竜騎士のヴァッシュとラミアの少女 ~幻獣ハンター記録譚~

ホクチャッピー

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ハンティング4「ファング共闘戦線・前編」

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 戦闘開始したヴァッシュとガロイアは、怒濤の勢いでオーク達を圧倒して闘っていた。

「おぉおおおおおっっっ……らぁあああっ!!」

 ヴァッシュの炎の拳が連続で繰り出され、重く食らったオーク達を次々と吹っ飛ばし、更に回し蹴りで蹴り飛ばしていく。

「そらそらそらぁ……っしゃあああっ!!」

 素早いクライス・レイザーの鋭利な連続斬撃が、オーク達の重圧感ある体を簡単に斬り裂いて圧倒する。

 昼下がり時のレバノイアに押し寄せるオークの武装集団の蹂躙は、土砂のごとく拡大し、レバノイア史上最悪の事態を招いていた。

 これも、またある種のテロと言えよう。

 そしてまた、彼らの襲撃予告に対し、対応を慎重にし過ぎていたレバノイア側にも問題がある事態であった。

 市役所において、レバノイア市長に役員が蒼白気味になって報告する。

「し、市長!!オークの連中が予告通りに襲撃をかけてきました!!」

「何?!郊外の警察団はどうなったのだ!?」

「既に壊滅との事です……奴等は数で警察団を圧倒し、更に被害を拡大させ、大勢の市民が犠牲に……!!レバノイア史上最悪の事態です!!」

「くぅっ……この件に関わったファング達は今?!」

「恐らく市内のどこかに!!」

 「ミーティング前に先手を打たれた!!これも慎重にし過ぎていた私の責任だっ……!!奴等は……欲望の為の手段を選ばないのか!?」 

 レバノイア市長は、自らの判断が招いた人災だと認識し、机を叩きながら不覚を悔やんだ。

 暴徒のごときオークの集団は、街の至る所で破壊行為をやり尽くそうと暴れる。

 その中で焦りという見えない敵に監視されながらも、ヴァッシュとガロイアは闘い通し続ける。

「早く……蹴散らして……フィレナをっ……!!」

「あぁ……だが、流石に………うぜーなっっ!!飛ばすぜ!!」
 
 勢いを付けたクライス・レイザーの一撃を食らわせたガロイアは、自身の魔力を発動させる。

 ガロイアは無属性の魔力を有しており、その魔力はスピードを主流とした魔力効果を持っていた。

「蹴散らすっ!!ソニック・スティーゲン!!」

 青白いオーラを発動させたガロイアは、先程のスピードを上回る身体スピードになり、身体速度が格段に上昇した。

 オーク達を弾き飛ばすかのように、ダッシュを合わせた攻撃を開始し、 多勢に対抗した速さで斬り裂いて圧倒する。

 魔力は脚力スピードを重点化しているが、斬撃速度も上昇する為、結果的に攻撃力も上昇していた。

 ガロイアは、ワンステップの跳躍のアッパーで、3体のオークを斬り飛ばす。

 だが、効果は一定時間に限られる為、その間にいかに敵を斃すかが勝負となる。

 一方のヴァッシュも自身の不覚の怒りをオークに激突させて闘う。

「いつまでも邪魔すんな、クソ豚ヤロウ!!!」 

 ぶっ飛ばしたオークが、他のオークに将棋倒しを引き起こす。

 だが、直ぐに別のオーク達が攻め混む。

「うざってぇええええっっ!!」

 それに対し、ガロイアはガムシャラなまでにオークを斬り刻んで突っ込む。

 そこからガロイアは更に加速し、ビリヤードボールが弾くような動きと速さで、多数のオークを一気に圧倒した。

 斬撃されたオーク達が、四方八方の宙をバラバラに舞う。

 ガロイアは着地からの瞬発的なステップでクライス・レイザーのアッパーを吠えているオークへ食らわせた。

 顎を斬り砕かれたオークを中心に、周囲のオーク達も斬撃の衝撃で次々に吹っ飛ぶ。

「しゃあああっ!!!」

 パンチ、フック、アッパー、カウンター攻撃を繰り出すヴァッシュは、不意のダメージを引きずって闘っていた。

「不覚やっちまった代償か……!!」

 フェイタル・ウィングがあれば一掃できる敵を個々に攻めなければならない事が、先程のダメージを疼かせる。

 ヴァッシュは、攻め来るオークの攻撃を流れるように躱し、 面前からメリケンナックルを繰り出したオークにカウンターの一撃を打ち込む。

 「バーン・ブレイクッ!!」

 炎の魔力を宿したヴァッシュの拳がめり込むと、バーン・ブレイクの魔力が爆発し、オークは凄まじく爆砕する。

 背後にいたオーク達も爆発の巻き添えとなり、立て続けにぶっ飛ばされた。

 ガロイアも魔力をチャージし、ソニック・スティーゲンを維持したまま、必殺技を発動させた。

「シザース・インパクト!!」

 一瞬で、数十メートルを駆け抜けながら一閃の斬撃を浴びせる超高速の斬撃技が炸裂する。

 多数のオーク達が、爆発するかのようにぶっ飛ばされた。

 この瞬間、攻め続けたオーク達の行動が止まる。

 ヴァッシュと牽制する空気に切り替わったのだ。

 ヴァッシュとガロイアは、この隙に背中合わせで互いの武器を構える位置に立つ。

 だが、牽制するオーク達は、二人に距離を置きつつも、闘争心を終わらせる事はなかった。

息を荒くして戦闘体勢を維持する。

「もーいっちょ、バーン・ブレイクかますかぁ!?」

「はははっ!!豚の丸焼きってか!?ポーク料理が食いたくなるなぁ!!」

 暫く続いた牽制の空気が、オーク達の吠えにより、再び攻め混みを開始する。

 その時だった。

  奥面にたオーク達が突如と銃撃に倒れていった。

