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第五章 僭称
90 青髪の将軍様
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洗い場に、ちょこん、と小さい体のミーシアが座っている。
「では失礼します」
ツインテールをタオルでまとめているラータが、そのミーシアの後ろに立つ。
うーん、裸の皇帝陛下が背後に立つのを許すだなんて。
なるほど、よっぽどの信頼関係がなければできないことだな、これは。
湯伽、というこの国独自の文化も、それなりに意味のあることなのかもしれない。
たとえば日本の茶の湯でも、本格的につくられた茶室には、にじり口というものがある。
めちゃくちゃ小さい出入り口で、這いつくばらなければ茶室に入れない。
これにも理由があって、つまり帯刀したままだと茶室に入れないのだ。
武士でも刀を手放さなければ茶の湯を楽しむことはできない、茶室では侍も町人も平等なのだ。
この考え方でいえば、裸になる風呂場など、刀どころじゃない、服も着てないんだからな。
裸の付き合い、という言葉が日本にもあるけど、やっぱり一緒に風呂に入るってのは、人類普遍的に仲良くなる方法の一つなのかもしれない。
そんなわけで、ラータは両の手で石鹸を泡立て、手のひらで直接ロリ女帝ミーシアの背中を撫で始める。
うむ。
これと同じ光景をみたことがあるぞ。
風俗モノのエロ動画で。
いやいやなにを考えてるんだ、これは信頼を示すためにやっていることで、決していかがわしい目的のアレじゃないんだぞ……。
と、思ってたら。
突然、ラータの両腕がミーシアの脇の下を通って前へ。
そして推定Aカップの慎ましやかなお胸をワシッ! と掴んだ。
「きゃあ!」
とミーシアが声をあげるのと、
「どういうことやねーん!」
俺がなぜか関西弁でつっこみをいれるのは同時だった。
そのまま、むにゅむにゅと胸をゆっくりやさしくでも容赦なく揉み始めるラータ。
「や、やめ、やめ……て……ラータ、こら……あ……馬鹿……」
足をバタバタさせて抵抗しようとするけど、小柄な皇帝陛下では、高身長のラータからのがれることなんてできない。
「え、なにこれ、なんなのこれ……?」
俺が傍らにいたヴェルの方に振り向くと、ヴェルはぱっと自分の胸を隠す。
やっぱり俺に見られるのは恥ずかしいみたいだ、当たり前だが。
「……ラータの悪いクセよ……。ラータは先帝陛下のことを崇拝していて……その実のお子様で顔も声もそっくりなミーシア……皇帝陛下のことも当然崇拝してるんだけど……ひとつだけミーシアのことで気に食わないことがあるって……」
気に食わないことって……。
ラータが、ミーシアの胸をモミながら耳元で囁く。
「なんですかこれは。全然成長していないではないですか! 先帝陛下はそれはそれは立派な胸をお持ちでした。庶民出身の私がエリン公に目をかけられ士官学校に入学したのは十歳のとき。それからさんざん貴族出身の奴らにいじめられて過ごしました。後輩になりますが、あの逆賊リューシアも同じ境遇で性格が歪んでしまったのでしょう」
ああ、そっか、リューシアも庶民出身、っていってたな。
「生まれが悪くても学業優秀なら士官学校から出世の道があるのよ」
と、ヴェルが補足するように教えてくれる。
ラータは続ける。
「でも、私が十五歳の時、初めて先帝陛下に湯伽をお許しくださり、そのときにあの豊満なお胸をさわらせてもらったのです! ああ、あのすばらしい手触り、暖かさ、そして先帝陛下はこうおっしゃったのです、『大変でしょうけど国のために努力しているあなたは素敵よ、負けないでね』――今でも鮮明に思い出せる、私のいちばん大事な思い出。それ以来、どんなつらいことがあっても、あのお胸の大きさ柔らかさを思い出して頑張ってきたのです。先帝陛下が崩御されたあとも、生き写しな皇帝陛下がいらっしゃると思えばこそ、殉死もせずに国家のため邁進してきたのです。なのに、なのに! こんな小さなお胸では……」
「胸関係ない! ないからもうやめて~! あと少しは気にしてるんだからストレートに言わないでよ! もう終わり! 終わり、終わり、離れなさーい!」
最後はもうほとんど絶叫、皇帝陛下、ブチ切れでございます。
当たり前だっつーの。
次にヴェルとエステルの女騎士姉妹が、二人仲良くミーシアの腕や背中を泡で撫でる。
そのあいだにも、ミーシアはブツブツと、
「なによ、そりゃ母さまや姉さまみたいにあんまり大きくならないなーとは思ってたんだけど、あんなふうに言わないでもいいじゃない、ねえ?」
などと愚痴を言っている。
そこにラータが口を出す。
「ちゃんと送った料理、召し上がってますか?」
間髪入れずにミーシアが怒鳴る。
「あんなの、食べるわけないじゃない! ヘビの干物だとかヘビのソーセージだとかヘビのなんとかだとか、もー! 馬鹿ラータ!」
「しかし、あの種類のヘビは食べると乳房が大きくなって乳の出もよくなると評判で……」
「じゃー自分で食べなよ!」
「ですから私は大きいのです」
「むきーっ!」
なんだこれ。
皇帝と部下の将軍の会話じゃない、たんなる姉妹喧嘩かなにかか。
むきーっってなんだよ、皇帝陛下、かわいすぎだろ。
「では、今度はエージ卿の番だよ」
とラータが言った。
……卿?
