かいせん(line)

たくひあい@あい生成

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Commentary

神の定義

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◆■

 ビルの屋上に来たのは随分と久しぶりだ。
このまま一睡もしないうちに朝を迎えるかもしれないな、と思ったが、
それでも俺はそこから動けずに居た。
「ずっとね、考えて居た。結局は、神を違えた彼らの支配欲が彼らを肥やしたんじゃないか?って、俺はそれに加担しただけなんじゃないか」

そう言う色の表情がよりも穏やかだったからだろうか。
「罪悪感――――いや、自分の正体が責められるんじゃないか。そんな事を思うこともあった」
白んで来た空を背に、藍鶴色は言う。
そこには衛星が飛んでいる。

この町を定期周回するもので、テレビ局に電波を送っているらしい。
黒くて四角い塊。
緑や赤の光がチカチカと点滅し、低い音とともに消えていく。
  俺は前からあれに言い知れぬ恐怖があった。
サイコメトリのせいだろうか。見ていると引きずられそうになるのだ。
向こう側と、地上の狭間が視える感覚になる。



そっと色の手を掴むと、色はそれに掌を重ねて微笑んだ。

「でも、そんな奴らとっとと潰せばよかったんだよ」

俺の世界は神様だけだった。
でも、神様は、居るだけ。弱みに付け込んだり金品を巻き上げたりしない。

「自発的にそれをするのは結局『人間』なんだから。全部、利用する側じゃないか。馬鹿だからそんな事もわからないような奴らを救う必要だって――――無かったのに」



 結局のところ、俺が生まれる前には未来はあって、それら全てが自らの意思だったわけでも無い。
何故なら生まれてすぐに予知がしたいと言ったわけでも無く、それは当然のように既にあったのだ。と、色は言う。

「母さんたちが俺のことに反発していたのも、俺がそこまで不気味ながら普通の家で育ったというのも、要はそう言った策略に置かれない為なんだろう。本当に、神様だけが全てに置いて最上位だったんだ」


彼の見ていた世界、俺にはすべてはわからないけど、なんだか前よりも晴れやかな気がした。


「そうなら、それはそれで、素敵だなと思った」

望むか望まないかに関わらず、情報そのものを何も与えないことで、彼女らの言う純粋な心だけを向こうが選び決めたのだ、と今は思っている。


「でもさ」
俺は何か言いかける。
色は、違うよ、と言う前に首を振った。


「ずっと他人に何か決められたり、縛られたりは嫌だと思っていたんだけど
それはヒトに意思があり選択していたと信じているから」

それらはいつだって誰かが好きか嫌いかで、何かをする為で、俺に選ぶものなんてなかった。 『同じ人間なのに』
だけど
「神様は、ずっと誰のものでも無いんだ」

それってきっと、その為に命をかけるに値する事だ。と藍鶴色は言う。






数分後。
「じゃ、戻ろうか」
そう言いながら色は俺のネクタイに手を伸ばした。
曲がってるよと直している。

「……あぁ、どうも」

細い指が丁寧に動いているのを眺めながら、俺は何か、思っていた。
うまく言えないけど、言いたい事があったように思う。
適切な言葉を言えないまま一部始終を見ているうちに、色が離れていく。
緩めていたボタンまで丁寧に留めてあるので、ちょっ、苦しいんだけどと少しだけ緩め直す。


「そうだ、これは予言だけど」
色は先に歩き、扉に手をかけながら振り向いた。

「え」
「これから、誰かが来るだろう」

「……誰かって」

「わからない、敵対勢力か、何処かのカルトか。
でも俺は何かの霊能力自体に誰か他人を見出すのは違うと、思っている。だから、そういう事を言われても俺が頷く訳では無い」


 何もかも同じ身体の人は居ないし、神は人じゃない。
だから『他の人間』と同じ、という事にはならないと言う意味なのだろう。
それは俺も思っていた事だ。
母さんが占い師になろうと、俺はそれを選ばなかった。

結局は視えたものや感じたもの、学問的な知識を伝えるだけであり、存在という役割でしかない。母という人間そのものが何か崇高な者自体に成れたと言われればそうは思えなかったからだ。
母みたいだ、と言われるのは全ての人生を否定するだけでいい事には思えない。

藍鶴色が言っていた言葉を思い出す。


『いつの時代も、神を手中に収めようとする者が現れる。
そんなものは、そもそも手中に収まるようなものではない。
人が支配できたのは人と、その周囲の従属だけだ』



下の階で、チャイムが鳴る。

2025年6月30日21時03分加筆
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