◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

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夏の山は天気も変わりやすいんです

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 「お前ら本当に何も持ってこなかったのかよ?!」

 呆れ顔の真実に見つめられる私たち……

 「えっ?遊びに来たんじゃないの!?」

 青海くんは不思議そうな顔をして真実を見つめ返す。

 「……玄関にバック忘れてきちゃって……」

 私はというと玄関に参考書一式入ったバックを置き忘れてきてしまったようだ。

 つまりは二人とも勉強道具を一切持ってこなかった事になる。

 「……俺の使ってないの貸してもいいけど、まあ折角だしな。お前らは外で遊んでこいよ。透は少し体力つけた方がいいぞ?泉、橋まで連れてってやれよ」

 「シンジは行かないの!?」

 青海くんは少し残念そうだ。

 「ああ、俺は勉強したいしな。あ、透俺のバック持ってけよ。一応何かあると困るし、飲み物持って行った方がいいぜ」

 真実がそう言いながら青海くんにリュックサックを渡している。

 「あとこれお前にやるよ」

 青海くんに手渡したのは去年まで真実が着ていた山登り用の上着だ。

 「え!?真実こんなの……いいの!?」

 驚いている青海くんに笑いかける真実。

 「ああ、俺が去年まで着ていたやつだけどな。もう俺には小さいから。ちゃんと防水加工されてるし、お前にはちょうどいいサイズなんじゃないか?」

 青海くんは嬉しそうに渡された上着に袖を通す。

 「ホントだっ!ありがとう!!こういう服って高いんじゃないの?オレ……大事にするねっ!」

 真実はそんな青海くんをみると満足そうに微笑む。

 「泉、悪いけど透の事頼んだぞ。折角一緒に来たんだ。透には楽しい思い出残して欲しいしな」

 「……そう思うんなら一緒に来てくれればいいのに……青海くんだって真実がいた方が……」

 そう言いかけると真実に頭を撫でられる。

 「俺達には未来があるんだ。ちゃんと備えないと……みんなで幸せな生活を送るためにもな」

 真実はそう言いながら参考書を開く。

 ……



 ★



 「あはっ、見て水野さんっ、すっごく川の水が綺麗だね!」

 隣を歩く青海くんはご機嫌で、楽しそうにしてくれている。

 真実のお下がりの上着を着た青海くんは嬉しそうだ。

 空気は綺麗だったし、天気も良かった。
 
 標高が高いおかげで涼しく、過ごしやすかったがここは虫が多い。

 「あっ!水野さん背中にクモがついてるよ?」

 「っ!!!!」

 驚いて背中を払おうとすると青海くんに止められた。

 「ちょっと待って、取ってあげるから」

 青海くんはそっと手でクモを取ってくれた。

 「ありがとう、虫が苦手で……」

 そう言うと青海くんは微笑む。

 「苦手なものがあるのは仕方ないよ。ちょっと多めに虫除け塗っとこうか?」

 そう言いながら虫除けスプレーをかけてくれた。



 
 2時間ほど掛けて遊歩道を歩き、観光名所にもなっている橋に辿り着いた。

 「おお、これはすごいっ!!」

 エメラルドグリーン色の川にかかる橋を渡り、その先を少し歩くと綺麗な湖があった。

 湖のそばに置かれたベンチに座り少し休む。

 「少し疲れたね」

 青海くんはリュックサックからペットボトルの水を出して渡してくれる。

 「青海くん、リュックサック重くない?大丈夫?」

 真実が背負うとちょうど良い大きさのリュックサックは青海くんには少し大きいようだ。

 「……まあ体力作りにちょうどいいかな。同い年の男としては真実と同じくらい体力はほしいし。オレ部活もしてないし、鍛えないと……」

 青海くんは苦笑する。




 空は蒼く、心地いい風が吹く。

 緑に茂った草原には小さな花が咲いていた。

 ……穏やかで、居心地がいい。

 青海くんと色々話しながら帰路に着こうと話していたら遠くの空で雷の鳴る音が聞こえてきた。

 「!?」

 驚いて音のした方角の空を見る。

 真っ黒な、分厚い雲が見えた。

 ……いつのまに!?

