◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

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透の帰宅

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 「透っ、今日はっ……」

 放課後、鞄を持ち立ち上がった透に声を掛ける。

 最近殆ど話せていなかったし透の元気が無いことに気付いていた。

 今日は透のアルバイトがお休みのはずなので、帰りに何処かで……今日こそは海の誘いを断ろう!そう思って声を掛けた。

 「……ごめん、ちょっと急ぐんだ」

 私の声を遮るように透は背を向ける。

 ……っ?

 それと同時くらいに教室に海が現れた。

 「泉っ、帰ろうっ!」

 海の声にビクッとした透はそのまま急ぐように立ち去る。

 「なんだよアイツ、ダサっ」

 海は透を嘲笑うように呟いた。



 「……透クン最近大丈夫なの?」

 浅川さんが心配そうに真実に話しかけるが真実は何も言わなかった。

 そうして何か言いたげに私を見つめる。

 ……真実が何を言いたいのか……私には大体分かる……

 私は真実の視線から逃れるように足元に視線をやった。

 「……海……もう本当に……」

 「えっ?いいから帰ろうよ」

 海に腕を掴まれそうになる。

 その瞬間思わずその手を避けてしまった。

 「?」

 海は不思議そうな顔で私を見た。

 

 自分が何故海に触れられるのを拒んだのか分からず、戸惑ってしまう。

 なんだかモヤモヤとした感情が自分の中から沸き起こってくるが、それがなんなのか分からなかった。

 「……外雨降りそうだから急ごうか」

 私はなんとかそう言い、海の視線からも真実の視線からも逃げ出した。

 


 ★



 

 海と2人きりになるのを少し避けたかったので、いつもより早い時間に夕食を作ってしまっておいた。

 ……しばらく1人になりたかった。

 

 ……透に避けられてしまった……

 原因は自分にある……

 海をきちんと注意できなかった自分が悪いのだと分かっていた。

 ……透に、謝って……許されたかった。

 


 ★



 夕飯までになんとか気分を持ち直し、海と食事を摂っていると透が帰ってきた。

 帰ってくるなり透はお風呂に入ったようだった。

 

 透がお風呂に入ってしばらくすると不思議そうな顔で真実がキッチンに来た。

 「あれ、透帰って来なかったか?」

 「少し前にお風呂に入ったみたいだけど……」

 そう伝えると真実はキッチンから出ていった。

 透に急ぎの用事だろうか?

 

 そう思っているとお風呂場が騒がしくなった。

 よく分からないが、しばらく真実と透の声が聞こえていた。

 ……真実ったら透にまた悪戯でもしたのだろう。

 ……仲良いな……

 なんだか寂しかった。

 ……すぐそばには海が居たが、孤独だった。




 ★



 その晩遅く、寝ようとしていたら真実が部屋に来た。

 ……何やら深刻な顔をしていたので話を聞くと、驚きと同時にショックを受けた。



 ……透……私たちが夕飯を食べている時に、お風呂で溺れかけていたそうだ。

 真実が浴室に声を掛けたが返事は無く……中に入った時には浴槽に沈んでいるのを見つけたようだった。

 幸いすぐに引き起こしたら、水を吐き意識を取り戻したらしいが……

 ……お風呂で眠ってしまったのか、どうなのかは分からない。

 ただ、吐きながら透は泣いていたそうだ。

 そうして、『家に帰りたい……』そう言ったらしい。

 ……原因は……多分海と私だろう……

 




 「あんな状態の透を1人にもしておけないし、俺も透の家に居候するから」

 真実はそう私に言った。

 ……何も言えない私に真実は更に言う。

 「透……限界だろ……」

 そう言い残し、真実は部屋から出て行く……

 

 ……

 1人部屋に佇む。

 ……透……お風呂の中で眠ってしまったんだろうか?

 それとも……

 時ご両親のお墓に寄っては、赤くなった目で帰ってきていた透……

 

 ……自分で命を絶とうとなんて……思ってないよね?

 
 今すぐ透に会いたかったが、その資格が無いことぐらい分かっていた。

 私は……透と付き合ってるっていっても……何もしてあげれなかった。

 それどころか……海を強く諫める事すらしなかった。

 そんな私が……どんな顔をして透に声を掛ければいいんだろう……

 ……自分に腹が立つ。

 透がひとりで寂しい思いや苦しんでいた時に私は……
 


 ……でも、真実が気づいてくれて良かった。

 もし透があのまま浴室で……

 考えると恐ろしかった。

 



 ……透……


 ……透っ……


 

 同じ屋根の下で暮らしているはずなのに、酷く遠くに行ってしまったような気がした。

 


 ★



 翌日の朝早く……

 部屋の外で声が聞こえて慌てて起きる。

 部屋から出ると旅行鞄を持った真実と、透がいた。

 「オレひとりで大丈夫だから、真実はこの家にっ……真実までいなくなっちゃったら何かあったらどうするのっ?」

 焦ったように透が真実に言っている。

 「大丈夫だろ。この家防犯はしっかりしてるし。なんならじいさんにも頼んどくから。それより早く行こうぜ。海が起きる」

 真実の一言に透は黙った。

 「透っ……」

 声を掛けると驚いたように透は振り返った。

 「……泉……ごめん……」
 
 透はそう言い、私を見つめた。



 ……疲れているような透の顔……少し痩せてしまったのか線が細くなっている。

 ……透が最近食事を摂っているのを見たことがない。

 ……ちゃんと食べれていたんだろうか?

 その時になって初めて気づく。

 学校でだって、家でだって……透は……

 

 ……私は透の事……見ていなかったのではないか?

 透はずっと……

 愕然としながら透を見つめる。



 しかし透はそれ以上何も言わずに、視線を逸らすと私の横を歩いていってしまった。

 「……」

 真実も透の後を追い歩きだす。

 「……じゃあな……」

 真実は私にそう囁き、家を出ていった。

 

 
 2人の背中を見送る。

 ……真実がついていてくれるのなら透は大丈夫だろう……

 その間に、わたしにはやらなくてはいけない事があった。

 

 

 
 
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