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第15話:引っ越し当日
しおりを挟む3月7日、いよいよ今日が引っ越し当日を迎えた。
前日までに荷物を纏めることが出来た長島は、安堵の気持ちで絵里を迎えに行く準備をしていた。
10時。引き渡しの時間となり、大家さんが部屋にやって来た。
「長島さん、大家の大橋です。退去確認にやってきました。」
「はい、今開けます。」
「長島さん。いよいよ、引っ越しだね。」
「はい。本当は一年で引っ越す予定では無かったんですがね。彼女が出来て同棲することになったので、ここの単身じゃ狭いかなってことで、引っ越すことになったんですよ。」
長島の話を聞いた大家の大橋は、嬉しそうにした。
「そうかぁ。長島さんもパートナーが出来たんだな。それは、めでたい事です。大事にしてあげてください。」
「はい。ありがとうございます。」
「じゃあ、部屋の中を見させてもらいますよ。」
「はい、どうぞ。」
大橋は、部屋に上がり、部屋の見回りを始めた。
「一回、床が見えない程だったけど、敷金礼金の範囲内で大丈夫そうだね。」
「ありがとうございます。あの時、業者呼んで大掃除してから、これじゃまずいと思って綺麗を保つように頑張りました。」
「これなら、同棲始まっても大丈夫そうだね。」
「続けられるように、頑張ります。」
「じゃあ、退去の手続きに入ろうか。」
「はい。」
長島は、必要書類を記入して、退去の手続きを完了させた。
「うん。これで、ヨシッ。じゃあ、これからの同棲も頑張ってね。元気でね。」
「はい。ありがとうございました。」
長島は大橋が出たあと深々と一礼をして、部屋にもどった。最後の身の回りを確認して玄関へ。
「いよいよ、この部屋ともお別れか。結局、一年で引っ越すとは、な。今思えば、この一年、濃かったのかも知れないな。」
そう呟き、家を出る際に玄関で一礼をした。
部屋を出た長島は、鍵を返しに改めて管理人室に向かった。
「大家さん、短い間でしたが、本当にありがとうございました。」
「自分の体とパートナー、大事にね。」
「はい。では、行ってきます。」
そう言って長島は、アパートを出ていった。
その背中を見て、大橋は、そっと呟いた。
「頑張ってね。」
長島は、車の周りを確認して乗り込み、いつものようにハンドルに「今日もよろしく」と声をかけてエンジンをかけ、絵里の家に向かった。
平日の日中の時間帯の431号線は、流れがスムーズで順調に進んでいった。途中、松江の「秋鹿なぎさ公園」で小休憩をしに寄った。引っ越しを祝うかのような青空、宍道湖と白い雲の距離が近く、そこに、ボートで戯れる姿が長島の目を癒してくれた。
「ヨシッ。」と、ひと息入れると再び車に乗り込み出発した。その後、何度か時間調整をしながら、予定通りに12時に絵里の家に辿り着いた。
長島は玄関の前に立ち、深呼吸をしてチャイムを鳴らす。鳴らすと同時に玄関の扉が開いて絵里と辰悟、そして幸絵が出てきた。
「伸幸さ~ん。」と言って飛びついてきた絵里を長島は、何も分からず受け止めるようにハグをした。
「ちょっと、絵里ちゃん。おとうさん達見てるよ。」
「そんなこと、気にしてるの、大丈夫だよ、ね?」
絵里が振り返ると、幸絵は「あらあら。」と笑顔だったが、辰悟は少し頬を紅潮させて「ゴホン」と少し強く咳払いをした。それを見た絵里がニヤけて言う。
「あれ?お父さん、妬いてるの?」
「ち、ち、違うわ!人前でいちゃつくなって良いたいんだ。」
「良いじゃん、これから家族になる予定なんだし。コミュニケーションだよ。」
辰悟は絵里の答えに少しムキになって言った。
「今日からの同棲が無事に過ぎるまでは、儂は認めんからな。」
「そんな、強がっちゃって。本当は一緒になって欲しいクセに。」
辰悟は赤ら顔で家の中に入っていった。
幸絵は笑いながら言った。
「絵里ちゃん、やっちゃったね。」
「ゴメンナサイ♪」
絵里のテヘペロに幸絵は笑って許した。
「二人とも、自分の体とお互いを大事にするのよ。」
「はーい♪」
「伸幸さん、絵里をよろしくね。」
「かしこまりました。こちらこそよろしくです。」
二人は車に乗り込み、出雲へと車を走らせていった。
二人は道中でランチして、必要な物を買って新居に入った。
「ここが、新しい私たちの部屋なのね。」
「そうだよ。これからは此処が新しい場所だよ。」
絵里は持っていた荷物をその場に置くと、「やったー!」と小走りで各部屋を回った。長島は、絵里の荷物を持ち絵里の後を付いて回る。
「コンロ3口ある~。冷蔵庫も大きい。いっぱい料理しちゃうね。」
「うん。楽しみにしてるよ。」
「お風呂のシャワー、最新だぁ~!髪の毛ツヤツヤになって可愛くなれるかな。」
「今も可愛くて綺麗だよ。」
「も~、伸幸さんたらっ。あっ、洗濯機と乾燥機は別になってるのか。雨と冬は助かる~。」
「本当だね。」
「ねぇ、見て。ベッドも大きいよ。」
そう言って、絵里はベッドにダイブした。
「すごい、フカフカだぁ。伸幸さんも座ってみて。」「うん。」
長島は、絵里に言われた通りベッドに腰掛けた。
「本当にフカフカだね。」
家具家電付きということもあって、備え付けの家具家電を見ながら喜びを爆発させている。腰掛けたベッドから絵里の様子を微笑ましく見ていた長島は、いつの間にか瞼が重くなっていき、気づいたらそのままベッドで横になり寝落ちしてしまっていた。
気が付いて目が覚めた長島が時計を見ると17時を過ぎていた。どうやら3時間程眠っていたらしい。隣には絵里も眠っている。起き上がろうとするが、絵里が長島を抱き枕の様にしているため難しく絵里が目が覚めるまでそのままの状態で過ごした。
暫くすると絵里が目を覚ました。
「おはよう。」
「おはよう。ごめん、起こしちゃった?」
「ううん。大丈夫。伸幸さんの寝顔、可愛かった。」
そう言われた長島は恥ずかしさで赤ら顔になった。
「照れてるの?可愛い。」
余計に頬が紅潮した。
「あんまり言うと余計に恥ずかしくなるよ。」
「ごめん、ごめん。晩ご飯、どうする?」
「折角だから、この辺りの居酒屋で食べない?どんな店があるかも知りたいし。」
「良いね。そうしよう。」
二人は支度して代官町のお店を巡った。
その後、週末にかけて二人の荷解きを行なった。
-続く-
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