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甘いホワイトデー
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「お前らホワイトデーの日ケーキバイキングに行こうぜ?ヴァレンタインのお返しに俺が金出すから……」
真実がそんな事を言い出したので、何を血迷った事を言っているんだろうと正直思った。
真実は昔から甘いものが嫌いで、そのせいで折角の誕生日も、クリスマスのケーキも小さなもので済ませていたというのに……。
いつも誕生日やクリスマスが来るたびに思っていた。
真実がケーキを食べれたらもっと大きいケーキを買って貰えたのに……。
そう言うとおじいちゃんは大きなケーキを買ってくれたことがあったのだが、結局それを食べるのは母と私だけだったので、それ以降は小さなケーキで済ませていた。
真実はチョコレートやクッキーなどのお菓子もあまり好きではないらしく……どちらかと言うと干物やお煎餅などを好んで食べていることが多かった。
そんな真実がケーキバイキングって……食べれないくせに何を言っているんだろう?
そう思ったが、ケーキや甘いものが大好きな私はケーキバイキングの話を聞いた時から心がときめいていた。
母がそばにいるときは、時折二人でこっそり行ったりもしていたのだが……最近はすっかりご無沙汰だ。
なので正直物凄く嬉しい。
★
「水野さんこれ美味しそうっ!」
すぐ隣で、楽しそうにケーキを選んでいる浅川さん。
「浅川さんこれはっ?」
私はその横でチョコレートのケーキをお皿に取った。
「私はチーズケーキっ★」
ホワイトデーと言うことで真実に誘われ四人でケーキバイキングに来た。
私の隣では透がお皿を持って並んでいる。
更にその背後では真実がげんなりとした顔つきで列に加わっていた。
「真実……ピザとかサラダなら食べれるでしょ?とってあげようか?」
透はそう言い、真実の持つお皿に取り分けている。
「悪い……しかしこの甘ったるい匂い……なんとかなんないのかよ……」
「真実、そう言う時は口で息をするといいよ。匂い感じないから……」
透はそう言いながら真実のことを気にかける。
「あっ、メロンのケーキっ★」
思わずメロンのケーキを見つけ、嬉しくなって声を上げると、隣にいた透が笑った。
「泉はメロンが好きなんだね」
「うん、大好きっ!この綺麗な黄緑色……」
私はメロンのケーキをお皿に取る。
「確かに……爽やかなグリーンだよね」
透はそう言いながらショートケーキをお皿に取った。
そうして、何かを見つけて不思議そうな顔をする。
「泉……これ何?」
「ん?何って、どれ?」
透が指差したのはプリンだ。
「ん?プリンだよ。甘くって美味しいよ?」
……そうは言ったがこの棚に置かれたものはみんな甘くて美味しいものばかりで説明になっていないことに気づく。
「プリンって、卵と牛乳と砂糖を混ぜて蒸したものだよ。食べてみたら?嫌いだったら私が食べるから……ね?」
そういうと透は恐る恐ると言った感じでプリンをお皿に乗っけた。
同じように、ゼリーの入ったカップも不思議そうに観察していた。
……もしかしたら透はプリンとゼリーを食べたことないのかもしれない。
そう気づいたらなんだか悲しい気分になった。
透を最初に保護した人たちは……本当に透の事を放っておいたんだ。
プリンとかゼリーなんて……私は小さい頃これらが大好きで、毎日お母さんに作ってもらっておやつで食べていたものだ。
それを知らないって……
「これすごいキレイだっ!」
透がメロンのゼリーを見て驚いている。
