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青海くんの年越し
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「荷物持ってくるから少し待って」
青海くんが迎えに来た叔父様と叔母さまに声をかけて急足で階段を上がっていく。
「透なんだか様子が変わって元気になったみたいね」
青海くんの叔母さまが嬉しそうに青海くんの背中を見つめる。
「背も伸びたし、表情も明るくなったね。透を2人に任せてよかったよ。ありがとう、真実くん、泉ちゃん」
叔父様も嬉しそうに微笑む。
クリスマスの終わった数日後に青海くんの義理のご両親が出張から戻ってきた。
年越しは青海くんと一緒に旅行に行くらしい。
青海くんも叔父様も叔母さまにひさしぶりに会えて嬉しそうだった。
「透、マフラーもちゃんと持っていけよ。風邪ひくぞ」
真実が青海くんに声をかける。
「あ、忘れるところだった。ありがとうっ!」
青海くんは振り返って真実にお礼を言う。
青海くんが部屋に戻ってしまうと叔母さまが困ったような顔をした。
「透……マフラーつけれるようになったの?」
真実にそんなことを聞く。
「え?はい、あいつ持ってなかったみたいだったので俺の使ってないやつ譲ったんです。寒さから首元守ってくれるぜって言って……何か不味かったですか?」
真実が怪訝そうな顔をすると叔父様も叔母さまも少しの間黙ってしまった。
そうして言いにくそうに叔父様は話しだす。
「前の引き取り先で、首絞められたことがあったみたいでね……透首元に何か巻くの嫌がったんだよ。そうか。平気になったんだね。よかったよ」
なんともいえない顔をした叔父様と泣き出してしまいそうな顔の叔母さま。
……首絞められたって……どうして??
叔父様と目が合う。
叔父様は私の気持ちを察してくれたのか小さな声で教えてくれた
「透の相続した保険金を使い切った彼らは最後に要らなくなった透を……。ただ置き去りにしていってくれれば良かったのにね。発見された時透は首を絞められて意識を無くしていたみたいなんだ」
衝撃的なその言葉に言葉を無くす私と真実。
「色々とショックだったのか私たちのところに来た時には感情も表に出さなくなってて……」
叔母さまが手帳を取り出し、写真を見せてくれた。
今より少し若い叔父様と叔母さまが写っているが青海くんは……虚な顔をしていた。
「透はしばらく口を訊けなくてね……」
何とも言えない顔をしていた叔父様が、ふうっとため息をつく。
「ほら、でも今はあんなに元気になって……真実くんと泉ちゃんのおかげねっ」
そんな叔父様を元気付けるかのように叔母さまが笑った。
写真を覗き込んでいた真実がふっと笑う。
「大丈夫、きっと透も……これから今までの分幸せになりますよ。叔父さんたちも、俺たちもついてるし。な!泉っ!!お前があいつを幸せにしてやれよ!透もお前の事気になってるみたいだし」
真実はそんな事を言いながら私の肩を叩いた。
「っ!!ちょっと真実っ!!」
突然そんな事を叔父様たちの前で言われてしまい、顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
「えっ?泉ちゃん??ひょっとして……?」
叔父様が私を見つめ、耐えきれなくなり私は床を見つめる。
……真実ったら今そんな事言わなくてもいいじゃない!!
義理とはいえ、今は青海くんのご両親だ。
もっとちゃんとした時に……せめて青海くんと付き合い始めたら……きちんとしたかったのに……
なんとなく2人の反応を知るのが怖くて視線を上げられなかった。
「泉ちゃん……良かったら……透の事よろしくね」
叔母さまはそっと私の肩を撫でる。
「透には……誰かそばに居てくれる人が必要だと思うから……」
叔母さまは寂しそうな顔でそう言った。
「私たちもずっとは透のそばには居られない。人生は長いから……ずっと一人はつらいもの……」
★
「用意できたよっ!って言ってもそんなに荷物ないけどさっ」
青海くんが2階から鞄を持って降りてくる。
首には真実から貰ったマフラー、手には私があげた手袋を持っている。
「おう、透あんまり正月食いすぎて太るなよっ!」
真実はさっきとは打って変わってにこやかに青海くんを送り出す。
「うん、身体動かすようにするよ。水野さんも真実も良いお年を……」
青海くんは私と真実に向かって頭を下げた。
「青海くん、元気でね。風邪引かないようにね?」
私は何とかそう言いながら青海くんの顔を見る。
今年はもう青海くんの顔を見るのはこれで最後か……
青海くんは目が合うとにっこりと笑ってくれた。
「ありがとう、水野さんも元気で……帰ってきたらまた料理教えてねっ★」
楽しそうに笑う青海くん。
叔父様たちが帰ってきたら何か美味しいものを作ってあげたいって言ってたもんね。
それが叶うと思うとこちらまで嬉しくなる。
「頑張ってねっ!」
そういうと青海くんは頷いた。
真実と一緒に青海くん一家を玄関まで見送る。
「んっ……?」
青海くんの背中を見送っていた真実がふと顔を曇らせる。
「……どうかした?」
