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前篇
交わる(3)*
しおりを挟む「……っ」
なんだこれは。なんだ、これは。
つるっとした割れ目に唇と鼻を押し付けられ、すんと鼻を鳴らしてくる仕草が信じられない。
たしかに、だ。そこは、マティアスにも指と舌で散々嬲られた。しかし相手がこの男となれば話は別だ。
アレクシスにそんなところを触れられたことなど、これまで一度もなかったのだから。
羞恥どころではない、あらゆる意味で、もはや恐怖に近い。
アレクシスがちらりとリョウヤに視線を向け、指で双丘をくっと押し開き、そのまま舌を伸ばしてきた。
真っ赤な舌先が、熱のこもった入口をぺろりと舐め、そのままにゅるん、と押し入ってくる。
「は、ぁ……ッ」
たまらず、吐息が鼻から抜けた。
頭上のシーツが破けそうになるくらい強く強く掴み、濡らされていく感覚に首を振る。痛みはない。ただただ柔らかかった。埋められているアレクシスの、舌の形までわかりそうなほどに。
「あ……あぁ、んん」
ぐにっと膣口をさらに広げられ、アレクシスが顔の角度をかえてさらに深く舌を這わせてきた。執拗な愛撫によって、泡立つ液がぐちゅりと弾ける。じゅわっと、中から蜜液が溢れてきたのが自分でもわかる。
しとどに溢れる体液を一滴残らず舐め尽くすように、じゅるりと溢れるそれを吸われ、舐められ、また唇全体で吸われて──まるで、食らい尽くされているみたいだった。
「んッ……ぁっ、んッ……ぅ」
じわじわと、腰の奥から広がってくるゆるやかな快感に、ふるりと背筋が仰け反る。
粘つく糸を引く唇までも、ぺろりと舐めとる厚めの舌。アレクシスの唇の端にはリョウヤの血がべったりと付着していた。鼻の、横にも。
その血をくいと指で拭ったアレクシスは、それすらもぺろりと舐め取った──とんでもない。
今、リョウヤはとんでもないことをされている。
本当に、とんでもない。
しかも、アレクシスはあろうことか。
「……甘い」
なんて、思わず溢れたみたいにそんなことを呟いてくるものだから、もはやパニックに陥った。
「……っ、う」
びくんと伸びたつま先でシーツを蹴り飛ばしてしまい、勢い余ってアレクシスの腰に当たる。結構な勢いだったらしく、アレクシスが痛みに唸った。
「あっ、ご、ごめ……お、俺、足……」
わざとではなかったが、蹴ってしまった事実に変わりはない。手が伸びてくる。殴られると思ってびくりと横を向く。しかし予想していた衝撃は襲ってこない。殴打の代わりに左頬に押し付けられたのは、ざらついた感触。
アレクシスの、指だ。
「邪魔だ、な」
頬に触れていた指が離れる。ぽすんと、遠くにものが放り投げられた音。
再度、頬に何かを、添えられた。
つう、と頬を撫でてくるそれに違和感を覚える。やけにしっとりとしていて、慣れない感触だった。それになんだか、ぎこちなさが伝わってくる。
手袋越しの指ではない。
これはどちらかと言うと、生身の──手?
「……やけに熱いな」
こわごわと視線を向ければ、視界の隅に生白い手が見えた。
頬に添えられていたのは、アレクシスの右手だった。驚いた。こんなに至近距離から、手袋に覆われていないアレクシスの手が、見れるとは。
そう。今リョウヤは、素手で頬に触れられていた、らしい。
ベッドの端に、彼が愛用していた手袋が2つ落ちているのも見えた。もしかしなくとも、アレクシスが邪魔だと言って放り投げたものは、あれか?
どうして、わざわざ外したのか。アレクシスにとっての手袋は、リョウヤに触れる際の必需品だったというのに。
アレクシスは何も言わず、じっとリョウヤを見つめてくるだけだ。
何か、訴えたいことがあるみたいに。
添えられていた指が手のひらへと変わり、こわごわと、頬を包み込まれた。
まるで、壊れものを扱うような繊細さだ。こういう触れ方をする人だとは、知らなかった。
そのまま互いに、沈黙が降りる。
呆けたまま見上げたアレクシスの瞳は、赤と紫が混ざり合ったような色をしていた。不思議だ。今まではどろっとくすんだ血の色にしか見えなかったのに。
彼を多い隠していた分厚い層が晴れ、星明りが瞬く前の、夕暮れの色を閉じ込めた宝石みたいだと、思った。
頬から手が外され、そろりと顎に指先がかかる。
光のような白銀をまとった美しい顔が、近づいてきた。
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