そっか、正式に騎士に叙任されたから、俺の敬称は卿になるのか。
なんだかむずがゆいな。
ま、とりあえず形だけでもおかわいらしい女帝陛下のお背中をこすらせていただこう。
なんだかんだでキッサとかヴェルとか夜伽三十五番とかと、裸で身体をくっつけることも何度かあったし、正直若干慣れてきている。
人生幸せの絶頂期なのかもしれない。
そのわりには死にかねない戦闘ばっかだったような気もするけど。
さて、俺も真似をしてたっぷり手で石鹸泡立て、直接陛下の肌に触らないように泡だけを陛下の背中の肌に塗る感じで――
なにせ、まだティーンエージャーにすらならない少女の肌だ、しかも皇帝陛下。俺ごとき男が失礼のないように……。
と、思っていたのに。
いつのまにか、俺の背後には、青髪の将軍様が立っていて、
「昔読んだ本では、男が女性の胸を揉むと大きくなるとか!」
とかいいながら、俺の手首を後ろからがっちり掴んだ。
「では失礼します」
ツインテールをタオルでまとめているラータが、そのミーシアの後ろに立つ。
うーん、裸の皇帝陛下が背後に立つのを許すだなんて。
なるほど、よっぽどの信頼関係がなければできないことだな、これは。
湯伽、というこの国独自の文化も、それなりに意味のあることなのかもしれない。
たとえば日本の茶の湯でも、本格的につくられた茶室には、にじり口というものがある。
めちゃくちゃ小さい出入り口で、這いつくばらなければ茶室に入れない。
これにも理由があって、つまり帯刀したままだと茶室に入れないのだ。
武士でも刀を手放さなければ茶の湯を楽しむことはできない、茶室では侍も町人も平等なのだ。
この考え方でいえば、裸になる風呂場など、刀どころじゃない、服も着てないんだからな。
裸の付き合い、という言葉が日本にもあるけど、やっぱり一緒に風呂に入るってのは、人類普遍的に仲良くなる方法の一つなのかもしれない。
そんなわけで、ラータは両の手で石鹸を泡立て、手のひらで直接ロリ女帝ミーシアの背中を撫で始める。
うむ。
これと同じ光景をみたことがあるぞ。
風俗モノのエロ動画で。
いやいやなにを考えてるんだ、これは信頼を示すためにやっていることで、決していかがわしい目的のアレじゃないんだぞ……。
と、思ってたら。
突然、ラータの両腕がミーシアの脇の下を通って前へ。
そして推定Aカップの慎ましやかなお胸をワシッ! と掴んだ。
「きゃあ!」
とミーシアが声をあげるのと、
「どういうことやねーん!」
俺がなぜか関西弁でつっこみをいれるのは同時だった。
そのまま、むにゅむにゅと胸をゆっくりやさしくでも容赦なく揉み始めるラータ。
「や、やめ、やめ……て……ラータ、こら……あ……馬鹿……」
足をバタバタさせて抵抗しようとするけど、小柄な皇帝陛下では、高身長のラータからのがれることなんてできない。
「え、なにこれ、なんなのこれ……?」
俺が傍らにいたヴェルの方に振り向くと、ヴェルはぱっと自分の胸を隠す。
やっぱり俺に見られるのは恥ずかしいみたいだ、当たり前だが。
「……ラータの悪いクセよ……。ラータは先帝陛下のことを崇拝していて……その実のお子様で顔も声もそっくりなミーシア……皇帝陛下のことも当然崇拝してるんだけど……ひとつだけミーシアのことで気に食わないことがあるって……」
気に食わないことって……。
ラータが、ミーシアの胸をモミながら耳元で囁く。