不思議に思いながら尋ねるが真実はただ黙っていた。
青海くん一家は乗ってきた車に乗り込んで、私たちに手を振った。
私たちは手を振りかえして……青海くんを見送っていた。
青海くんが迎えに来た叔父様と叔母さまに声をかけて急足で階段を上がっていく。
「透なんだか様子が変わって元気になったみたいね」
青海くんの叔母さまが嬉しそうに青海くんの背中を見つめる。
「背も伸びたし、表情も明るくなったね。透を2人に任せてよかったよ。ありがとう、真実くん、泉ちゃん」
叔父様も嬉しそうに微笑む。
クリスマスの終わった数日後に青海くんの義理のご両親が出張から戻ってきた。
年越しは青海くんと一緒に旅行に行くらしい。
青海くんも叔父様も叔母さまにひさしぶりに会えて嬉しそうだった。
「透、マフラーもちゃんと持っていけよ。風邪ひくぞ」
真実が青海くんに声をかける。
「あ、忘れるところだった。ありがとうっ!」
青海くんは振り返って真実にお礼を言う。
青海くんが部屋に戻ってしまうと叔母さまが困ったような顔をした。
「透……マフラーつけれるようになったの?」
真実にそんなことを聞く。
「え?はい、あいつ持ってなかったみたいだったので俺の使ってないやつ譲ったんです。寒さから首元守ってくれるぜって言って……何か不味かったですか?」
真実が怪訝そうな顔をすると叔父様も叔母さまも少しの間黙ってしまった。
そうして言いにくそうに叔父様は話しだす。
「前の引き取り先で、首絞められたことがあったみたいでね……透首元に何か巻くの嫌がったんだよ。そうか。平気になったんだね。よかったよ」
なんともいえない顔をした叔父様と泣き出してしまいそうな顔の叔母さま。
……首絞められたって……どうして??
叔父様と目が合う。
叔父様は私の気持ちを察してくれたのか小さな声で教えてくれた
「透の相続した保険金を使い切った彼らは最後に要らなくなった透を……。ただ置き去りにしていってくれれば良かったのにね。発見された時透は首を絞められて意識を無くしていたみたいなんだ」
衝撃的なその言葉に言葉を無くす私と真実。
「色々とショックだったのか私たちのところに来た時には感情も表に出さなくなってて……」
叔母さまが手帳を取り出し、写真を見せてくれた。
今より少し若い叔父様と叔母さまが写っているが青海くんは……虚な顔をしていた。
「透はしばらく口を訊けなくてね……」
何とも言えない顔をしていた叔父様が、ふうっとため息をつく。
「ほら、でも今はあんなに元気になって……真実くんと泉ちゃんのおかげねっ」
そんな叔父様を元気付けるかのように叔母さまが笑った。
写真を覗き込んでいた真実がふっと笑う。
「大丈夫、きっと透も……これから今までの分幸せになりますよ。叔父さんたちも、俺たちもついてるし。な!泉っ!!お前があいつを幸せにしてやれよ!透もお前の事気になってるみたいだし」
真実はそんな事を言いながら私の肩を叩いた。
「っ!!ちょっと真実っ!!」
突然そんな事を叔父様たちの前で言われてしまい、顔が赤くなっていくのが自分でもわかる。
「えっ?泉ちゃん??ひょっとして……?」
叔父様が私を見つめ、耐えきれなくなり私は床を見つめる。
……真実ったら今そんな事言わなくてもいいじゃない!!
義理とはいえ、今は青海くんのご両親だ。
もっとちゃんとした時に……せめて青海くんと付き合い始めたら……きちんとしたかったのに……
なんとなく2人の反応を知るのが怖くて視線を上げられなかった。
「泉ちゃん……良かったら……透の事よろしくね」
叔母さまはそっと私の肩を撫でる。
「透には……誰かそばに居てくれる人が必要だと思うから……」
叔母さまは寂しそうな顔でそう言った。
「私たちもずっとは透のそばには居られない。人生は長いから……ずっと一人はつらいもの……」
★
「用意できたよっ!って言ってもそんなに荷物ないけどさっ」
青海くんが2階から鞄を持って降りてくる。
首には真実から貰ったマフラー、手には私があげた手袋を持っている。
「おう、透あんまり正月食いすぎて太るなよっ!」
真実はさっきとは打って変わってにこやかに青海くんを送り出す。
「うん、身体動かすようにするよ。水野さんも真実も良いお年を……」
青海くんは私と真実に向かって頭を下げた。
「青海くん、元気でね。風邪引かないようにね?」
私は何とかそう言いながら青海くんの顔を見る。
今年はもう青海くんの顔を見るのはこれで最後か……
青海くんは目が合うとにっこりと笑ってくれた。
「ありがとう、水野さんも元気で……帰ってきたらまた料理教えてねっ★」
楽しそうに笑う青海くん。
叔父様たちが帰ってきたら何か美味しいものを作ってあげたいって言ってたもんね。
それが叶うと思うとこちらまで嬉しくなる。
「頑張ってねっ!」
そういうと青海くんは頷いた。
真実と一緒に青海くん一家を玄関まで見送る。
「んっ……?」
青海くんの背中を見送っていた真実がふと顔を曇らせる。
「……どうかした?」
不思議に思いながら尋ねるが真実はただ黙っていた。
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