 それは魔弾丸の銃撃だった。

 更にそれを追うかのように一発の強烈な魔弾が飛び込み、凄まじき爆発と共にオーク達を一掃させた。

 爆発の規模はバーン・ブレイクの更に上をいく。

「っ!!?何だぁ!?!」

「おっ……こいつはもしや!?一旦離脱すっぜ!!」

「あ!?あぁ……!!」

 ヴァッシュとガロイアはその場から跳躍し、予測砲撃範囲から離脱した。

 それを放ったのは鎧の男とサイボーグミノタウロスだった。

 サイボーグミノタウロスは、その重厚なボディーをホバー走行で走らせながら進撃する。

 鎧の男は、サイボーグミノタウロスの右腕と一体のアックスに乗りながら魔導ハンドガンを構えていた。

 「薄汚い豚が揃いに揃って大集合してやがる。挨拶がてらの射撃はこれだけだ。ゾルドタウラ!!とっとと掃除すっぞ!!奴等は食えそーにねー」

『そのつもりだ、グライヴ。俺もオークは好かん!!』
 
 ゾルドタウラは、ホバー走行をしながら左腕のアルム・ランチャーを構え、同時に胸部のシールド装甲を開いて六連魔導ガトリングをさらけ出す。

「バカげた大乱闘は……一掃させるが一番だぁ……グライヴ・ガレッド、撃ち砕く!!」

 鎧の男・グライヴは、魔導ハンドガン・マグナンティアを再び構え、バズーカのような重い射撃音を発しながら射撃する。

 マグナンティアに射(う)たれたオークが、次々とその魔弾に撃ち倒され、巨体を地面へと伏せさせていく。

 『砕き散らす……!!』

 グライヴが射撃する最中、ゾルドタウラは六連魔導ガトリング・ブルスト・ファランクをぶっ放しつつ、アルム・ランチャーの銃口に地属性の魔力をチャージさせた。

 ホバー走行しながらのブルスト・ファランクの射撃の直撃がオーク達を次々と文字通りに砕き散らす。

 前から押し潰されるようにオーク達が砕き散らされる中で、銃口爆発を起こす大型魔弾が撃ち放たれた。

 アルム・ランチャーの大型魔弾の直撃は、凄まじい着弾爆発を巻き起こし、群れるオーク達を一瞬で爆殺させる。

 更に別の方角のエリアでは、金髪の少年を乗せたグリフォンが低空を高速飛行して突き進んでいた。

「ニヒヒ!!さぁ!!グリファリオ!!一気に行くぜ!!」

『あぁ、ルファント。今朝のギャガルー共に比べれば楽しめそうだ……無双の時間をな……!!』

「無双か……へへっ!!ルファント・ルスタル、見舞っちまうぜぇ!!シュトース・レール!!」

 ルファントは、右手にスプントーネタイプのランスを握りながら、左手でグリファリオの首の付け根に装着されたグリップレバーのトリガーを引いた。

 こちらは左右個々に操作するバイク型グリップとは別に、片手で左右同時に撃つ為のグリップだ。

 グリファリオの体の左右に装備された魔導レールガン・シュトース・レールが、甲高い射撃音を響かせて発射される。

 風属性の魔導レールガンが、多数のオーク達を二軸線上に高速で撃ち抜き、凄まじい破壊力で瞬間的にオーク達の体を破壊する。

 グリファリオが高速で低空を駆けながら、ルファントがシュトース・レールを幾度も連発してみせる。

 密集していたオーク達は、弾き飛ぶように粉砕されていった。

『突っ込むぜ!!』

「あいよぉおおおっ!!」

 更に一掃されかけている所へ、ルファントが右手に握り閉めたランス・トラスティアルの突きと、グリファリオのクロー攻撃が怒濤の勢いで駆け抜ける。

 その攻撃は、ガロイアのシザース・インパクトよろしくオーク達を次々と蹴散らした。

  グリファリオはその勢いのまま、低空を高速旋回し、強靭な脚で地面をスライドしながら着地する。

『この距離……やれるな!!』
 
 そして、身構えながら混乱するオーク達を目掛け、嘴(くちばし)を開口し、竜巻のごときブレスを吐いた。

 ルファントはニヤニヤしながら、グリファリオの必殺技に浸る。

 余裕と自信の姿勢だ。

 「……ストーム・ブラスタル!!カマイタチを巻き起こす竜巻のブレス!!グリファリオの必殺技さ!!バラバラになんなー、オーク共!!」
  
  凄まじい竜巻がオークの集団を吹き飛ばし、竜巻の中で起こる強烈なカマイタチにより、食らった個々のオークはバラバラになって吹き飛ばされていった。

 更に別のエリアでは、二足歩行のキメラ型モンスターが大地を踏みしめて現れる。

 サイの頭部に獅子のたてがみ、剛腕とガッシリとした胸部、ミノタウロスの下半身、そしてギガバットの翼がついたモンスターだ。

 更にその体に鎧装甲を装備しており、胸部中央には更に大口径の魔導砲が装備されていた。

 そして足下には、銀の甲冑を纏った銀髪のメガネの男が、ドリルランスを手にして立っている。

 男は、短くキメラに語りかけた。

「ボルガノス……話しにあったオークの連中だ……挨拶がわりに駆逐するぞ」

 契約モンスターのキメラ・ボルガノスはガッシリと重厚な体を改めて踏みしめた。

『無論だ、レスタル・ガイアット。愚物は破砕させるまでだ!!』

「ふっ……ヴァーチェスト・カノーネ……発射してやれ!」

 姿勢をガッシリと身構えるボルガノス。

 胸部中心の大型魔導砲に魔力がチャージされ、砲口に紫の魔導弾を形成させていく。

 魔導弾は序々に大きくなり、ジリジリという電気のような音が響く。

『愚物共は消え失せるがいい……!!』

 くわっと見開いたボルガノスは、次の瞬間に魔導光弾を撃ち飛ばした。

 ボルガノスの巨体が、反動で若干下がる。

 ヴァーチェスト・カノーネの魔導光弾が、ボルガノス面前のオーク達を一挙に破砕・消滅させ、更にその向こう側にいるオークの群れへと魔導光弾は直進する。

