夏の嵐

宝楓カチカ🌹

文字の大きさ
26 / 227
7年前

12.*

しおりを挟む
「こわい……」
「大丈夫、こわくないよ。橘がいい子にしてたらもう殴ったりしないから。いい子じゃなかったらわからないけど。優しくしてほしい?」

 こくこくと何度も頷く。

「う、ん、うん……ッ」
「じゃあ、キスしてあげるから口あけて?」

 口を開ける前に、食らいつくように唇を押し付けられた。

「ん──ん、んぅ……んむ」
「は、ぁ……橘のくちびる、リップより甘いね……八重歯も、こんなにちっちゃかったんだ」
「は……ァ、ふ」
「可愛いなぁ……もう。かわいいね」

 舌をねじ込まれ、ちゅう、ちゅく、ちゅるぅ……と、絡みついてくる舌はしつこい。だらりとはみ出てしまった舌にさえゆるく噛み付かれ、また絡めとられた。

(口んなか、あつい。どろどろする……ぜんぶ、とけそう……)

 顎を伝う唾液が気持ち悪い。でもそれ以上に、舌の根本をぬとぉっと擦られると、腰の辺りがゾクゾクした。奥の歯から前歯にかけてを順番になぞられ、八重歯をくにくにと弄られるのもたまらない。
 頭の中が、ひどくぐらぐらした。
 ちゅぷ……と糸を引きながら引き抜かれた舌を、名残惜し気に追いかけてしまう。
 口の中がすぅすぅする。

「あ……」
「僕の舌、抜かれたくなかったの? しょうがないなぁ……口、開けててね」

 くいと顎を引かれて、姫宮がその上に舌を伸ばしてきた。またキスされるのかと思っていると、姫宮の舌の先からとろりと、唾液が垂れてきた。

「……っ」

 がっちりと顎を抑え込まれていたので逃げられなかった。しかも親指が強引に口の中に入ってきて、口を閉じられないようにされる。

「ぐ……」
「飲んで」

 嫌だ。姫宮に舌打ちされた。

「飲めよ、橘……飲め」

 ちょっとの拒絶で、姫宮は「怖い姫宮」になる。
 結局、無味無臭の唾液を舌で受け止めざるを得なかった。
 とろとろと喉の奥にたまった二人分の唾液をんく……と飲み下せば、姫宮が嬉しそうに笑った。そしてまた口を強制的に開けられ、同じことを何度か繰り返される。
 熱い液体を舌の上で馴染ませ、従順に喉を鳴らし続けた俺に、姫宮はようやく満足したようだ。

「ふふ……僕の唾液、おいしい?」
「け、ほ」
「おいしいでしょ、おいしいって言って?」

 ちゅ、ちゅ、と顔中にキスの雨が降ってきた。

「さっさと言えよ」

 びくりとして、「おいしい」とか細い声を出せば、すりすりと頬ずりをされた。
 口周りも涎塗れなのに、汚くないのだろうか。

「じゃあもっといいものあげるから、いい子にしててね」

 そのまま、頭を深く抱えこまれた。

「う、ぁああ! 痛いっ」
「しー……橘、落ち着いて。しー……ほら、僕を見て」

 奥を目指されながら、あやすようにまぶたに口付けられる。涙で滲んだ顔で姫宮を見上げれば、姫宮は嬉しくて仕方がないとでもいうように微笑んでいた。
 赤らんだ頬は、まるでもぎたての林檎のようで。

「うん、そのまま僕を見てて。大丈夫だから、だいじょうぶ……ね?」

 根拠のない「大丈夫」を繰り返しながら、姫宮はずるりと引き抜いては、挿入しやすい位置を探るためか、ぐりぐりと腰を推し進めてくる。

「ふ、うぅ、ぐ、う」
「もっと足を開いて。閉じちゃダメだ。そう、いい子だね……力を抜いて」

 唇を噛みしめて、最後まで貫かれるまでの長い時間を、耐えしのぶしかなかった。

「っ……──ッ!!」


 トンっと姫宮の恥骨が下腹部に当たり、ふっと意識が遠ざかった。
しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 【花言葉】 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです! 【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。 ◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

処理中です...