◆青海くんを振り向かせたいっ〜水野泉の恋愛事情

青海

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修学旅行一泊目っ★

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 「いずみ……」

 優しくって大好きな透の声……

 わたし……透のことがだいすきっ……

 そう伝えたいのに……唇が重くて、言葉が出ない……

 すごく幸せで、温かくって、なんだかふわふわしたような気分に包まれていた。




 突然肩を掴まれ、揺すられる。 

 「おい泉、起きろって!透が浅川と浮気してるぞっ!!」

 そう聞こえて、驚いて目を開けると真実の顔が視界に入る。

 「シンジっ!」


 焦ったような透の声が耳に入った。

 悪戯っ子のような顔で笑う真実……そして困ったような顔で、私を見つめる透の顔が見えた。

 「ってどうして私なのよっ!!」

 真実の背後から、怒りに満ちたような浅川さんの声が聞こえた。

 ため息をつきながら透が微笑む。

 「泉、バスがホテルに着いたから降りよう」

 
 ……2人きりになったバスの中で思ったより長く寝てしまったようだ。

 生徒たちは観光を済ませて戻ってきたどころか、バス移動も済んでいて、今日泊まるホテルに到着していた。

 周りを見渡すと、他の生徒達はすでにバスを降りている最中で、各自部屋に向かっているようだ。

 「うん」

 眠りから無理矢理起こされたばかりでぼんやりとしていたが、透が荷物を下ろしてくれて、手を引いてくれる。

 「泉、ここ段差があるから気をつけて」

 私の分の荷物も持ってくれている透に手を引かれて、バスから降りる。

 


 部屋の鍵を受け取り真実と透、浅川さんと一緒にホテルのエレベーターに乗る。

 ……透は少しは体調が良くなったようだ。

 顔色も先ほどよりは良くなっていたし……

 少し安心した。




 男子は三階、女子は五階に部屋があったため透と真実は先にエレベーターから降りてしまった。

 「いずみ、じゃあね。また明日」

 透は少し疲れたような顔で、それでも微笑んでくれた。

 ……離れたくない……

 エレベーターのドアが閉まる瞬間まで透を見つめていた。

 「さっとお風呂入って会いに行けばいいわっ★」

 浅川さんが私を元気付けるかのようにそう言ってくれた。

 

 

 ★



 部屋のお風呂に入り、いつもより丁寧に髪と身体を洗う。

 ……透と……今日こそは……

 そう考えるだけでドキドキし、収まらなかった。

 新品のかわいい下着を身につける。

 ……透ってどんな下着が好きなんだろう?

 かわいいのより、大人っぽい物の方が良かっただろうか?

 今更ながらに考え込んでいると、浅川さんに笑顔で部屋を見送られる。

 「いいからとにかく行ってきなさいってっ★透クンだって男の子なんだし、部屋に入っちゃえばなるようになるわよっ★』

 ……そういうものかしらと思い、嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになりながら階下へと移動した。

 

 ……男子のいる階に到着し、こっそり通路を覗き込む。

 ……幸いなことに真実と透の部屋は階段のすぐそばの部屋だった。

 ずっと奥の方の部屋の前には男の子達がいた。

 私を見て男の子は不思議そうな顔をしたが、透の部屋には真実もいるために驚かれはしなかった。

 ……きっと真実に用があると思われているのだろう。

 透の部屋のドアをノックすると、程なくして真実が顔を出した。

 「ん?どうした?」

 お風呂上がりなのか、真実は濡れたタオルを首から掛けている。

 「あのね、真実……その、お願いがあって……」

 そう言いながら口籠もっていると、何か察したのか真実は部屋に入れてくれた。

 「……透と……今晩一緒にいたいから、部屋変わってくれない?」

 思い切ってそう言うと真実は困ったような顔をする。

 「……お前はいいかもしれないけど、オレはその間どうしたらいいんだよ?」

 真実はそう言いながら気持ちを抑えるようにため息をつく。

 「私の部屋に来てもいいよって浅川さんは……」

 そう言うと真実は面倒臭そうな顔をする。

 「は?オレは……学生のうちは誰とも」

 私は真実に頭を下げる。

 「お願いっ!!私っ、どうしても透とっ!……修学旅行の思い出……残したくって……」

 「お前と透ならこれからいくらでもチャンスはあるだろう!?なんで今日なんだよ!」

 顔を上げられず、頭を下げたまま声を振り絞った。

 「お願いっ!!」

 ……真実はほんの少しの間困り果てていたが、分かった。と言ってくれた。

 ホッとしながら顔を上げる。

 「……いいけど、透のヤツまだ調子悪いみたいで眠ってるぞ?」

 


 ★





 「んっ……」

 フロアライトの薄明かりが照らした、眠る透の横顔を、ドキドキしながら見つめる。

 透が眠ってしまっているのは残念だったが、寝顔を思う存分眺められるのは嬉しかった。

 「……っ……」

 ……時々うなされるような声を漏らす透……

 まだあまり具合が良くないのだろうか?

 ……熱とか大丈夫だよね?

 そっと透の額に触れる。

 少し熱いような気もするが……

 
 ……透の寝顔……かわいいなあ……

 そう思いながら、透の寝顔を気のすむまで見つめていると、不意にドアの外が騒がしくなった。

 

 

 ……生徒指導の教師達による見回りだ!

 慌てて空いているベッドに潜り込んで、息を潜める。

 ……外から聞こえてくる教師の怒り声と、男の子達と、その中に混じる女の子の声……

 どうやら数部屋隣の男子生徒の部屋に女の子が入り込んでいたのが見つかったらしい。

 ……やっぱり修学旅行だし、皆考えることは同じようである。

 同じ志?を持った女の子が酷く叱られないことを願いながら、早く嵐が通り過ぎてくれることを願う。


 見つかってしまったらどうしよう……緊張で胸がドキドキする。

 部屋の外から聞こえる物音と声を聞きながら毛布に包まれていると、隣のベッドからはふうっと大きくため息を吐くような透の寝息と、微かな寝言が聞こえた。

 「……んっ……いずみ……」

 ……私に関係する夢でも見ているのだろうか?

 なんだか照れくさいような、嬉しい気持ちになる。

 薄暗い毛布の中で透の穏やかな寝起きを聞いていると、段々と眠くなって行くのがわかった。

 ……どんな形でもいいから、一緒にいたい……

 ぼんやりとそう思っていた。




 
 
 
 

 
 
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