「せっかくだから色んな種類の……2人で食べようか。半分ずつ食べればきっと全種類食べれるよ。気に入ったのあったらまた取りにこよう?」
そう提案すると透は頷いてくれたので2人で色んな種類のスイーツをお皿に取って席についた。
「泉……これすっごく美味しいっ!!」
透がにっこりしながらプリン食べる。
……そんなに透が美味しいって喜んでるものなら私もひと口……
「うん、美味しいねっ」
そう伝えると透が嬉しそうに今度はおそらくメロンのゼリーをスプーンですくって……食べさせてくれた。
……透が食べさせてくれるゼリー……こんなのって、幸せ過ぎる。
「うん、美味しいっ★」
そういうと透は嬉しそうに笑う。
……透ってばすっごく可愛い。
次はこれ……っとガトーショコラを食べさせてくれる。
お返しに……透にモンブランのケーキを食べさせてあげようと思い立ち、フォークにモンブランを取り、透の口元に持っていく。
「んっ……いただきますっ」
少し照れたような顔の透が口を開け、透の口からほんの少し覗いた舌先を見て、なんだかものすごくドキドキしてしまった。
……なぜかお腹の奥の方がキュンとしてしまう。
「んっ……」
身体の疼きを抑えようと、密かに深呼吸をして透の口元から視線を逸らせた。
「……泉……新しいフォーク貰ってこようか?」
何かを勘違いしたらしい透がそう言いながら席を立とうとする。
「っ……このままでいいからっ、ほら透もケーキもっと食べてっ」
透の口にしたフォークでケーキを食べる。
……透と間接キスだ……
さっきまでのケーキとはまた違う……ドキドキしながらケーキを食べた。
★
真実が浅川さんを家まで送ると言うのでお店で別れて透と歩く。
「楽しかったね、でもなんだか真実は少しかわいそうだったな……」
透はそう言いながら苦笑していた。
「でも今日は来れてよかった。ケーキも美味しかったし……正直言ってオレケーキにあんなに種類があるなんて知らなかったよ」
聞けば透は今までイチゴの乗ったショートケーキしか食べたことがなかったらしい。
それは以前、透が亡くなった今のご両親が透の誕生日に買って食べさせてくれたものと、去年3人で過ごしたクリスマスケーキを食べた時だったようだ。
……なんとも言えない気分になってしまうが、透は楽しそうに笑った。
「でも本当にプリンもゼリーも美味しかったな……」
「透はプリンが気に入ったの?」
そう聞くと透は嬉しそうに頷いた。
「あんなに美味いものがあるなんて……今度買って食べてみるんだっ!」
でも本当に、目をキラキラさせながら透がゼリーやプリンを食べていたのはもっと可愛かった。
透の初めてに立ち会えてよかったと思う。
「泉が来たかったらまた来ようね。オレも楽しかったし」
透はそう言いながら微笑んでくれた。
プリン……透がそんなに好きなら……そのうち作ってみようと密かに思う。
真実がそんな事を言い出したので、何を血迷った事を言っているんだろうと正直思った。
真実は昔から甘いものが嫌いで、そのせいで折角の誕生日も、クリスマスのケーキも小さなもので済ませていたというのに……。
いつも誕生日やクリスマスが来るたびに思っていた。
真実がケーキを食べれたらもっと大きいケーキを買って貰えたのに……。
そう言うとおじいちゃんは大きなケーキを買ってくれたことがあったのだが、結局それを食べるのは母と私だけだったので、それ以降は小さなケーキで済ませていた。
真実はチョコレートやクッキーなどのお菓子もあまり好きではないらしく……どちらかと言うと干物やお煎餅などを好んで食べていることが多かった。
そんな真実がケーキバイキングって……食べれないくせに何を言っているんだろう?
