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7 破りました
しおりを挟む「……お耳汚しを失礼いたしました」
この程度の移動で疲れた訳ではなかったが、ハミングの頬は赤く染まっている。
『この細い体のどこからあの重量感を感じさせる音が出るのか』
……と、聞こえるはずのない声が確かに耳に届き、ハミングの頬はますます赤みを帯びる。要は恥ずかしがっているのだ。
「よい。わしが呼んだのだからな。誰か、ここへいらない紙を」
国王の呼びかけに応じ、本日の昼間に行われた卒業式の参加案内が近衛騎士によって運ばれてきた。
「イノセント男爵令嬢といったか。教科書をビリビリと破られたと言ったな?」
「は…はい!」
迷いのないイノセント男爵令嬢の答えを聞き、国王は満足そうに頷くと、近衛騎士によって用意されたチラシを数枚重ね、ハミングへと渡す。
「ハミング嬢、遠慮はいらぬ。ソレを思いっきり破ってみよ」
「……仰せのままに。失礼いたします」
国王から促され、ハミングは渡されたチラシに指をかけると、勢いよく真っ二つに。
ペタペタ~☆
「はあっ!?」
「う…嘘っ! 何で!?」
……真っ二つに破くと共に会場に響き渡る、状況に似つかわしくない妙な音。
「……これで分かっただろう。出そうと思っても、ハミング嬢は普通の音を出すことが出来ない。彼女はわが国でも希少な『精霊の加護持ち』だ」
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