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しおりを挟むそんなことがあって、凛が両親に転勤に着いて行くと伝えたのは、その日の夜のことだった。
湊と別れた日のことだ。別れたことで、清々しい思いをしていた。
両親は、凛が着いて行くと言うとは思わなかったようで物凄く驚いていた。
(やっぱり、あれは私のことを考えてくれてんだ。でも、私もちゃんと考えて答えを出したんだから、思ってることを伝えなきゃ)
「凛。いいのか?」
「うん。私の方向音痴も、どうにかしなきゃいけないと思ってるんだ。迷っても大丈夫な距離でばかり決めるんじゃなくて、もっと視野を広げて将来のことも、きちんと見据えていこうと思うんだ。だから、まずは大丈夫な距離の範囲ってだけじゃなくて、学校のカリキュラムとか、色々と検討してから決めたいんだ」
「そうか。そうだな。凛が、そうしたいなら、父さんたちに異論はない。どうしても、頑張ってできないとなったなら、その都度、思い悩み過ぎる前に相談してくれ。一緒になって考えるからな」
「ありがとう」
凛は、父の言葉に笑顔を返した。
(やっばり、父さんって凄いな。色んな人たちが頼るのも無理ないよね。……それに比べて、元カレの酷さったらないわ。まぁ、比べること自体おかしいんだろうけど。何であんなのとここまで我慢して、付き合ってたんだか)
すると母が立ち上がって、資料を持って戻って来た。
(凄い大量の資料。え? これ、高校のパンフレット??)
凛が、呆然としている間にテーブルにそれらは広げられた。どのくらい集めたのか。かなりの数があったのは確かだ。
「なら、早速、転校先の候補をつめましょう。私としては、ここがいいと思うのよ」
「そこより、こっちだ。ここは、セキュリティも万全だぞ」
「……」
どうやら、転校する方向の資料にも抜かりはなかったようだ。母が持って来たそれに父は全く驚いていなかったところを見ると凛が知らない間に集められていたようだ。
凛が通える範囲だけでなくて、少し遠いところから、かなり遠いところまでの資料がそこにはあった。さっき話したばかりなのに見透かされていたようだ。
(こんなにたくさん、凄いな。全然気づかなかった)
色んなパンフレットを集めてくれていたのを見て凛は、驚きながらも嬉しくなって笑顔になっていた。
きっと、凛がどうしたいかを伝えていなかったら、次はこんなことをしてみたらと提案するつもりだったのかもしれない。このまま、大学、就職と決めていく決定打が迷子になっても困らない距離のままでは、これからの人生もったいないと思ってくれていたのかも知れない。
(サポートしてくれる気満々な両親がいて、ありがたいな。それに比べて、……比べるのも変だけど、元カレと親友だと思っていた二人の酷さったらないわよね。元カレも、浮気うんねんを言うなら、そっちの方だってことに気づいてないところがおかしいよね。まぁ、付き合ってはないのなら、浮気にはならないのかも知れないけど、判断基準が私ではなくて、明穂が言っていたからって状態なのに気づいてない方にびっくりしたけど)
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