そう思ったが、ケーキや甘いものが大好きな私はケーキバイキングの話を聞いた時から心がときめいていた。
母がそばにいるときは、時折二人でこっそり行ったりもしていたのだが……最近はすっかりご無沙汰だ。
なので正直物凄く嬉しい。
★
「水野さんこれ美味しそうっ!」
すぐ隣で、楽しそうにケーキを選んでいる浅川さん。
「浅川さんこれはっ?」
私はその横でチョコレートのケーキをお皿に取った。
「私はチーズケーキっ★」
ホワイトデーと言うことで真実に誘われ四人でケーキバイキングに来た。
私の隣では透がお皿を持って並んでいる。
更にその背後では真実がげんなりとした顔つきで列に加わっていた。
「真実……ピザとかサラダなら食べれるでしょ?とってあげようか?」
透はそう言い、真実の持つお皿に取り分けている。
「悪い……しかしこの甘ったるい匂い……なんとかなんないのかよ……」
「真実、そう言う時は口で息をするといいよ。匂い感じないから……」
透はそう言いながら真実のことを気にかける。
「あっ、メロンのケーキっ★」
思わずメロンのケーキを見つけ、嬉しくなって声を上げると、隣にいた透が笑った。
「泉はメロンが好きなんだね」
「うん、大好きっ!この綺麗な黄緑色……」
私はメロンのケーキをお皿に取る。
「確かに……爽やかなグリーンだよね」
透はそう言いながらショートケーキをお皿に取った。
そうして、何かを見つけて不思議そうな顔をする。
「泉……これ何?」
「ん?何って、どれ?」
透が指差したのはプリンだ。
「ん?プリンだよ。甘くって美味しいよ?」
……そうは言ったがこの棚に置かれたものはみんな甘くて美味しいものばかりで説明になっていないことに気づく。
「プリンって、卵と牛乳と砂糖を混ぜて蒸したものだよ。食べてみたら?嫌いだったら私が食べるから……ね?」
そういうと透は恐る恐ると言った感じでプリンをお皿に乗っけた。
同じように、ゼリーの入ったカップも不思議そうに観察していた。
……もしかしたら透はプリンとゼリーを食べたことないのかもしれない。
そう気づいたらなんだか悲しい気分になった。
透を最初に保護した人たちは……本当に透の事を放っておいたんだ。
プリンとかゼリーなんて……私は小さい頃これらが大好きで、毎日お母さんに作ってもらっておやつで食べていたものだ。
それを知らないって……
「これすごいキレイだっ!」
透がメロンのゼリーを見て驚いている。
「せっかくだから色んな種類の……2人で食べようか。半分ずつ食べればきっと全種類食べれるよ。気に入ったのあったらまた取りにこよう?」
そう提案すると透は頷いてくれたので2人で色んな種類のスイーツをお皿に取って席についた。
「泉……これすっごく美味しいっ!!」
透がにっこりしながらプリン食べる。
……そんなに透が美味しいって喜んでるものなら私もひと口……
「うん、美味しいねっ」
そう伝えると透が嬉しそうに今度はおそらくメロンのゼリーをスプーンですくって……食べさせてくれた。
……透が食べさせてくれるゼリー……こんなのって、幸せ過ぎる。
「うん、美味しいっ★」
そういうと透は嬉しそうに笑う。
……透ってばすっごく可愛い。
次はこれ……っとガトーショコラを食べさせてくれる。
お返しに……透にモンブランのケーキを食べさせてあげようと思い立ち、フォークにモンブランを取り、透の口元に持っていく。
「んっ……いただきますっ」
少し照れたような顔の透が口を開け、透の口からほんの少し覗いた舌先を見て、なんだかものすごくドキドキしてしまった。
……なぜかお腹の奥の方がキュンとしてしまう。
「んっ……」
身体の疼きを抑えようと、密かに深呼吸をして透の口元から視線を逸らせた。
「……泉……新しいフォーク貰ってこようか?」
何かを勘違いしたらしい透がそう言いながら席を立とうとする。
「っ……このままでいいからっ、ほら透もケーキもっと食べてっ」
透の口にしたフォークでケーキを食べる。
……透と間接キスだ……
さっきまでのケーキとはまた違う……ドキドキしながらケーキを食べた。
★
真実が浅川さんを家まで送ると言うのでお店で別れて透と歩く。
「楽しかったね、でもなんだか真実は少しかわいそうだったな……」
透はそう言いながら苦笑していた。
「でも今日は来れてよかった。ケーキも美味しかったし……正直言ってオレケーキにあんなに種類があるなんて知らなかったよ」
聞けば透は今までイチゴの乗ったショートケーキしか食べたことがなかったらしい。
それは以前、透が亡くなった今のご両親が透の誕生日に買って食べさせてくれたものと、去年3人で過ごしたクリスマスケーキを食べた時だったようだ。
……なんとも言えない気分になってしまうが、透は楽しそうに笑った。
「でも本当にプリンもゼリーも美味しかったな……」
「透はプリンが気に入ったの?」
そう聞くと透は嬉しそうに頷いた。
「あんなに美味いものがあるなんて……今度買って食べてみるんだっ!」
でも本当に、目をキラキラさせながら透がゼリーやプリンを食べていたのはもっと可愛かった。
透の初めてに立ち会えてよかったと思う。
「泉が来たかったらまた来ようね。オレも楽しかったし」
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