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第3話:二人の約束
しおりを挟むゲーセンに到着した長島は、いつものように音ゲーのある2階に上がった。
喫煙所で一服して、ポップンミュージックのコーナーに行くと、そこに絵里の姿があった。
「やっぱり。来ると思った。」
「絵里ちゃん。来ると思ったって?」
「伸幸さんなら仕事終わったらここに来るだろうなって思って待ってたの。」
「待ってたって、何で?」
そう長島が聞くと、絵里はふーっとため息をついて続けて言った。
「メッセージ、送ったでしょ。伸幸さんをロックオンしそうな人がいるから気をつけてって。」
「うん、確かに送ってもらったけど。でも、どうしたら良いか。」
長島は、しどろもどろになりながら答える。
長島が困っていると、絵里が思いついたように続けて言った。
「こういうのは、どう?」
「どうって?」
「しばらくの間、私のお店だけ他の人に変わってもらうこととかって出来るのかなって。」
「出来ないこともないけど、僕ともう一人しか絵里ちゃんの店の担当いないから、もう一人の人が体調不良とかで休みになったら分からないかも。」
「そうか。じゃあ、しょうがないか。気をつけてね。」
絵里は、少し肩を落とした。
そんな絵里を見て長島は声をかけた。
「業務で回ってるんだからプライベートの話されても答えないよ。」
「挨拶ついでにプライベートに突っ込んだ話もするから気をつけてね。」
「ありがとう。」
長島はポップンの台が空いたのを確認して続けた。
「ごめん、台が空いたから、プレイしていい?」
「うん、ごめん。良いよ。」
長島は、ICカードをタッチして、プレイを始めた。
後ろから絵里が声をかけた。
「今日も練習?」
「うん。とりあえずクリア数を増やして、色んな譜面に対応しなきゃね。もうじき、大会の課題曲と、条件設定が発表されるでしょ。」
「そうだね。じゃあ、頑張って。」
「うん。」
長島は、筐体に向かって「ヨシッ」と一呼吸入れた。
無事に4曲のプレイをクリアで終わると絵里の座る待機場所に振り向いた。
「伸幸さん、やっぱり上手いね。」
「ありがとう。でも、螺旋階段の譜面は苦手だわ。片方の方向に対応出来たと思ったら油断してね、もう一方の方向の対応が遅くなって出来なくなるし、不規則リズムが絡むと一度に処理できなくなってもう、お手上げ。」
「それは私も分かるわ。一度の譜面には1種類の。パターンになってると分かりやすくて良いよね。」
絵里は、ふと携帯で公式サイトをチェックすると続けて言った。
「ちょうど今、今度の大会の課題曲と条件設定が発表されたみたいだよ。」
「どんなの?」
「課題曲は、未だ詳細はないけど、レベル40の中から4曲、条件設定は、大会一ヶ月前に規程のレベル40まで達していること、レベル40の曲を50曲クリアしていること、50曲のクリアのBAD数の平均が100を切っていること、みたいだよ。」
その詳細を聞いて長島は、自分と照らし合わせた。
「レベル40の曲を50曲クリアしてBAD数の平均が100を切ることが条件か。未だ先は遠いな。今レベル39で、あと30曲クリアしないとレベル40が見えないからな。先ずはレベル40を目指さないと。」
絵里は、詳細の続きを長島に伝える。
「今日が7月で、エントリーが12月から1月の2ヶ月間だから、エントリーまであと4ヶ月くらいあるから間に合うと思うよ。」
「あと4ヶ月か。先ずはレベル40にならないとだから間に合うかな。」
「大丈夫。普段から私よりBAD少ないから。」
「僕より絵里ちゃんの方が目指しやすそうじゃない?今レベル40になってるし。」
「でも私、BAD多いし、そのせいか中々クリア出来なくて。」
「未だあと4ヶ月あるから、頑張れば、エントリー間に合うと思うよ。」
「じゃあさ、じゃあさ。一緒に練習してさ、一緒に大会エントリー出来るようになって、一緒に大会に出ようよ。」
「うん。分かった。」
「約束だよ。」
「うん。一緒に頑張ろう」
二人は、一緒に大会に出る約束と、一緒にエントリー出来るまで練習すると約束した。
-続く-
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