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KAISEN
ムーンライト 2
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・・・
(麻十寺と正反対だな)
こんなの聴いたら発狂するんじゃないか。
上機嫌に目の前を歩く男性の背中を眺めながら、リュージはイヤホンに指を当てた。
其処には、USBから個人的にダウンロードした音声ファイルが流れている。
あれに入っていた情報は、確かに主に彼女に関する内容だった。
ビルの倒壊、建設現場の事故。
そして、そのデータに更に隠しファイル。今聴いているのがそれである。
中の一つ、音声ファイルはどうやら、当時の取り調べのもののようだった。
(そりゃ、こぞって隠したがるわけだ)
聴いてみての感想はまずそんな感じ。
これが表に出れば、私物化したい人達にはいろいろと都合が悪い。
例えば一部の極左が扇動するつもりだった
「彼女たちはやりたい事が出来ない事への孤独・強い恨みを抱えていて、日本を壊したいと考えている」という趣旨の印象操作に巻き込む事が出来なくなる。右に同じというか、似たようなものなので省略するが、
ジンたちは、そうだったはず。
当時存在した『隔離されている事、制限や監視を設けている事』を指摘される恐れを利用し、逆に味方をしているかのようにしながら、戦争を織り交ぜ趣旨をすり替えていたというのだ。
なによりも、全て人的理由に出来るというメリットもあった。
――――しかし、実際は違う。
(声がした、と言っていたな)
リュージは思い出す。
トクホが建設され始めた頃から、保険にされている人たち……特に霊感のある人には『ペルソナの声が聞こえてくる』、という話がある。
また、藍鶴色のような特殊なケースも存在していて、それは『神様』と呼ばれていた。
橋引の力が顕在化したとき、彼女は遠くで声がしたと語った。
一体何の声なのかは定かじゃないが、少なくとも政府に隠れる彼らが彼女の本当の味方をしたとは考え難い。
「どうした?」
先を歩いていた社長が振り向く。
「具合でも悪くなったか」
「いえ、なんでもありません」
……まぁ、まず。鬼の動向が問題か。
社長のあの目。
口ぶり。
「そうか?
で、さっきの話の続きだが俺が思うに、天才は苦労なんかしない。苦労とか、辛い思いをするやつは一流じゃないんだよ。どうしてわざわざ不幸自慢してんの?ってやつよ」
USBにも入っていた鬼のマークといい、意味深だ。
――リュージとも因縁のある
佳ノ宮家とも敵対している『彼ら』が好む、鬼のマーク。
以前から、麻十寺の実家とも関りがあるという噂があった。
「エンタメに、悲しい話とか、鬱とかわざわざ要らないだろ?わざわざ見せるのかって話よ。才能は才能として称賛されるべきだし理解出来ない周りの方が悪いだろ? なのにどこもビジネス書とか経営者の言葉とか売り出して恥ずかしくないのかね」
セキュリティの関係で表示に意味がある……との事だがわざわざ鬼を選ぶ辺りに意味がありそうだし、
恐らく、ソフトを作った企業に鬼が潜んでいるのだろう。
「……」
そこまで考えて、少し憂鬱になってきた。
リュージが危惧するのは、このファイルが鬼によって隠されている理由に関してだ。
鬼と呼ばれる彼らはただでさえ、神との諍いを起こし続けて来て居るが、
危惧される事は、実はそれと別にもう一つある。
「例えば、才能のある話を聞いたら、貸せ!俺が使ってやるって思うわけだよ。
そいつは苦労話しかしないからな。
俺が目指したい頂点が暗くなるものなわけがない。自慢するな。
みんな不幸自慢、不幸自慢で、才能だけの本物がいない。まぁそんなのが居たら殺したくなるだろうが」
鬼の社会は女人禁制だと言われているのだ。
何かにかこつけて、勝手に所有地を私物化しては女人禁制を声高に叫ぶ……という話もある。
以前急に起きた相撲界のナース土俵入り騒動も彼らの敷地にかこつけて行われた八百長という見方もあった。
ベースになる女人を連れてきて、
力を利用しながら、此処は土俵だと主張し始める。……みたいにならなければ良いのだが。
「な? そう言うヤツなんだ。俺が目指したいのは」
「は、はぁ……」
話を半分しか聞いてなかったのがバレたか? リュージは苦笑いする。
(この人の話、薄過ぎてつまらないんだよな)
「あぁ。特に、佳ノ宮まつりが嫌いだ」
「はぁ。でしょうね」
「陰湿だし、不幸自慢だし、ちょっと歩み寄りをと思うと距離を取られ、ヒステリックに怒られる」
ん?
……リュージはこれまでを思い返してみた。
そういう人物だっただろうか?
正直、ぼんやりしている所や幼さはあれど、怒る事もそこまで無いし、あまりそんな印象は無い。
それ、もしかして――――
「よくまぁあんなに冷たい、性格が悪いやつが居るものだよ」
単に、コイツがめちゃくちゃ嫌われてるだけでは?
