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カレシと出かけると家から距離が離れたところで、解散がいつの間にやら当たり前となっていた。

わざわざ、物凄く遠いところに行って、そこで大して盛り上がることなく解散するのだ。


(あんなとこに行きたかったのかな? 何をどう楽しんだらいいのかが、全くわからなかった。最近、そういうとこばっかりなところに出かけてる気がする)


「じゃあな」
「え?」
「何だよ? 駅は、見えてるんだから帰れるだろ」
「……」


地元に戻るのに方向は一緒のはずが、そこで別れることになることに凛は眉を顰めたかなっていたが、湊は素っ気なくなっていて、これが2人のデートでは当たり前のようになり始めてすらいた。

それでも、こうして出かけるのが1ヶ月以上あくことはなかった。


(まぁ、これが1年以上付き合ってると普通なのかな。でも、彼の家の近くで別れてるわけではないのが、なんか気になるんだよね。この辺に他に行きたいところもあるのかな? だったら、そこまで行くのに付き合うのに。何だか、そういうこと話すこともしてくれないんだよね。全体的に言葉足らずな感じだし、いまいち何を考えてるのかわからなくて不安というか。流石に私でも楽しみ方が、さっぱりわからないんだけど)


凛の方向音痴を直そうと突き放し始めたのかも知れない。1年も過ぎれば、そうなっても仕方がないだろう。なにせ凛は、その間に更に酷くなってしまっているのだから。その自覚はあった。


(これは、やっぱり甘えだよね。あそこら辺さえおさえておけば何とかなるはずなのに酷くなってくって、そもそもおかしすぎる気がする。私の方向音痴って、なんか法則がありそうな、なさそうな)


そんなことを思って、凛もどこに置いて行かれようとも自力で帰れるまでになったのも、冷たくされ始めてからだった。

毎回、信じられないくらい時間がかかって、疲れ果てることにはなったが、両親に泣きついて迎えに来てもらうことにはなっていない。


(やっぱり、直そうとしてくれてるんだ)


冷たくしてされているのも、そういうことだと凛は思うようになっていた。だが、段々とデートすら彼から誘われることがなくなって、どこかに出かけることも、一緒に登下校することもなくなっていくことになって、おかしいなと思うようになるかと思いきや忙しくしていて、予定が埋まっていて前のように誘われても予定をあけることがなくなったことに凛の方はホッとしていた。

文化祭で交友関係が増えた凛。更には、夏に出会った大学生とも、すっかり友達となっていて、勉強の仕方などでも、随分とお世話になっていた。

そんな知り合いがいたことで、2年の頃に知り合った3年の先輩方も、そんな大学生に勉強を見てもらえる機会を設けたりして、どちらからも感謝された。

楽しそうに勉強する面々を見て、凛はにこにこしていた。


(勉強会も悪くないものだな。友達も、来れば良かったのに)


凛の友達も、明穂も、そこには一度として来なかった。


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