 そして魔導光弾は次々と一直線で、凄まじい威力奮いながらオーク達を爆殺させて焼き払っていった。

『脆い連中だ』

「こっちが圧倒的過ぎるのさ……俺のドリルランス、ガイヴォルクも披露したい……余った目の前の群れに突っ込む!!」

 レスタルがドリルランス・ガイヴォルクで方向を示し、ボルガノスも意気投合の意を表して見据えた。

『あぁ……俺もそうしたいと思った所だ!!』

 ボルガノスは四足歩行体勢になり、ボルガノスの肩にレスタルが又借る。

 レスタルは装着されたグリップを握ると、ガイヴォルクの切っ先を真っ直ぐに突き出して見せた。

『いくぞ……!!』

 そして速筋を生かした瞬発的な加速、重い巨体を感じさせないスピードでボルガノスがダッシュをかける。

 一本の角と高速回転するガイヴォルクのドリルランスを乗せた重厚なボディーが、オーク達を次々と一掃させ、文字通りに凄まじい勢いで蹴散らす。

 重戦車のごとく駆け抜けるボルガノスの圧倒を前に、オーク達は蟻同然に駆逐されていく。

「そのままこの先の群れにも突っ込む……!!」

『おぉおおおお!!』

 加速して突き進むボルガノスは、連続してオークの群れを突き飛ばし、オークを串刺しにしたまま踏みつけ、ぶっ飛ばす。

 その最中でレスタルは、ガイヴォルクに魔力を宿させる。

 これにより、更なる破壊力が増した。

「ヴァーチェス・トラスター!!」

 ガイヴォルクが高速で回転を開始し、レスタルとボルガノスとの突進技・ヴァーチェス・トラスターが炸裂。

 超高速回転するランスが、突き当たったオークの体を抉り砕いて豪快に突き飛ばしていく。

 モンスター弾丸重戦車と化したボルガノスは、最早打つ手無しの脅威だ。

『そろそろ建造物だ……止まるぞ』

 建造物崩壊を予測したボルガノスは、走りを止め、地表に凄まじい勢いの制動をかけた。

 スライドしながらオーク達を弾き殺して、自身のスピードを緩めていくボルガノスは、ターンをかけながらその巨体を止めた。

 彼らが駆け抜けた後には、土埃と共に幾多にも及ぶオークの骸が転がる光景が広がっている。

「やれやれ……やり過ぎたか……」

 レスタルは突っ込んできた道のりを見つめながら、メガネのズレを直しつつ平然と呟いた。

 更に他の場所では、アームリボルバーガンをぶっ放すゴーレムとニードルハンマーを振り回す契約者の厳つい青年、ガルーダの神官が放つ攻撃魔法と共にオークを駆逐する魔法少年、サラマンダーの力を宿して剣術を見せつける魔法剣士、猛将のごとくトライデントを振り回しながらオークの群れに突っ込むケンタウロスのファング、ワイバーンを駆るヴァッシュ同様の竜騎士の姿が見られた。

 彼らの増援により、各地のオーク達は流石に打つ手無しと見なし、撤退を開始していく。

 まるで川が逆流するかのようにオーク達が、元来た道を引き返していく。その中で、ヴァッシュとガロイアはグライヴ達の戦闘をその目で確認していた。

「こいつらがさっき言っていた……」

「あぁ……今回共闘するファング達だ。まずはミーティング……っておい、ヴァッシュ!!」

 ガロイアがこれからの戦闘の段取りを話そうとした矢先に、ヴァッシュは足に魔力を発動させ、振り切るように跳躍した。
 
「俺の油断がフィレナを拉致させちまったんだ!!一刻の有余も無いっ!!後は頼んだ!!」

 ヴァッシュはそう叫びながら、跳躍から跳躍を繋ぎ、見る見る内に遥か遠方に進んで行った。

 言いかけたガロイアの言葉も、呆気なく中途半端にされてしまった。

「バカやろっ、今回は戦闘規模がだなぁ……って……もうあんな遠くにいっちまいやがった……!!ヴァッシュのやつ、女でああもなったことはないんだがなぁ……否、あのラミアのお嬢さんがヴァッシュのやつをああまで影響させたってことかぁ……?!」

 ヴァッシュは頭をかくガロイアの許を後にし、フィレナ救出を目指し、熱い眼差しで弾丸のごとく駆ける。

 戦意を放棄したオーク達を跳躍毎に炎の足で踏みつけてみせるのは雑作もなかった。

「豚共が……必ずつれ返してやるっ……!!」

 自身の油断が彼女を危険な目に、それも女性であれば尚更避けたい事態にさらしてしまった。

 ヴァッシュは自分自身とオーク達に対し、怒りの精神をたぎらせる。

 そして怒りの瞳孔を広げ、魔力の更なる跳躍でオークを踏み台にして舞い上がった。

 ガロイアはその時はじめてヴァッシュが私服で闘っていた事に気づく。

「そーいや、あいつ……丸腰で闘っていたんだよな……平然と違和感なく闘っていたから忘れちまってたぜ。しゃーねーな……後でいつもの戦闘メイルを届けるしかねー!!一旦戻るか!!」

 ヴァッシュの無防備さにガロイアは背中を見送らざるを得なかった。

 そこへブレーキをかけながらゾルドタウラが止まり、グリファリオがはためきながら降り立った。

 ゾルドタウラから降りたグライヴが、マグナンティアの銃口を上に向け構えたまま、ガロイアに投げかけた。

「これでとりあえずの掃除はできたな!!今日は宜しく頼むぜぇ、狼さん!」

「おめーら!!ったく、俺達を吹っ飛ばす気か!?」

「ちょっとばかし過激にしちゃっただけっ!!それに、オーク共も退散してるし、結果オーライさ!!」

 ルファントは頭の後ろに手を組んで意気揚々として話す。

 ガロイアはやれやれと言わんばかりの溜め息を吐くと、彼らに一旦戻る事を告げ始める。

「……俺は先行した相棒の為に、一旦飛空挺に戻る!流石に肉弾のてめー武器だけじゃ無謀すぎらぁ……他のファングの奴等にも伝えておいてくれ!!先に行ってくれてかまわねー」

