◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

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クリスマスの季節

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 12月も後半に入り、もう後何日かでクリスマスである。

 学校も冬休みに入り、青海くんは毎日アルバイトに出かけていた。。

 クリスマスまでの三日間、青海くんは街のケーキ屋さんの店頭でケーキを販売するらしい。


 寒いから大変そうだが、みんながニコニコしながらケーキを買って行ってくれるのが嬉しいと青海くんが話してくれた。

 
 「じゃあ行ってくるね」

 コートに真実のお下がりのマフラーを身につけた青海くんはそれでもまだ寒そうだった。

 「気をつけて、頑張ってきてね」

 私は青海くんに袋を開けたばかりのカイロを渡す。

 「うん、ありがとう」

 青海くんが微笑んで元気に出かけて行った。






 
 今日は12月23日……雪こそ降ってはいないが日差しは弱く、寒い日だった。

 私は午前中の勉強を済ませて、午後は料理の本を眺めていた。

 ……今日の夕飯どうしようかな……

 おそらく冷たくなって帰ってくる青海くんを労ってあげたい。

 そうなるとお鍋かしら……?


 
 そんな事を考えていると部屋に真実が来た。

 「泉、ちょっと出掛けてくるぞ」

 どこか楽しそうな真実の様子。

 「帰るの遅くなる?夕飯どうするの?」

 そう聞くと真実は私の見ていた料理雑誌に目を落とす。

 「夕飯までには帰るよ。今晩何にするんだ?買い物大丈夫か?透が気にかけてたけど……」

 「今晩はお鍋にしようと思うんだけど……青海くん身体冷やして帰ってくるだろうし……もう少ししたら買い物に行くけど、一人で大丈夫だよ」

 真実がそんな事を言ってくるのは珍しい。

 どうしたんだろうかと思い真実を見つめると、どことなくそわそわとした様子の真実がわたしから視線を逸らした。

 「それとさ、今年はクリスマスの日……俺にも夕飯作り手伝わさせてくれないか?……ほら透バイトだろ?あいつが帰ってきたら3人でパーティしようぜ?」

 照れたようにそう言い出した真実。

 真実……青海くんとクリスマス楽しみたいんだなあ、

 ……そういうことかと思わず微笑む。

 「うん、チキンとかはおじいちゃんが用意してくれるって言ってたから……あとはちょっとしたものとか2人で作ろうか。ケーキは青海くんが用意してくれるって言ってたよ」

 真実も青海くんの為に何かしてあげたいと思っていたんだ。

 そう思うと嬉しくなる。

 ホッとしたような顔の真実とクリスマス前日に買い物に行く約束をした。

 私の部屋を出て行く真実が去り際に気になる事を言っていた。

 「透は三日間サンタの格好してるみたいだぜ。揶揄いにでも行ってやるかな……」

 ……!!??

 なにそれ!?

 そんなの見てみたい!!


 1人になった部屋で私は1人悶々とする。

 ……青海くんのバイト先は一つ隣の駅の大きな商業施設だ。

 遠いわけではないので行こうと思えばすぐである。

 ……こっそり見に行くくらいならいいかな?

 私は素早く出かける準備をする。

 






 冬休みに入っていたのでこの施設も人で溢れていた。

 ドキドキしながらお目当てのケーキ屋さんを発見し、遠くから青海くんを探す。

 サンタさんの格好してるなら目立つだろう。

 そう思っていたのだが……この時期はサンタ姿の人が割といることに驚いた。

 オモチャ屋さんに家電屋、なぜか本屋さんまでサンタの格好をした人がいる。

 青海くんは……?

 周りを見渡すがそれらしい人影は……


 『ケーキいかがですか~』

 聞き慣れた声が聞こえたので振り返る。

 ちょうど大きなクリスマスツリーのそばで、サンタ姿の青海くんを発見した。

 ……かわいいっ!!

 思わず持っていた携帯電話で青海くんの姿を写真に撮る。

 屋外だし、サンタの格好と言っても薄着のようだし、青海くんは寒いのだろう。

 余り顔色が優れないようだが懸命に通る人に声を掛け続けていた。

 思わず声を掛けてしまいそうになった瞬間背後から更に聞き慣れた声がした。

 「泉……やっぱりお前も来たのか」

 振り返ると真実がいた。

 「真実……真実も青海くんが気になったの?」

 そう聞くと真実は苦笑する。

 「浅川と勉強するついでに……な。アイツはいまトイレに行ってるけど」

 真実はそう言いながら持っていた紙袋を見せてくれた。

 「それとついでに透のクリスマスプレゼントも選んで貰ったんだ。今年は腹巻きにしたよ。アイツいつも薄着だしな」

 



 ★



 浅川さんと真実の邪魔をしたくなかったのでその場で真実と別れた。

 できることなら私も青海くんへのプレゼントをここで買っておきたかった。

 青海くんに見つからないようにフロアを移動してあちこち見て回る。

 色々見て回って、結局青海くんのプレゼントは黒い毛糸で編まれた手袋にした。

 ワンポイントで小さく猫の顔が刺繍されているのが可愛らしかった。

 色違いで自分のものと、真実の物も購入した。

 青海くんと色違いなら真実も喜んでくれるだろう。

 これで安心してクリスマスを迎えることができる。

 そう思いながらもう一度青海くんの姿を見ようと移動した。


 
 しかし残念なことに青海くんは休憩時間に入ったのか姿は見られなかった。

 それでも携帯に残した青海くんのサンタ姿の写真を見ると嬉しくなる。

 
 気が済んだ私はショッピングモールを後にした。

 

 きっと青海くんは体を冷やして帰ってくるだろう。

 温かいものを作って迎えてあげたい。

 帰りにスーパーに寄ってお鍋の具材を買い揃えた。



 

 朝元気に出て行った青海くんが帰ってくる頃にはぐったりとしている。

 「ただいま、ごめんね、ご飯の用意任せちゃって……」

 そんなことを言い出した青海くんの手を引き家に入れる。

 「青海くんいいから、お風呂すぐに入れるから身体温めてきてっ!そしたらご飯にしようっ!」

 触れた青海くんの手は冷たくなっていた。

 ……早く手袋渡してあげたいな……

 そう思いながら青海くんをお風呂に向かわせ、用意していた鍋に火を入れる。

 お鍋がぐつぐつと煮立っていい感じになった頃に青海くんはお風呂から出てきたし、真実も家に帰ってきた。

 

 3人揃って夕飯を食べる。

 「はあっ、あったかくておいしいねえ……」

 ため息混じりの青海くんの一言に思わず笑みがこぼれる。

 「うん、冬はやっぱり温かいものが一番だね。青海くんは嫌いな食べ物とかあるの?」

 そう聞くと青海くんは困ったような顔で笑った。

 「何でも食べれるよ。嫌いなものは特にないよ」

 真実はそれを聞くと悪戯っ子のような顔をする。

 「ほんとかよ?それじゃあ今度試してみようぜ?世の中にはクセがある食いもんとかあるんだぞ」

 「ええっ、わざわざ試すの?」

 驚く青海くんを揶揄う真実。

 賑やかで明るい食卓をみんなで囲む。

 些細なことだったが幸せだなあと思った。


 

 
 
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