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第9話:募る姉への想い
しおりを挟む「「ごちそうさまでした。」」
朝食を食べ終えた長島と絵里は、二人で片付けを始めた。それに気づいた絵里の母、幸絵が声を掛ける。
「良いのよ、そのままにしてあれば。私片付けとくから。」
そういうと、絵里から食い気味に返ってきた。
「自分たちで食べたものだから自分たちで洗うから大丈夫だよ。ママは、そろそろパパ起こして。」
時刻は10時になろうとしている。
「それもそうね。」
幸絵は、辰悟を起こしにかかった。
「あなた、いい加減起きてください。10時になりますよ。」
「うーん」とソファで伸びをしながら起き上がると、知らない間に着ていた服がパジャマに変わって、ソファで寝ていたことに気付いたようだった。
「このパジャマは、どうしたんだ。それに、毛布までかけてあったんだが。知ってるか?」
「全部、伸幸さんが、してくれたのよ。脱いだ服もちゃんと洗濯してくれて、干すとこまでやっててくれたんだから。」
「伸幸くん、すまんかったね。」
「いえいえ。連れて行って頂いて光栄です。」
洗い物が終わり絵里が続けた。
「ちょうど今、洗い物終わったから、皆でコーヒー飲まない?」
「じゃあ飲むか。」と威勢よく辰悟が言うと、長島も幸絵も自然に賛成して、ダイニングテーブルに移動した。
絵里は、4人分のコーヒーと茶菓子皿をお盆に乗せて持ってきた。
「お待たせ。」
長島は、柊ママのことが気になってしょうがない。
「絵里さんのお母さん、柊ママのこともう少し話を聞きたいです。」
「そうね。柊は源氏名で、本名は冬華。長島冬華っていうの。冬華と私たち夫婦は、島根大学の同期で出会ったの。出身も3人違ったわ、冬華は出雲、私は美保関、辰悟さんは隠岐だったもの。だから皆下宿アパートで生活していてね。冬華と私が同じ下宿アパートで部屋が隣同士だったの。」
「そうなんですね。」
「それで仲良くなって講義を受けたり、学内一緒に過ごしてたら仲良くなって、そしたら3年になってゼミが始まるようになると、私が辰悟さんと同じゼミになったというか、そのゼミ生が私たちしかいなかったみたいで。付き合うまで時間かからなかったわ。…じゃなくて。ゼミが始まって私と辰悟さんが仲良くなって、元々私と冬華が一緒に講義を受けてた所に辰悟さんが合流して3人が繋がってるのよ。」
幸絵が3人の馴れ初めを話し終えると辰悟が言った。
「そういや、冬華ちゃんのとこには、弟がいるんだってな。たしか、年が16離れた弟がいるって言ってなかったけか。」
「そういえば、そうね。」
「柊ママが、お姉ちゃん…。確かに自分には年の離れた姉がいると聞いてます。世話好きで、私は2歳まで姉に育てられたと母から聞きました。当時母は、私を産んでからの体調がすぐれず、良い悪いの繰り返しだったから、病院通いで母乳飲ませられないから、姉が母代わりで粉ミルクで2歳まで育てて、母の面倒を見ながら、高校に通っていたようです。何とか無事に大学に進学したから家を出たというのは聞いてはいますが、私には記憶がなくて、姉のこと知らなかったんです。」
「まあ、そんだけ離れていたら知らないのは本人だけだからな、しょうがないよ。」
「でも、これで、柊ママが私の姉と分かったなら、改めてお店に行ってきたいと思います。」
「伸幸さん、私も一緒に行く!」
間髪入れずに入り込んだのは、絵里だった。
「もちろん、絵里さんを連れて一緒に行ければと思いますが。」
辰悟と幸絵はニコニコしながら長島の話を聞いていた。辰悟が笑いながら。
「そんなの、私たちの許可なんていらん。弟なんだか、お姉ちゃんに甘えておいで。」
「はい!」
長島はコーヒーを飲み終えると、「ごちそうさまでした。」と飲み終えたコーヒーカップを自分で洗うと、出る準備を始めた。
「すいません。今回は、お世話になりました。」
「またいつでも遊びにおいで。」
「近い内に、柊ママの所へ、今度は姉に会いに行こうと思います。」
「うん。冬華と一杯お話できると良いね。」
「伸幸さん、気を付けて帰ってね。」
「うん。じゃあ、失礼します。」
長島は3人に一礼をして玄関を出て車に向かった。
車の前後左右、タイヤに異常が無いことを確認し車に乗車。シートとミラーの微調整を行ない、呼吸を一つ入れて「お願いします」と言いながらハンドルを握る。握りのフィット感を感じてエンジンをかけた。
長島は、助手席側の窓を開けて「それでは失礼します。」と告げると窓を閉め、車を走らせた。
少し進んだ先のコンビニでコーヒーを買い、一服していると、柊ママのことが忘れられないでいて、ずっと気がかりになっている。
「柊ママが、僕の姉ちゃん…。」
「姉ちゃんが母代わりだったのか…。」
不意に想い更けていた。タバコも一本のつもりが2本となり、進む吸い殻が慕いたい姉への煙となっていた。2本目のタバコを無理矢理吸い終わるとルーティンで車に乗り込む。
「ポップンして帰るか。」
長島は、松江のゲーセンに寄って、ポップンの練習で気持ちを落ち着かせようとした。
ゲーセンに到着し、音ゲーエリアに向かうと、一つしかないポップンには待ちが2人あった。3人目の待ち席に座り順番を待った。1プレイ10分、やっていると短いと感じるけど、待ってると相応の時間なんだなと感じる。けど、松江のゲーセンでやるプレイヤーはレベルが高いから見ていても勉強になるから、待っている時間も苦ではなかった。あっという間に、自分の順番になった。
「よし、やるか。」
長島はとりあえずとしての体慣らしで最初のプレイを終えた。同じメンバーで2周した頃、新たな待ちがやって来たのを確認して長島は待ちから外れて喫煙室で休憩することにした。
自販機で買った缶コーヒーを開け、タバコに火を付け一服する。そこに一組のカップルがやって来た。喫煙室の定員は2名なので、定員オーバーになると感じた長島は、吸い途中だったタバコを消して缶コーヒーを一気に流し込むと逃げるように喫煙室を出た。
「定員数を見てから入ってきてほしいよ。」
そんなことをついぼやいてしまった。
喫煙室を出た長島は、そのままゲーセンを出た。
「もうこのまま、素直に出雲に戻ろう。」
そういって、車を走らせ、国道431号線を出雲方面に向かった。途中、道の駅「秋鹿なぎさ公園」やコンビニでトイレ休憩やタバコ休憩を挟みながら出雲ドームまで戻ってきていた。
「このまま帰るの、なんかな~。さくら寄って昼食べて帰ろう。」
出雲ドームを示す案内板を過ぎて、ワイナリーの方から迂回する感じでカフェさくらに立ち寄った。
-続く-
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