「へー!!あんたら飛空挺持ってるのか!!かせいでるな~!!またご贔屓(ひいき)に……そんじゃー、伝えとくぜ!!」

「あぁ……頼んだ。後、俺は狼じゃない……人狼のガロイアさ」

「そいつはまた失敬……俺はグライヴ・ガレット。しがないファングだ。で、こいつはゾルドタウラ……魔導サイボーグのミノタウロスさ」

『砕き散らすのが俺達のモットーだ……』

「グリフォンライダーのルファント・ルスタル!!共同のハンティング宜しく!!後、相棒のグリファリオも宜しくな!!」

『宜しく……』

「あぁ、宜しく……そんじゃあ、俺は一旦飛空挺にもどる!!」

 ガロイアはそう言い残し、ヴァッシュを遥かに上回るスピードでシュッと跳躍して、その場を後にした。

 一方、金目の物資を略奪したオークや、放心状態のフィレナをはじめ、他の気を失わせた女性達を抱えたオーク達は、1体の大柄かつ筋肉質なオークと郊外で合流していた。

 肩にニードルショルダー、腰にブレイクロッドを提げているのが目立つ。

 そのオークは撤退をしてきた他のオーク達を見下すような視線でものを言う。

「てめぇら……予定より早すぎな帰還だなぁ……手始めに欲望の限り蹂躙し尽くせとの命令だったが……まさか逃げ帰ったとか言うなよ?」

「ドモス様!!実はコンタクターのファング達の返り討ちに合いまして……」

 ドモスと呼ばれた大型のオークは、一瞬血走った眼光を見せた。

 オーク達一同はその凶器的な眼光に恐れおののく。

「ひっ!!」

「……警察団ごときに帰ったのならここでてめぇらを豚肉に晒し上げていたが……コンタクターならてめぇらじゃ仕方ねぇな……」

「あ、ありがとうございます!!」

 するとドモスは、拉致された女性達をなめ回すように見渡す。

「金目のモノを略奪した連中はとっととアジトへもって行け!!ほほ~……こっから欲望祭りが開催ってわけだぁ」

 女性達の胸をためらいなく平然と握るドモス。

 「っ!!やぁああああっ!!」

 急激な出来事に意識を取り戻した女性は、叫びながら抵抗、拒絶をする。

「くくくく……言い声だ……上もさぞかし楽しむ事だろうよ……特に亜人種なんかはな」

 ドモスはそう言いながら目に止まったフィレナの頬を撫でるように指でなぞる。

 だが、放心状態のフィレナは無反応なままだった。

「なんだ?このラミア?ヘヘっ、恐怖の余りに放心状態ってか!?悪くない……」

「あたしを……殺して……あたしを……殺して……」

「はっはは……絶望の余りに死を望んでやがる……安心しな……お前は性欲のおもちゃにしてやる……ぐへはははっ!!」

 フィレナは泪を流しながら自らの死を望み呟く。

 夜の次には朝。

 だが逆もまたしかり。

 つい先程まで幸せな一時を送っていた時間が短期に終わりを告げ、汚らわしい絶望にさらされたのだ。

 その絶望と自らのラミアの罪とが重なった彼女の重い哀しみが、死を望ませる。

「連れてけ!!」

「はいい!!」

 オーク達はドモスの命令と共に、拉致した女性達を抱えながらわらわらと進み出し、向かい来る魔導トラックに合流していく。

 魔導技術で動くホバートラックだ。

 流れ込むように数台の魔導トラックに乗り込んでいくオーク達。

 フィレナ達女性陣も次々と担ぎ込まれていく。

 走り去る魔導トラックを見送った直後、ドモスは反対側の遠方より来る何者かの気配に振り向く。

 その気配の者は、オーク達を踏み潰して跳躍する者に気づく。

「何だ……!?」

 それはヴァッシュの姿だった。

 ホバートラックに乗り損ねたオークの一人がドモスに叫ぶ。

「あ、あれは……コンタクターの一人です!!」

 跳躍毎に個々のオーク達を潰しながら進撃する様にドモスは鋭利な牙を見せながらニヤケづく。

「ほほ~……奴がか!!面白い!!」

 次の瞬間の跳躍で、ヴァッシュは体格的に目立つドモスを目掛け、斜め上からの飛び蹴りを食らわせようと襲いかかった。

 だが、ドモスはアームズ・フレイムを纏った足を腕の甲で受け止めた。

「……!!」

「ふっ……!!」

 肉弾の衝突音を鳴らせながら、ヴァッシュは反動を利用した宙返りをし、着地した。

「今少し聞かせてもらった……俺の下部共を殺ったコンタクターのファングがいるとな……」

 ドモスは、フィレナ達を拉致していくオーク達の前に立ちはだかり、ヴァッシュと対峙する。

 ヴァッシュは、一言も発する事なくドモスへと拳を打ち込む。

 だが、ドモスの胸部のプロテクターが阻んだ。

 それ以前にも、ドモスは他のオークとは格が違った。

 ヴァッシュは構わず拳と蹴りを繰り出すが、ドモスはそれをガードして耐え抜いてしまう。

「人間がこの俺に肉弾戦を挑むとはな……ふん!!」

 瞬発的に豪腕の拳がヴァッシュに炸裂した。

 咄嗟にヴァッシュはガードするが、拳の衝突と共に体が吹っ飛ばされてしまう。

「っ!!」

 ドモスのような大型オークと人間の体の根本的な違いからして肉弾戦は余りにも無謀だった。

 しかし、ヴァッシュの眼差しは微塵も引き下がってはいない。

 吹っ飛ばされながらもスライドしながら踏み止まり、瞬発的なダッシュと共に炎の拳を振りかぶる。

「らぁああああああ!!」

 ドモスもそれを豪腕の拳で再度対抗。

 両者の拳同士がぶつかる。

  通常の人間ならば既に骨が砕け散るほどの衝撃がはしる。

「ぬぅん!!」

 ドモスのハンマーのごときフックが、間をおかずして、ヴァッシュに打ち込まれた。

「がっ……!?」

 フックの衝撃を受けたヴァッシュは、横へと大きく吹っ飛ばされてしまい、地面を転がる。

 だが、バンと自身の体を弾かせるように宙を舞い、大地に足を踏み止めた。

 オーラ・フレイムを纏った事で、フックそのもののダメージは軽減されていた。

「ヤロー……オークの分際で魔力持ってやがる!!」

 ドモスと少し拳のやり取りをしただけで、ヴァッシュはドモスに魔力が宿っている事が判った。

 他のオークに効いた肉弾のアームズ・フレイムがドモスに効かなかったのは、強靭な筋肉に纏った魔力のせいであった。

「よくわかったなぁ……ま、厳密に言えば魔力増強薬・マナペプタンを投与してるんだがな……!!」

「直に筋肉を魔力で強化か……流石だ……裏ルートアイテムとはな!!」

 マナペプタンとは裏ルートで出回っている魔力増強薬だ。

 用法・用量次第で、自身にピンキリの魔力を宿す事を可能にしたものであり、修行無しで手に入れる事ができる。

 そのチート性故に、一般の表世界では麻薬と同じ扱いで厳しく取り締まわれているものだった。

 ある意味一般的には、飲用か血液内への投与かであるが、ドモスは自身の筋肉に直接投与していた。

「……ま、一回ぶつかりゃわかるさ。豚肉バカが!!」

「さて、殺すか……!!」

 静な殺気を一瞬放ち、ドモスは一気に怒りの突進に踏み切った。

 その巨体を感じさせない素早さでヴァッシュに迫る。

 先程の拳の威力を上回る攻撃と予測したヴァッシュは、跳躍して躱す。

 その躱したドモスのタックルは、側面上にあった岩をも軽々と粉砕させた。

 更に跳躍したヴァッシュを振り向きながら殴るように掴む。

「ちぃっ!!」

「掴んだぁっ!!ぅぉうらぁあああああ!!」

ドモスは、 一度ヴァッシュを掴んだ腕を振り、遠心力をかけた勢いを上乗せして地面へと叩き伏せた。

 地表が砕け散る衝撃音が響き渡る。







 惨劇が去ったレバノイアの街。

 変わり果てた市民達があちらこちらに横たわっており、悲しみの泣き声や苦しみのうめき声、サイレンの音が響き渡る。

 ヴァッシュとフィレナがいたカフェには、ヴァッシュがフィレナに買ってあげた服が空しく散乱していた。

 警察団が事後処理を進める中、グライヴやルファント、レスタル達は、市役所内にて共闘ミーティングをしていた。

 敷地の外では、各契約モンスター達が集いながら待機していた。

 会議室では各々のコンタクターや亜人種のファングが集い、オークのアジト陥落へ向けての作戦会議を執り行われる。

 自責の想いを抱えたレバノイア市長自らが、魔導モニターの前に立って話を進めていた。

 「……オーク達が集まっているアジトは……このように岩場が入り組んだ広大な山岳地帯にある。岩場と岩場の間にかつて川があった跡があり、それが道のようになっている。その間にオーク達が集まっているテントのようなものが転々とあり、岩場の最新部には洞窟らしき巨大な穴がある。恐らくはこの奥に奴等を束ねるボスがいるはずだ……」