(麻十寺と正反対だな)
こんなの聴いたら発狂するんじゃないか。
上機嫌に目の前を歩く男性の背中を眺めながら、リュージはイヤホンに指を当てた。
其処には、USBから個人的にダウンロードした音声ファイルが流れている。
あれに入っていた情報は、確かに主に彼女に関する内容だった。
ビルの倒壊、建設現場の事故。
そして、そのデータに更に隠しファイル。今聴いているのがそれである。
中の一つ、音声ファイルはどうやら、当時の取り調べのもののようだった。
(そりゃ、こぞって隠したがるわけだ)
聴いてみての感想はまずそんな感じ。
これが表に出れば、私物化したい人達にはいろいろと都合が悪い。
例えば一部の極左が扇動するつもりだった
「彼女たちはやりたい事が出来ない事への孤独・強い恨みを抱えていて、日本を壊したいと考えている」という趣旨の印象操作に巻き込む事が出来なくなる。右に同じというか、似たようなものなので省略するが、
ジンたちは、そうだったはず。
当時存在した『隔離されている事、制限や監視を設けている事』を指摘される恐れを利用し、逆に味方をしているかのようにしながら、戦争を織り交ぜ趣旨をすり替えていたというのだ。
なによりも、全て人的理由に出来るというメリットもあった。
――――しかし、実際は違う。
(声がした、と言っていたな)
リュージは思い出す。
トクホが建設され始めた頃から、保険にされている人たち……特に霊感のある人には『ペルソナの声が聞こえてくる』、という話がある。
また、藍鶴色のような特殊なケースも存在していて、それは『神様』と呼ばれていた。
橋引の力が顕在化したとき、彼女は遠くで声がしたと語った。
一体何の声なのかは定かじゃないが、少なくとも政府に隠れる彼らが彼女の本当の味方をしたとは考え難い。
「どうした?」
先を歩いていた社長が振り向く。
「具合でも悪くなったか」
「いえ、なんでもありません」
……まぁ、まず。鬼の動向が問題か。
社長のあの目。
口ぶり。
「そうか?
で、さっきの話の続きだが俺が思うに、天才は苦労なんかしない。苦労とか、辛い思いをするやつは一流じゃないんだよ。どうしてわざわざ不幸自慢してんの?ってやつよ」
USBにも入っていた鬼のマークといい、意味深だ。
――リュージとも因縁のある
佳ノ宮家とも敵対している『彼ら』が好む、鬼のマーク。
以前から、麻十寺の実家とも関りがあるという噂があった。
「エンタメに、悲しい話とか、鬱とかわざわざ要らないだろ?わざわざ見せるのかって話よ。才能は才能として称賛されるべきだし理解出来ない周りの方が悪いだろ? なのにどこもビジネス書とか経営者の言葉とか売り出して恥ずかしくないのかね」
セキュリティの関係で表示に意味がある……との事だがわざわざ鬼を選ぶ辺りに意味がありそうだし、
恐らく、ソフトを作った企業に鬼が潜んでいるのだろう。
「……」
そこまで考えて、少し憂鬱になってきた。
リュージが危惧するのは、このファイルが鬼によって隠されている理由に関してだ。
鬼と呼ばれる彼らはただでさえ、神との諍いを起こし続けて来て居るが、
危惧される事は、実はそれと別にもう一つある。
「例えば、才能のある話を聞いたら、貸せ!俺が使ってやるって思うわけだよ。
そいつは苦労話しかしないからな。
俺が目指したい頂点が暗くなるものなわけがない。自慢するな。
みんな不幸自慢、不幸自慢で、才能だけの本物がいない。まぁそんなのが居たら殺したくなるだろうが」
鬼の社会は女人禁制だと言われているのだ。
何かにかこつけて、勝手に所有地を私物化しては女人禁制を声高に叫ぶ……という話もある。
以前急に起きた相撲界のナース土俵入り騒動も彼らの敷地にかこつけて行われた八百長という見方もあった。
ベースになる女人を連れてきて、
力を利用しながら、此処は土俵だと主張し始める。……みたいにならなければ良いのだが。
「な? そう言うヤツなんだ。俺が目指したいのは」
「は、はぁ……」
話を半分しか聞いてなかったのがバレたか? リュージは苦笑いする。
(この人の話、薄過ぎてつまらないんだよな)
「あぁ。特に、佳ノ宮まつりが嫌いだ」
「はぁ。でしょうね」
「陰湿だし、不幸自慢だし、ちょっと歩み寄りをと思うと距離を取られ、ヒステリックに怒られる」
ん?
……リュージはこれまでを思い返してみた。
そういう人物だっただろうか?
正直、ぼんやりしている所や幼さはあれど、怒る事もそこまで無いし、あまりそんな印象は無い。
それ、もしかして――――
「よくまぁあんなに冷たい、性格が悪いやつが居るものだよ」
単に、コイツがめちゃくちゃ嫌われてるだけでは?
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