命の恩人

あやこ

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2話

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太郎が去った後、死ぬなら人になるべく迷惑をかけたくないと思い、彼のアドバイス通りビニールシートを取りに向かった。

一階に降りると沢山のゴミに紛れてビニールシートが見つかる。
薄汚れたシートを手に取ろうとしたその時、横に卒業アルバムが落ちてるのが見えた。

「あれ、これって私の母校の卒業アルバムだ。」

花子は懐かしそうにそれを手に取ると中を開ける。

「私が卒業した時のじゃん!」

興奮した様に自分のクラスのページを開けると、高校時代の記憶が溢れ出てきた。

1番後ろのページには生徒たちの寄せ書きがあった。

「懐かしい。こんな時もあったのね。」

花子は少し涙ぐみながら、寄せ書きに目を通すと仲の良かった友達の名前を発見する。

「翔子ちゃん・・・・。」

花子の数少ない友達の一人だった。
高校卒業と同時に連絡を取らなくなっていた。
彼女の寄せ書きの横には連絡先も書き込まれている。

「今も連絡を取り合ってたらまだ友達だったかな。」

ふと、独り言を呟くと後ろから声がした。

「友達がいないの?」

驚いて花子が振り向くと小綺麗にした女性が立っている。

「な、何でこんな所にいるんですが!?だ、誰ですか!?」

彼女は自分の名前を和子と名乗ると、雨が降り出してきたから雨宿りに来たと話した。
窓の外を見ると止んでいた雨がまた降り出したようだった。

和子は雨が止むまで話し合い手になってくれと頼んできた。
彼女は薬剤師でこの近くの薬局に勤めていると話しする。

「それより花子は何でここにいるの?」

自殺をしようとして色々邪魔が入ったとは言えず、和子と同様に雨宿りをしていると嘘をついた。


和子は雨に濡れた靴を拭くためハンカチを取り出す。その拍子に鞄から何かがこぼれ落ちた。

地面に落ちたものを花子が拾おうと手に取ると、それは彼女が飲んでいる高額な薬と同じものだった。

「この薬ってとても高いですよね。和子さんもご病気なんですか?」

彼女はその薬を手に取ると

「これは母の物よ。それに今は高額だけどこの薬は来週には安くなるわよ。特許が切れるジェネリック医薬品だから以前の10分の1の値段になるわ。」

患者の負担も減るからいいわよねと和子は話しながら、薬を鞄にしまった。

花子はその話を聞き、それなら私でも払い続けるなとぼんやり考えていた。

和子は窓の外を見て、雨が止むのを確認すると廃墟を去っていった。
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