 モニターに各ポイントの拡大図が表示され、これまでに調査されたデータがファング達に提供される。

 山岳地帯の手前は荒野と草原が混じりあった広大な地表が広がる。

 大概の下っぱのオークは、この辺りを徘徊しているようであった。

「因みにこの映像やデータは全て我が市の小型飛空挺から上空撮影されたものです。問題は、岩場エリア……これまでの全てのファングがここで消息を絶っており……識別できない巨大なモンスターも確認されている……検証しても確認されている該当モンスターはいなかった」

 アップにされる巨大モンスター。

 だが、詳細は巨大な四つん這いの人形と、東洋のモンスター・海坊主状の頭部の外見以外は一切不明であった。

「犠牲になったファング達はおそらくはこのモンスターにより、やられたと推測される……是非とも気を引き締めて頂きたい。では次に……進攻するルートを……」

 レバノイア市長は更にモニター操作をし、進撃ルートを練る段階へ移す。

「最初は荒野と草原エリアの雑兵を一掃……ごり押しで攻めた後に、空を飛べる者は謎の巨大モンスターの偵察してもらいたい。そして場合によっては先行して戦闘・駆逐、もしくは共闘しながら対処してもらい……洞窟エリアを叩き潰して頂きたい。砲撃、総力戦、なんでもいい」

 拉致された女性達が視野に入れられていなかった市長の発言に、素顔のグライヴが意見を投げかける。

 凛々しい天然パーマのロン毛の男だった。

「ちょっと待った……中には拉致された女性市民達がいるはず。アジトそのものを破壊するのは救出が済んでからだ。じゃなきゃ彼女達がとんでもないことになるぜ?」

「そーそー!!女の子は大切に扱わないといけねーぜ、市長のおっちゃん!!だめだなー!!」

 ルファントのヤジも加わり、市長はたじたじとなり、少しばかり焦る様子を見せる。

「こ、これは済まない……市長の私としたことが市民女性を考慮から見落とすとは!!」

 すると、グライヴに共感するようにガルーダの神官が意見を述べた。

「ガルーダのファルキアです。私も彼らの意見はもっともと……そこで警察団に我々の進撃ルートからついてきてもらい、安全を確認した後に突入・救出するというのは?」

「契約者のスレッグ・トール!俺も同意見!!」

「スレッグはいつも私の意見に流され過ぎでは?」

「うぎ!?」

 契約者のスレッグにだめ押しするファルキア。

 その後にサラマンダーの契約者の魔法剣士とゴーレムの契約者の男が続く。

「レフェント・ジェスナ。それはそれでよしとして、岩場エリアからそれぞれ空と地上に別れて進撃ルートを決めようか。無論、俺は地上だ」

「俺はアルゴ・ボルト。俺と相棒のゴレアントは地上無双だな!!」

 レスタルはメガネのズレを直しながら空戦攻撃も考慮して発言する。

「無論……俺とボルガノスも地上だ。場合によれば空中からも可能だが……」

「ケンタウロスのアルガイアだ。我がトライデントで無双を演じてみせよう……」

 すると、ファルキアが自ら空中偵察を志願して提案をした。

「空からの先行偵察・攻撃ならばお任せを。まぁ、いずれにせよ自ずと私達だけで請け負うことになりますね。みなさんが主たる地上戦闘に集中できるよう、務めます」

「 ワイバーン乗りのリバルト・アース!!空中なら俺とレイディーンにも任せてくれ!!」

「こちらこそ宜しくお願いします」

 紳士的に振る舞うファルキアに対し、ルファントはラフな姿勢でニヤケながら笑う。

「ニシシシシ!んじゃ、岩場エリア入ったら空から行かしてもらうぜっ、グライヴ!!」

「オーライ!!こっちも思う存分に撃ち砕かせてもらおーか!!そんじゃあ、今すぐにでも行こうぜ!!言い忘れてたが、先に先行してるファングがいる。後、ここにはいないが、ガロイアっていう狼男のファングもそいつと合流するために動いている……そこんとこ宜しく!!」