 「水野さん、帰ろう?それかどこか雨宿りできる場所に移動しよう」

 青海くんの声に頷き、立ち上がった。

 この付近に雨宿りできるような場所はなかったはずだ。

 くる途中に……確か30分程山を降りた場所なら確か……

 そう思って急いで山を降りた。

 あと少しで雨宿りのできそうな岩場がある……そう思った時だった。

 あっという間に空は真っ暗になっていて、大粒の雨が空から落ちてくる。

 「水野さん気をつけてっ!!」

 青海くんの声が聞こえるが、雷が鳴るかもしれないという恐怖が私の足を急がせる。

 こんな場所で雷が鳴ったら……

 ザザザっという音と共にバケツをひっくり返したような雨が降ってきた。

 同時に雷が激しく鳴り始める。

 ……怖くて仕方ない

 「水野さんっ止まって!!!」

 青海くんがそう言った瞬間私は斜面から滑り落ちていた。

 身体が傾き、足に激しい痛みが走る。

 何とか転ばずには済んだが、尻餅をついてしまったためお尻が痛む。

 「っ……!!」

 落ちたのは一瞬だった。


 しかしその間にも激しい雷鳴が鳴り響いていた。

 痛みよりも雷が怖くて私は耳を塞いでその場に蹲っていた。




 
 「水野さん!!」

 気がついたら岩場の洞窟に青海くんと二人で逃げ込んでいた。

 全身ずぶ濡れ、足は痛むし立っていられない。

 ポッカリと口を開けた洞窟内に時折雷の光が入り込んで一瞬明るくなる。
 
 そして雷の音……

 「っ!!」

 耳を塞いで目を閉じようとしたらポッと足元が明るくなった。
 
 「はあ、点いたあ!」

 気がついたら青海くんが枯れ枝や木を集めて火を熾していた。

 ……青海くんは真実から借りたリュックサックの中を漁る。

 「タオル入ってる、それからカッパか……もう少し早く気づいてたらなあ」

 そう言いながらタオルを私に渡してくれた。

 「水野さん風邪ひくから髪拭いた方がいいよ。それからああ、全身濡れちゃったね。ちょっと待って?」 

 青海くんは上着を脱ぎ、さらに中に着ていた中着を脱ぐ。

 「その濡れた服脱いじゃった方がいいよ。オレ少し外に出て燃やすもの持ってくるから、これに着替えなよ」

 「えっ!?でもそれじゃあ青海くんは……」

 青海くんはにっこり笑った。

 「オレはこういうの慣れてるから、ほらこれに着替えなよ」

 そう言いながら上半身裸になった青海くんはカッパを羽織った。

 「すぐ戻るから、早く着替えちゃいな」

 青海くんはそう言って、豪雨の中走り出て行った。

 

 
 1人洞窟内に残される。

 外は豪雨と雷が鳴り響いていたが、小さな灯りがあるおかげで大分落ち着けた。

 寒くて仕方ない……濡れた服を脱ぎ、青海くんに渡された服に袖を通す。

 やはり青海くんは男の子だ。

 青海くんの着ていた上着一枚来ただけで太ももの辺りまで隠れたので濡れたジーパンも脱いだ。

 濡れた服を脱いだおかげで身体が暖かくなる。


 ……青海くんの温もりが残った服。
  
 それは温かくて、いい匂いがした。
  
 なんだかドキドキしてしまう。

 着替えて濡れた髪を拭いていると青海くんが戻ってくる。



 カッパを着て行ったとはいえ青海くんも濡れて帰ってくる。

 カッパを脱いで水を払っている青海くんの髪をタオルで拭おうとしたら逆にタオルを取られてしまい、青海くんは私の髪を拭いてくれる。

 「もっとちゃんと拭いた方がいいよ。風邪ひくから」

 「でもっ!」

 青海くんの方が風邪をひいてしまいそうだ。

 青海くんは私の髪を拭き終えるとやっと自分の身体を拭き始める。

 「あんまり見られると恥ずかしいよ、それにオレの身体傷だらけで気持ち悪いでしょ」

 照れたように笑った青海くん。

 「そんな事ないよ」

 何とかそう言い返すのが精一杯だった。

 

 
 青海くんは髪を拭き終えて再びカッパを羽織った。

 外はまだ荒れていて、しばらくここから出られそうにない。

 拾って来た枯れ木を焚き火の中に投げ入れながら青海くんは微笑む。

 「大丈夫、きっと真実が気づいて助けに来てくれるから……」

 青海くんはそう言いながら火のそばに座る。

 「水野さんこっちおいで、少しでも身体を温めた方がいい」

 焚き火の灯りに映される青海くんの顔は穏やかで、とても優しい顔をしていた。


 

 

 
 

 
 
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