシャワーを覗いていたのだと気がついた。しかしリチャードはその事には気づかない振りをする。
「良い子は寝る時間だぞ」
「はい、パパ・・・おやすみなさい」
いつも彼女が寝る時は額にキスをするのだが、今夜は頭を撫でるだけにとどまった。彼女の薔薇のような女の香りが鼻を掠め、これ以上近づくと何をしてしまうか分からないからだ。彼女は潤んだ瞳でリチャードを見て顔を染めている。その様子にリチャードの股間がピクリと反応した。
(くそっ・・・義娘に反応するなんて、おかしいだろ)
リチャードは「おやすみ」と言ってドアを閉めた。
(義娘・・・しかもまだ子供だ)
閉じたドアにもたれ掛かりながら、目を瞑る。リチャードは義娘であるメアリーとの出会いを思いだした。
+
+
+
「リチャード・シルベスト。君への褒美として男爵の爵位と私の従姉妹を君の伴侶に宛がおう」
「・・・ありがたき幸せ」
リチャードは平民生まれでこの国では珍しい黒髪だ。父は東国の生まれで、貿易商をしている父とよく一緒に東国に行ったものだ。学生時代も留学制度を利用し東国で勉強をしたので東国とこの国、ユーロス王国の言語はもちろん、歴史や経済の知識も豊富であった。学校は首席で卒業し、文官として王城で働くこととなる。
「君、外交官にならないか」
宰相が文官として働いていたリチャードに目をつけた。その頃隣国との戦争が始まりリチャードの両親は港付近に住んでいたのだが、その港に隣国船から攻撃があり、二人はあっけなく死んでしまった。二人の死を悼む暇もなくリチャードは働いていたのだが、そのリチャードに宰相が声をかけたのだ。
「東国の協力を得るには、金品に頼るのではなく、国王自らが頼みに行くべきです。東国は金より情を大事にする国なのですから」
「でも、国王がこの時期にユーロス王国を離れるのは・・・」
外交官としての仕事が始まり、国王も参加する戦争会議にも参加していた。隣国との戦争が激化していき、このままでは負けてしまうところまできていたのだ。大国である東国の協力をあおがなければ負けてしまうのだが、何度東国に協力を要請しても動くことはなく、東国に留学していたリチャードが頼みの綱であったそうだ。
「これしか、方法はないのです、国王、ご決断を」
ほとんどの者が戦争中に国王が国を去ることに反対していた。しかし回数を重ねるごとにリチャードの意見に賛成をする者が増え、とうとうあと一票というところまできていた。
「わかった。行こう」
国王が賛同する。それから入念な計画を立てた。国王に背丈が似ている者にカツラを被せ、国王の振りをさせる。王弟に業務を任せ、夜中に出発し少人数でバレないように東国へ船を進めていった。三週間もかかる船旅である。暇をもて余した国王はリチャードの平民生活や東国の文化に興味を持ち色々と質問をしてきた。悪天候にも負けずにやっと東国に着いたときには身分や年齢関わらず友情が芽生えていた。
「よくここまで来なすったな・・・まさかユーロス王国、国王本人が頼みに現れるとは・・・恐れ入った。協力しよう」
東国の皇帝は、国王の男気が気に入ったようだ。酒を酌み交わし、協定を結ぶこととなった。
「リチャードも、久しぶりであるな」
「はい・・・お久しぶりです・・・」
とある事情でリチャードは留学中に皇帝に会ったことがあるのだ。和やかな雰囲気で会合も終え、帰ることとなった。
「やりましたね、陛下」
「ああ、君のおかげだ、リチャード、そして皆、ありがとう。戦争が終結したらきっと褒美を取らせるからな」
そうして東国の大きな後ろ楯ができ、戦争は平和に終結することができた。東国との国交も活発化し、さらにユーロス王国は発展することとなる。
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