「異端者だ」と追放された三十路男、実は転生最強【魔術師】!〜魔術の廃れた千年後を、美少女教え子とともにやり直す〜

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】

文字の大きさ
71 / 82
三章 古の対峙

70話 その男、弟子とともに尾行を開始する



「こちらをどうぞ、先生。うちで昨夜焼いてきたパンです」

数日後、鳥たちが鳴きやみ、虫の音だけがかすかに響く深夜。

ほとんど人通りもない静かな宿屋街の一角で、俺はリーナとともに路地裏置いてあった酒樽の影にしゃがんで、身を潜めていた。

目的はもちろん、オレステ・オレンの行動追跡だ。
現状、その姿は昼頃に王都で目撃されているが、どうやってダンジョンに転移しているかは不明ときている。

リーナにはすべてを打ち明けていたこともあった。
そこで二人で相談した結果、気合を入れてその行動を一日見張ってみようということになったのだ。

すでに、この路地裏で過ごすこと数刻が過ぎていた。

「あぁ、それなら取って置いてくれ。今日は長引くかもしれないからね。俺も、ミモザさん――宿屋の方にはからってもらって、パンを持たせてもらったんだ」
「……なるほど、そうですか」
「あぁ。少し宿屋を直しただけなのに、ここまで手厚くしてもらえて、助かっているよ」

と言いながら、俺は鞄の中から、ミモザさんにもらった巾着袋をリーナの方へと見せる。

すると、なにを思ったかリーナはそれを素早く奪い取り、中に入っていたパンを一つ取り出してかじる。

「……なかなか美味しいのですね。いっそまずければよかったのですが」
「……おいおい。あの宿屋、建物がぼろい以外はなかなか優秀なんだよ」
「そうですか。では、先生がうちの家に移り住む日までに、うちの料理人には徹底的に指導をしておきます。先生が安心して、その宿を出られるように徹底的にサポートいたしますね」

……いや、なんで移り住む前提になってるんだ?

思わなくもなかったが、ここで下手に突っ込んで、リーナをヒートアップさせてしまったら、本来の目的であるオレステ・オレンの追跡に支障をきたすかもしれない。

一応、【視認阻害】魔術はかけているとはいえ、声まで制限することはできない。

それに、いくら言っても聞かない頑固者なのだ、リーナは。
俺がただ苦笑いをしていると、そこへ表通りに人影がよぎった。

俺もリーナもそれに気づいて、音を立てぬように二人、そちらを覗く。
すると、そこにいたのはフードを被った青年だ。

間違いなく、オレステ・オレンだ。
一見しただけだが、間違いない。

【鑑定】でわざわざ見るまでもなく纏っている魔力の量が人とは違うし、体格も立派で、背中に背負っている大きな布袋の先からはバトルアックスの持ち手が少しだけ覗いている。

あれだけの大ものを扱うのだから、ただものじゃない。

そして、怪しいことに、なにやらきょろきょろとなにもない道端を振り見ながら、ゆっくりと歩いているのだ。

「リーナ、一つ頼むよ」

作戦は事前に打ち合わせてあった。
俺が彼女にこう投げかけると、リーナは一つ首を縦に振り、表通りへ近場に転がっていた石を投げる。

これにオレステ・オレンが反応した。ぴたりと足を止めて、こちらを振り返る。
が、なにもないことを確認すると、きょろきょろと辺りを振り見はじめた。

その動きが止まっていた一瞬が好機だった。
俺は速記で術式を展開して、彼の斧に【位置測定】の魔術をしかける。

【探索】の応用的な技で、はじめから調べたい対象が分かっているときには、術式を変えることで仕掛けることができる。


この魔術は、術をかけた対象物と自分との距離感を、魔力量によって把握することができる。
物にしかかけられないのが欠点だが、距離が離れていても反応が出るため、追跡任務にはぴったりなのだ。

かつて千年前には、ストーカーなどが横行しないよう、使用制限もされていたっけ。
この身体に転生してきてからも、倫理面を考慮して基本的には使用しないようにしていたが、今はその使いどきだろう。

結局、なにもないと判断したらしい。
オレステ・オレンがそのまま立ち去って行ったのを確認してから、

「ありがとう。助かったよ。じゃあ、行こうか」

俺は、隣のリーナに礼を述べる。
それに対して彼女はなぜか、ぽっと頬を赤らめ、口元を覆う。

「先生と協力できた……。これがはじめての共同作業……」

……そのうえで本当に小さな囁くような声で呟かれたのは、なかなか言葉だった。

リーナにしてみればたぶん聞かれていないつもりなのだろう。
が、夜中の静寂のせいではっきり聞こえてしまった。

なんて恥ずかしいのだろう。というか、どうすればいいんだ、こういう時。

いや、最適解は分かる。なにも聞こえなかったふりを決め込めばいいのだ。
が、しかし。

「今度その魔術、私にもご指導ください。色々と使いたいので。って……先生?」
「あ、あぁ、そうだね、うん」

そんな玄人な対応は、俺にはできず、ついおどおどとしてしまった。

感想 1

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!