◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

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はじめてのデート

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 「バイト先で水族館のペア招待券貰ったんだ。日曜日に行かない?」

 夕飯どきに、透がそう言いながらチケットを二枚見せてくれた。

 「うん、行きたいっ!!」

 私はチケットを受け取り、確認する。
 このチケット一枚で、二人まで無料で水族館に入れるのか……ってことはチケット二枚あるから四人……真実も誘うんだろうなあ……。

 そう考えて、ほんの少し落ち込む。

 はじめてのデートなのに……二人っきりで行きたいなあ……

 そう思っていると透は一枚を真実に差し出した。

 「真実も……良かったら浅川さんと行ってきたら?」

 「ん?……ああ、そうだな……」

 そう言いながら真実はチケットを受け取る。

 真実と視線が合い、何も言えずに真実を見つめていると鼻で笑われた。

 「お前らの邪魔なんてしないよ。安心しろ」

 真実はそう言い、透にお礼を言うと席を立った。





 その週の日曜日、透と電車で海のそばの水族館に来ていた。
 
 「こんなところあるんだねっ……オレ水族館なんて初めて来たっ!!すごい、あっちにイルカがいるっ!」

 興奮しきっている透に手を引かれる。

 「本とかテレビで見たことあるけど、本物は初めてだよっ!これっ水槽割れたりしないのかなっ!?あっ!あっちにクラゲがいるっ!」

 始終ニコニコしながら、あちこちの水槽を見て声を上げる透はなんだか少年のようでかわいい。

 「あっ、泉あれ見てよ!かわいいなあ」

 今度はメンダコの水槽を覗き込みながら透は目を輝かせていた。



 昼どきになり、レストランに入った途端、透は何かに気づいたのか突然シュンとしてしまった。

 「……何か……ごめん。初めてで興奮しちゃった……」

 そう言って透は恥ずかしそうに苦笑した。

 「ううん。大丈夫だよ!むしろ透の初めてに付き合えるって嬉しいっ!」 

 ……それは心からの本心だった。
 透がこんなに喜んではしゃぐ姿は本当に愛しげで、かわいいと思ったし、好きだなあと思った。

 こんなに喜んでくれるのなら本当にもっとあちこちに行って色んなものを見せてあげたい。

 「ご飯食べたら次どこ行こっか?」 

 私は園内案内図を透に見せながら聞いてみる。

 透ってどんな動物が好きなんだろう。

 「イルカのショーとアザラシのショーが見たいっ!」

 嬉しそうに答えてくれた透は本当に楽しそうだ。

 そんな透をみれるのは本当に幸せだ。

 微笑ましくて仕方なくって、透から目が離せない。




 ランチを終え、私たちは再び活動を開始した。

 あと半日、思いっきり楽しもう!!
 



 「すごいなぁ……イルカもアザラシも言葉なんて通じないはずなのに……どうやって芸を教えたんだろう……あ、でも猫だってなんとなく何がしたいのか分かるし、それと同じ事なのかなあ……」

 イルカとアザラシのショーを見た透が感慨深げにイルカの泳ぐ水槽を見つめていた。

 


 

 ……午後は透も少し落ち着いて、二人でゆっくり回れた。

 「あ、透ペンギンがいるっ!」

 「本当だっ!かわいいね。」

 透と屋外にいる動物を見て回る。

 少し寒かったが、気にならないくらい楽しかった。


 「シロクマだ!!おおきいっ!!」

 冷たそうな水にザブンと入って泳ぐシロクマ……寒くないのだろうか?

 


 最後にお土産コーナーがあったので透と見て回る。

 「あ、これさっき見たちんあなごだ……」

 チンアナゴのぬいぐるみを抱きしめる。

 それはとても肌触りの良いぬいぐるみで、ひょろりと長く可愛い目をしていた。

 ……抱き枕にちょうど良さそうなサイズだな……。

 そう思いながら抱きしめていたら透がそれを買ってくれた。

 「透……ありがとう……高かったのにごめんね」

 「良いよ、泉が気に入ったんなら」

 透はニコニコしながらチンアナゴのぬいぐるみを私に渡してくれた。

 このチンアナゴとは本当に触り心地がいい。

 




 水族館はあっという間に閉園時間がやってくる。


 「もう終わりか……あっという間だったね」

 透にそう言われて少し残念な気分になる。

 「楽しい時間って過ぎるのあっという間だよね。透、また来よう?」
 
 透は嬉しそうに笑ってくれた。

 「うんっ、そうしようっ!」

 
 
 帰り道、透と話しながら帰った。

 「透って小さい頃色々な事が経験出来なかった環境にいたでしょ。せっかく今それができるようになって、それを取り戻さないといけないのに、就職しちゃうなんて勿体無いと思うんだよね……」

 思い切って思っていたことを透に伝える。
 せっかく選択肢も増えたのに……。
 それに時間があまり無いと、色々経験したいと言っているのに、就職してしまうことが勿体無いようにも思えたのだ。

 「いま急いで就職しようとしないで、もう少しだけ色々見たり経験したりしてから働いたって良いと思うんだけど……まあもちろん、働かないと生きて行けないのも分かるんだけど……」

 「うん……」

 「透の叔父さんが言ってたからってわけじゃないけど一緒に進学しない?もう少し私と色々見てからでも遅くないよ?
お金だって問題ないっておじいちゃんが……」

 「……」

 少し迷っているような透の姿を目にして、私は更に透に話しかける。

 「ねえ、透……透まだ行ったことない場所とかたくさんあるでしょ?私と……真実もいるし……一緒に見ていこう?」
 
 ……そうは言ったものの……少し自分の意見を押しつけてしまっただろうか?
 透だって色々考えた末の事だったろうし……
 

「……勝手なこと言っちゃってごめんね。ただ勿体ないって思ったの。せっかく透の人生が…やりたいことだってそのうち見つかるはずなのに…。ってごめんね私が口出すことじゃ…ないよね」

 少し反省しながら透に謝る。
 それでも……できることなら一緒に進学したかった。

 「いや…いいんだ。泉…ありがとう。考えてみる。」

 透はそう言い、微笑んだ。



 どちらからとなく手を繋いで帰り道を歩く。

 私たちの背中を押すように、夕陽が燃え続けていた。






 

 

 
 

 

 
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