  会議の進行を見て、市長は移動手段の提示に移行を進めた。

「承知しました……では、目的地への移動には、我が市で保有している飛空挺でファングのみなさんをお連れいたします……」
 
 モニターにレバノイア市の飛空挺データが表示され、ファング達の出撃への眼差しがそこへ集中し、強者達の誰もが己の戦闘力の誇りを掲げる勢いで臨んでいた。







 オーク達のアジト。

 荒野と草原を越えた岩場の山岳地帯の奥地にその拠点があった。

 洞窟の内部は、蟻の巣のごとく通路と部屋が幾つも広がる、ダンジョンのような構造をしている。

 その中の亜人種専用娼館牢獄に、拉致されたフィレナが全裸にされたまま手錠をかけられ途方に暮れていた。

 部屋は小洞窟の小部屋に区切られており、周囲からは幾多もの泣き叫ぶ声や、悲鳴、ひたすら拒絶を叫ぶ声、喘ぎ悶える声が重なって聞こえてくる。

「神様……これが……あたしの罪の償いなの……?」

 岩の天井を見上げながら静に呟くフィレナは、既に涙さえ流せなくなっていた。

 手錠をカチャカチャとさせながら少しばかりの抵抗をしてみせたりするが、無駄なことは言うまでもない。

 視線を変えても、見えるのは薄暗い奥側の岩壁や牢の鉄格子、いいかげんに敷かれたカーペットしかない。

 下半身の蛇の体を無意味に動かしてもみせる。

「……この体も慣れてきたのかな……あはは……あたし、只の学生だったのにな……挙げ句に野蛮な種族からのレイプを待つ身。どうして?何故あたしは……?」

 うすら笑いを浮かべながら無情な悲劇の運命に疑問符を投げ掛けるフィレナ。

 彼女の中で、絶望のくくりの中の感情達が去来する。

 しかし、その一方でヴァッシュと過ごした時間もフラッシュバックする。

「あんなに楽しかったのも久しぶりだったなぁ……」

 つい先程までショッピングをしていたフィレナは優しかった時間を思い出し続ける。

 罪の償いに囚われつつも、彼女はやはり幸せな時間を欲していたのだ。

 しかし、現実は突如として彼女に迫った。

 突如開いた鉄格子から一体のオークが迫り入ってきたのだ。

「ぐへへ~……まだ許可は出てねーが、がまんならん!!」

「っ!?」

「しかも若い少女のラミアか……更にイイ体してやがるなぁ!!」

「いっ……嫌ぁ……!!」

 オークは、フィレナの胸を鷲掴みにし、汚らわしい舌で舐め回す。

「一つになろうぜぇ……ぐぶるるる!!」

「やぁっ……!!」

 むしゃぶりつくように欲望のままフィレナの胸を弄ぶオーク。

 フィレナは胸に纏わりつく汚らわしい感触に絶句しながら助けを求めた。

「っ……ぅ~………く、ヴァッシュ…さん…助けっ……てぇ……はぁっ……ヴァッシュっ……!!」 

 フィレナがヴァッシュに助けを求めた想いが岩の天井に染み入ったその頃、ヴァッシュはドモスになぶりになぶられていた。

 重い一撃が、一発、一発打ち込まれ、ヴァッシュの体力と生命を削り続ける。

「おぉおおおおお!!」

 散々ドモスの剛腕に殴り続けられた後に、腕を掴まれ、遠心力をかけられ投げられる。

 ヴァッシュは地面に叩きつけられ、更なるダメージを負う。
 
「がはっ……!!」

 ヴァッシュが落ちた場所にドモスが迫る。

「竜の力ってのはこんなもんか!?大したことねーな!!この体を前にした奴はみな悲鳴を上げて殺されたからな……」

 じわりと迫るドモス。

 やがて迫る足がヴァッシュの真上に来た。

 「全体重を乗っけてやる……死ね!!」

 ドズンッという重い音がヴァッシュにのし掛かる。

「ごはぁっ……!!」

「死んだな……じゃあ、遺体は殴り潰して処理してやる……!!」 

 牙を見せて笑うドモスの拳が、勢いを増して迫った。

 次の瞬間、ヴァッシュの意識にフィレナの姿が過る。

 かっと目を見開き、ヴァッシュは即座に転がりながら拳を躱した。

 拳がぶち当たった地面が、爆発のごとく砕け散る。

 ヴァッシュは転がりながらシュバッと体勢を整え、バック転しながら着地した。

 拳を構えながら絶えない眼光をドモスに飛ばす。

「勝手に殺すんじゃねーよ、デカブタ肉!!生憎だが、俺はラミアのお嬢様を助けなきゃならない……使命的にな!!」

「バカな……あれほどのダメージを与えてまだ立てるのか!?」

 自身の攻撃力に絶対の自信を持っていたドモスは、驚愕を覚えてならない。

「教えてやる……少しずつ俺自身を纏う魔力を上昇させていたんだよ!!要は、防御値の上昇を図っていたってわけだ!!」

「何ぃ……!?」

「てめーのインチキ強化魔力と、修行と命を人質にした契約で得た魔力とじゃ、根本が違うんだよ!!それに……今度こそ守るべきモノを失う別けにはいかない!!はぁあああああっっっ!!」