「なんですかこれは。全然成長していないではないですか! 先帝陛下はそれはそれは立派な胸をお持ちでした。庶民出身の私がエリン公に目をかけられ士官学校に入学したのは十歳のとき。それからさんざん貴族出身の奴らにいじめられて過ごしました。後輩になりますが、あの逆賊リューシアも同じ境遇で性格が歪んでしまったのでしょう」
ああ、そっか、リューシアも庶民出身、っていってたな。
「生まれが悪くても学業優秀なら士官学校から出世の道があるのよ」
と、ヴェルが補足するように教えてくれる。
ラータは続ける。
「でも、私が十五歳の時、初めて先帝陛下に湯伽をお許しくださり、そのときにあの豊満なお胸をさわらせてもらったのです! ああ、あのすばらしい手触り、暖かさ、そして先帝陛下はこうおっしゃったのです、『大変でしょうけど国のために努力しているあなたは素敵よ、負けないでね』――今でも鮮明に思い出せる、私のいちばん大事な思い出。それ以来、どんなつらいことがあっても、あのお胸の大きさ柔らかさを思い出して頑張ってきたのです。先帝陛下が崩御されたあとも、生き写しな皇帝陛下がいらっしゃると思えばこそ、殉死もせずに国家のため邁進してきたのです。なのに、なのに! こんな小さなお胸では……」
「胸関係ない! ないからもうやめて~! あと少しは気にしてるんだからストレートに言わないでよ! もう終わり! 終わり、終わり、離れなさーい!」
最後はもうほとんど絶叫、皇帝陛下、ブチ切れでございます。
当たり前だっつーの。
次にヴェルとエステルの女騎士姉妹が、二人仲良くミーシアの腕や背中を泡で撫でる。
そのあいだにも、ミーシアはブツブツと、
「なによ、そりゃ母さまや姉さまみたいにあんまり大きくならないなーとは思ってたんだけど、あんなふうに言わないでもいいじゃない、ねえ?」
などと愚痴を言っている。
そこにラータが口を出す。
「ちゃんと送った料理、召し上がってますか?」
間髪入れずにミーシアが怒鳴る。
「あんなの、食べるわけないじゃない! ヘビの干物だとかヘビのソーセージだとかヘビのなんとかだとか、もー! 馬鹿ラータ!」
「しかし、あの種類のヘビは食べると乳房が大きくなって乳の出もよくなると評判で……」
「じゃー自分で食べなよ!」
「ですから私は大きいのです」
「むきーっ!」
なんだこれ。
皇帝と部下の将軍の会話じゃない、たんなる姉妹喧嘩かなにかか。
むきーっってなんだよ、皇帝陛下、かわいすぎだろ。
「では、今度はエージ卿の番だよ」
とラータが言った。
……卿?
そっか、正式に騎士に叙任されたから、俺の敬称は卿になるのか。
なんだかむずがゆいな。
ま、とりあえず形だけでもおかわいらしい女帝陛下のお背中をこすらせていただこう。
なんだかんだでキッサとかヴェルとか夜伽三十五番とかと、裸で身体をくっつけることも何度かあったし、正直若干慣れてきている。
人生幸せの絶頂期なのかもしれない。
そのわりには死にかねない戦闘ばっかだったような気もするけど。
さて、俺も真似をしてたっぷり手で石鹸泡立て、直接陛下の肌に触らないように泡だけを陛下の背中の肌に塗る感じで――
なにせ、まだティーンエージャーにすらならない少女の肌だ、しかも皇帝陛下。俺ごとき男が失礼のないように……。
と、思っていたのに。
いつのまにか、俺の背後には、青髪の将軍様が立っていて、
「昔読んだ本では、男が女性の胸を揉むと大きくなるとか!」
とかいいながら、俺の手首を後ろからがっちり掴んだ。
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