 ヴァッシュはバシュッと気迫を放ち、魔力を上昇させる。

 その風圧はヴァッシュを中心に広がり、宿る紅いオーラが更に猛る。

「てめーは一定値まで強化されてるだけだが……俺は更に上昇させることができるのさっ!!」
 
 魔力を上昇させたオーラ・フレイムを纒ながらヴァッシュは、反撃の跳躍に打って出た。

 次の瞬間、ドモスの胸部に炎の拳が打ち込まれた。

「ぐおっ!?」

「バーン……・ブレイクッッ!!」

 ドモスの胸部面で起きた爆発が、ドモスを吹っ飛ばした。
 
 「うぉがぁ!?」

 吹っ飛ばされたドモスの巨体が、背面から倒れ込んで地面にずり飛ぶ。

 先程までヴァッシュの拳を阻んだ胸部のプロテクターの上からの衝撃。

 まさに反撃の一撃だ。

 だが、すぐにドモスは半笑いしながら起き上がる。

「ぐぐがははは……だが、魔力を上昇させたとて、プロテクターの破壊までには至らないときた……衝撃はあったがこいつで……」

 ドモスが引っ提げていた棍棒を手にした瞬間に、ヴァッシュはドモスの横腹に拳を打ち込む。

 魔力を上昇させた右拳がグンとめり込む。

「がぐぅっ!?」

「直ならいいってかい!?」

「……ぐぅっ!!」 

 一瞬眉間にシワをよせ、ヴァッシュはドモスの魔力を上回ったバーン・ブレイクを直に放つ。

 爆発を直に受けたドモスは、横へ吹っ飛び地面を横転し続けて仰向けに倒れた。

 ドモスは白目を向いたまま微動だにしない。

 戦闘終了と判断したヴァッシュは、自身のダメージが身に残るのを確認する。

「……肉体的ダメージが蓄積してるのは面倒だな……オーラ・フレイム使ってなければ即死だったな……」

 実際にドモスが殴るパンチや繰り出す蹴りの威力はトン次元のレベルの威力が乗っていた。

 それを生身の人間が受ければ言うまでもない。

 ヴァッシュは流れた血を拭うと、オーラ・フレイムを解除する。

 だが、気を許したのもつかの間であった。

 ギョロリと眼光を戻し、ドモスが再び立ち上がる。

「おいおい……勘弁してくれよ……」

「ぐふかかかっ……やるじゃねーかっ……肉が抉れちまったじゃね~かっ!!」

 ドモスは自ら吐いたように、確かに横腹の肉がバーン・ブレイクの威力で抉れていた。

 相当のダメージが与えられているはずだが、ドモス自身の痛みを怒りにより精神が凌駕していた。

 いわゆるキレた常態だ。

「次こそコロス……!!」

 ドモスは棍棒を手に取り、振りかぶりながら滑り込むように突っ込む。

「ちっ……!!」

 木っ端微塵に破砕される地表。

 躱し切るヴァッシュだが、ドモスは直ぐにその方向に突っ込み、棍棒を振りかざす。

「グゴルァアアアア!!」

 滅多打ちに棍棒を殴り込み、再び躱すヴァッシュに突っ込む。

「このキチガイ肉が……!!」

 降り唸る棍棒の軌道を、鋭い動体視力で見切りながら躱すヴァッシュ。

 だが、意志が滅茶苦茶故に予測不能な攻撃が放たれる。
  
 振るいまくっていた棍棒の軌道から、突然と突きが打ち込まれた。

「な!?ぐぅ……っ!!」

 瞬時に最大魔力でオーラ・フレイムを発動させるヴァッシュだが、強烈な衝撃とダメージが襲う。

 拳の比ではないダメージと共にヴァッシュを突き飛ばす。

 ヴァッシュは地面を転がりながら草原帯に突っ込んだ。

「ぐぅ……っっ…」

 もくもくと上がる土煙が倒れたヴァッシュを包む。

 ヴァッシュを襲ったダメージは、オーラ・フレイムを全開で纏ったからこそ、全身打撲で済んでいた。

 無論、通常の人間であればその時点で命に関わるのは言うまでもない。

「グフガハァ……ウガラァアア!!」

 空に向かって吠えたドモスは、怒濤の勢いで倒れたヴァッシュに突っ込む。

「っ……!!そこまで俺を殺したいか!?ははは……付き合ってやんよ……!!」

 ヴァッシュは上体を起こしながら、攻め込んでくるドモスに飽きれ笑みを浮かべる。

 そして、面前に迫った攻撃に眼光を放ち、棍棒の一撃を横転しながら躱す。 

 地面を抉り飛ばしながら棍棒を振るうドモス。

 怒り狂う眼差しは、ヴァッシュのみを追う。

 襲いかかる打撃がヴァッシュに迫り、これを躱す。

 砕き飛ぶ地面。

 唸る棍棒の攻めとヴァッシュの身のこなしの躱しの攻防がいたちごっこのごとく繰り返されていく。

「どちらかの持久力が切れた時が……勝負のキメテだな……!!」

 ドモスの体力はマナぺプタンの効力により、ほぼ底無しの常態だ。

 対し、純粋な体力に魔力をプラスしたのヴァッシュの体力。

 今の時点の比は、運動性が凌駕するヴァッシュが上だが、蓄積したダメージが体力を奪っていく。

「流石にこれが続くとキツいな……ちぃっ!!」

 狂敵を前に、ヴァッシュの中でフィレナと亡きフィリーの想いが疼く。

 今守れるものと今は守る事ができないもの。

 かつて守れなかった淋しさを宿した優しい笑顔。

 今守れるものとの出会い。

 今守れるものが、目の前の狂敵の向こうにいる。

 かつて感じた感覚が甦る。

 力があれば。

 魔力を宿したとはいえ、無手でこの次元の戦闘は限界があった。

 素手と凶器では類いが違いすぎる。

 悔し紛れな感情を芽生えさせながら、ヴァッシュは攻撃を躱し続けた。

 一方で、屈辱の愛撫を強いられていたフィレナは、咄嗟の判断で下半身の蛇の体をオークに巻き付ける。

「おほほ!!俗にいうラミア・ホールミーか!?だがまだ入れるモン入れてない!!早まりす……ぎぎあ!?」

 一瞬の快楽が、一瞬で苦しみと激痛に変わる。

 フィレナは屈辱を与え続ける理不尽なオークの仕打ちに、か細くも確かな怒りを芽生えさせていた。

 彼女の中の何かが動いた。

「これ以上は……もう……嫌っっ!!」

「ま、まてぇぇあ……ぎぎ……!!」

 下半身は大蛇のパワーを秘めたラミアの体は、確かな戦闘力を持っていた。

 闘うというより、理不尽な運命への怒りと、これ以上の屈辱からの脱出する想いでの行動だった。

「あたしは……あなた達の玩具じゃない!!」

「~……っ!!」

 やがて、フィレナのラミアホールドはオークの全身の骨を締め折り、鈍い音を響かせながら一体のオークを倒す。

「はぁ……はぁ…た、倒せた……!!あ!!」

 下半身の蛇の力ならばと、フィレナは天井から吊るされているチェーンに尻尾の先端を巻き付けて引っ張ってみせる。

 すると、強靭な下半身の力でチェーンを根こそぎ断ち切るに至った。

 フィレナは開いた扉を見つめ、脱出のチャンスが目の前に現れた事に息を飲んだ。

 その頃、躱し続けていたヴァッシュとドモスの攻防戦にピリオドの瞬間が起こる。

 ドモスが砕いた爆発的な地面の粉砕により、ヴァッシュに向けて岩の直撃が襲ったのだ。

 「がぁ!?」

 体勢を崩されたヴァッシュは勢いよく転び、格好の餌食に成り下がってしまった。

 怒濤の進撃と共に、狂った打撃がヴァッシュに迫った。

「へっ……冗談じゃねーよ……」

 ヴァッシュが万事休すをヤサグレたように覚悟したその時、ヴァッシュとドモスの間に炎の球が打ち込まれ、双方を吹き飛ばした。

「がぁあああ!?」

「グガラァアアアア!?」

 双方は激しく吹き飛ばされ転がった。

 威力は半端が全くない別次元の威力。

 転がりきったヴァッシュは、仰向けになったまま呟く。

「ったく……ぶっ殺す気かよ、アイツ」

 その次の瞬間には、ヴァッシュの近くに二つの物体が投下された。

 一つは重く落ち、もう一つは地面に突き刺さる。

 それは戦闘メイルとフェイタル・ウィングだった。

 上空には、羽ばたくラグナデッタとラグナデッタに乗ったガロイアの姿があった。

「忘れもん、届けに上がったぜ……!!」

『あいつ……たかがオークに何苦戦してやがる……俺の力を宿す者が……情けない!!』

「そー言いなさんなよ、ラグナデッタ!!無手であそこまでデカブタと戦ってたみたいだからな!!ヴァッシュの準備完了まで牽制してくれよ。頼む!」

 ラグナデッタはやれやれと言わんばかりに下降に踏み切った。

『ここで勝手にくたばられても非常に困るからな……しょーがねー…』
 
 はためかせながら下降していくラグナデッタは、ブレスをドモスの周囲に撃ち込む。

 ブレスの爆発という爆発が、ドモスを囲んでいく。

 加減していても、威力は充分に有り、ドモスに力の差を見せつけていた。

「ググゴッ……!!」

 ヴァッシュはこの間に戦闘メイルを素早く装着し、突き刺さったフェイタル・ウィングを手に取る。

 ゆっくりとフェイタル・ウィングの刀身を肩に乗せて立つヴァッシュ。

 ようやくヴァッシュの戦闘能力がフルに発揮できる条件が整った。

「やっぱこれだな!!」

 戦闘準備完了の意を表すように、フェイタル・ウィングを振り回して構え、威圧感を放つヴァッシュ。

 その背後にラグナデッタが舞い降りて、ホバリング体勢をとる。

 巻き起こる風圧と飛竜と竜騎士の威圧がドモスを圧倒させた。

「ぐっ……!!こいつが……ドラゴン!!」

「ラグナデッタ。魔力結構使っちまった……回復頼む」

『ふん……話はガロイアから聞いた……ラミアにうつつ抜かして突っ込むからこうなる!!』

「説教は後にしてくれ。まずは目の前のブタ……あ、先に言う、シャレじゃねーぞ。目の前のブタをブッタ斬る!!」

『女で諸突盲信になるのは今回限りにしてくれ……』

「さて、どーかな?」

 ヴァッシュとラグナデッタのやり取りを見ながら、ガロイアは腕組みしながら見守る。

(さて、どーかな……か。フィレナってコに惹かれちまってる感出まくりだな!!今後も尽くす気満々じゃねーか……ホント不思議なコだよ。ヴァッシュをこうも動かすなんてな)

 フィレナも、脱出を図ってうまく牢番のオークを締め落とす行動に移っていた。

 極限状況が、彼女を突き動かしていた。

 カギの束を手に入れたフィレナは、勘で幾つものカギを合わせていき、僅か七回目で牢のカギを当てた。

 そして、同じ要領で捕らわれた亜人種の女性達を助ける行動をしていく。

 フィレナが動きを見せている時同じくして、ヴァッシュも動きを見せる。

 ラグナデッタのブレスがヴァッシュ目掛けて撃ち放たれた。

 ブレスはヴァッシュに直撃し、爆発を巻き起こす。

 普通ならば木っ端微塵に砕け散る威力だ。

 だが、ヴァッシュは紅いオーラを全身に纏って佇んでいた。

 ラグナデッタと契約しているヴァッシュのみが成せる技であり、ブレスはヴァッシュの魔力を回復もしくは強化できる手段であった。

「魔力……充填完了……せっかくだ、ラグナデッタ。その位置にいるならもう一発頼む。目の前のデカブタに竜の力を叩き込んでやりてぇ……」

『ふん……ん?』

 その時だった。

「ガルブァアアアア!!」

 ドモスが発狂しながらヴァッシュに目掛けて突っ込んできた。

 勢いを乗せた棍棒の打撃がヴァッシュ目掛けて打ち込まれる。

 激しい衝撃音が響き渡り、ヴァッシュに直撃した。

「ぐっぐぐ、遂に仕留め……ぐっ……!?」

「どーやって仕留めたんだ?」

 棍棒が直撃していたのは、フェイタル・ウィングの刀身だった。

 更に鉄材質の棍棒は、フェイタル・ウィングの刃に融かされて食い込んでいる状態だった。

「な、何ぃ!?」

「邪魔だ」

 ヴァッシュはガオンとフェイタル・ウィングの刀身でドモスの棍棒を弾き返す。

 このヴァッシュの変貌の現実に焦り、ドモスはヤケクソになりながら棍棒を振るう。

「うぐっ……ぅ……くそがぁああああああ!!」

 縦横無尽に迫る棍棒攻撃の嵐。

 ヴァッシュは鋭い眼差しでこれ等をフェイタル・ウィングで捌き続ける。

「うざいな……!!」

 次に来る一撃を見極め、フェイタル・ウィングにアームズ・フレイムを発動させる。

 振りかぶって叩き振るうフェイタル・ウィングの斬撃と鉄棍棒の打撃が激突した。

 その激突の瞬間に爆発を起こして激しく鉄棍棒を破壊。

 同時にドモスをぶっ飛ばす。

「がぁああああああ!?」

 地面を削るように吹っ飛ぶドモス。

 この隙にヴァッシュはラグナデッタに合図を叫んだ。

「ブレスだ!!」

 吐き飛ばされたラグナデッタのブレスの軌道にフェイタル・ウィングをかざすヴァッシュ。

 かざしたその刀身に、ラグナデッタのブレスが直撃し、直に魔力が強化された。

 ヴァッシュは十字に振るいながら、燃えるフェイタル・ウィングを構えた。

 倒れていたドモスは体を起こすと、焦りに息を切らしながら佇んだ。

 ヴァッシュとドモスはしばらく睨み合うと、互いの武器に力を込める。

 フェイタル・ウィングを引き締めるヴァッシュ。

 左拳を握り締めるドモス。

「ガァアアアアアア!!」

 気迫の咆哮を放ったドモスが先行してヴァッシュに突っ込んでいく。

 その間に意思のみでバーン・フレイアを発動させ、ラグナデッタから得た魔力に更なる魔力を上乗せさせた。

 ヴァッシュは間合いを見極め、ドモスが間合いに突っ込むのを待つ。

 迫るドモスと振りかぶられた拳。

 ヴァッシュは間合いに入った瞬間を見逃すことなく攻めに移行する。

 炎を宿したフェイタル・ウィングを振りかぶり、突っ込むように跳躍。

 そしてヴァッシュは、ドモスの拳が叩き込まれる前に懐に到達した。

「バーン・ブレイクッッ!!」

 刹那の攻撃の瞬間を決して逃さなかった。

 振りかぶったフェイタル・ウィングを高速で斬り込み、破砕斬撃技・バーン・ブレイクを食らわせるヴァッシュ。

 ドモスの巨体は斬撃を食らいながら瞬間的に凄まじい爆発を起こして砕き飛ぶ。

 斬ると爆発の要素が同時に叩き込まれる斬撃技だ。

 ヴァッシュは斬撃を振りきって着地すると、全ての魔法を解除させて、立ち上がった。

 戦闘を見続けていたガロイアは、改めて竜の力を垣間見ていた。

 力の凄さに思わず拍手してしまう。

「すげーな!!竜の力ってのは!!」

『当然だ……』

 フェイタル・ウィングを担いでやってきたヴァッシュは、頭上のラグナデッタとガロイアに呼び掛けた。

「先を急ぐぜ!!ガロイア!!乗り手交代だ!!」

「へいへい……そう来ると思ったよ。俺も飛んでもらうよか、自分で走りたい方だかんな!」

 着地したラグナデッタからガロイアが降り、アジト資料を受け取りながらヴァッシュが交替するようにシートに飛び乗る。

 資料に目を通すヴァッシュに、ガロイアが現状の説明を軽くする。

「今、共闘するファング達がレバノイア市の飛空挺でアジトに向かっている!!そこへ合流するぜ!!合流してからは地上と空中に別れて攻め混み、奥地へ進攻。中へはファングだけで突入して~…って感じらしい」

「らしい?」

「実は俺も来る途中に飛空挺に合流して伺ったもんだからな……ま、そろそろ頃合いなはずだぜ……後、謎の巨大モンスターもいるそうだ」

「どんなモンスターか知らんが……どの道、アジトに突っ込むだけだ……他のファング達が遅ければ先行する。同時ならば共闘して攻めるまでさ……」

 ヴァッシュはグリップハンドルを握り締めると、前を見据えて鋭い眼差しを向けた。

(フィレナ……必ず助け出す…もう少しだ……!!)

 一方のファングの一団もレバノイア市の飛空挺に乗り、各々の信念を乗せて向かう。

 共通しているのは、市からの一攫千金の報酬だが、闘いへの想いは千差万別だ。

 レバノイア市とその周囲に脅威を与え続けるオークの一団のアジトへ、ヴァッシュ、ガロイア、グライヴ、ルファント、レスタルをはじめとしたファング達が向かう。

 岩と岩の谷に挟まれた変境地にあるオーク一団のアジト。

 内部に捕らわれていたフィレナも、今の自分にできる事をしようと、必死で捕らわれた亜人種の女性達の手錠のカギを探す。

 そのアジトの洞窟の外には、四つん這いの巨大モンスターが佇み続ける。

 光る一つの眼光が来る者を待ち続けるかのごとく光った。



  続く

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