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英雄達の晩餐会

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 闘技大会終了の夜の部 八百万 
 
 大会出場者や常連さん達で、いつも以上にごった返している八百万は、一時的に店先にもテーブルと椅子を設置して拡張した。 
 
 アイテムボックス内の料理を出しつつ、いつも通りの内臓の煮込みや串もの、ウナギのエリ、ヒレ、肝などの串焼きも新たに色々なメニューが並んだ。 
 
 「結局うやむやになったが面白かったな!アーサーさんが治めて終わったけど・・・・・うぉ!本当に内臓うまいな!」 
 
 「だろ?あれだけ大演説したんだ。これで内臓食いにこなかったら、そんな奴冒険者を名乗る資格ないぜ!俺は新メニューのウナギの肝だぁ!これが酒と一緒だと最高なんだよ!」 
 
 「でもみたかったなぁ、ラーメンのねぇちゃんとエーテルの姫様対決、ちなみに俺はラーメンの嬢ちゃんに懸けてた」 
 
 「そこんとこどうなんだ?ラーメンクィーンさんよぉ!」 
 
 「お~ほっほっほっほもちろん戦っていたらエーテルなんてけちょんけちょんでしたわ!わたくしと踊りたいなんて千年はやくってよぉ~ほっほっほっほ!!!そして夢にまでみた家系ラーメン!!ああん脳髄に響く重厚な豚のメロディー、そして薄く張られたチーユ!小麦感満載の麺!イッツパーフェクト!!これが食べたくて戦っていたんですわ!!!」 
 
 その言葉に隣で天丼を食べているエーテルの手が止まる。 
 
 「聞き捨てなりません!奥の手を全部闘技場で見せる程戦士として腐っちゃいませんよ!あくまでみなさんを喜ばせるパフォーマンスだったんですから!そして最強なのは天丼です!えびが豪華に2本!シェルジュエルがぷりっぷりで!大葉に!アスパラ!しいたけ!たけのこ!ナス!ただでさえ美味しい野菜たちがサクサクのシャキシャキで甘いタレとまざりご飯も美味しい!これこそ攻防最強の料理!!!」 
 
 「おいおい!今度は自分の好物の料理で競い合う気かぁ!」 
 
 「それなら俺たちも黙っちゃいないぜ!なぁレオン!」 
 
 ビールを気持ちよさそうにぐいぐい飲んでいるレオンに白羽の矢がたった。 
 
 「試合じゃニーアさんに後れをとったが、俺は流石に全力だったぜ。まさかニーアさんが波動まで使えるなんてなぁ、黄金の名も俺一人じゃないとはっと、それとは別に料理ならこれだぁ!地龍のステーキ!一見ただ焼いただけに見えるが、こりゃぁ斗真の旦那の技術が詰まってるそりゃすげぇもんよ!男ならがっつりステーキってなぁ!」 
 
 「レックスはどうだぁ?」 
 
 「俺も全力を出した。始祖の技まで使えたのは実は初めてだったんだ。いつもにない興奮で実力以上の力をだして、それでもエーテルさんに負けた。でも料理なら輝き鳥!こいつが最高だぁ!何せ食えない部分なんてない!骨までラーメンの出しにも使える!最高の食材だよ!なんといっても太った輝き鳥のレバーなんか濃厚でめちゃくちゃ美味いんだからなぁ!」 
 
 「レオンもレックスもめちゃくちゃ実力あがったからなぁ、さっきからこそこそしてるガウェインの旦那は今回の試合どうだったんだ?」 
 
 隅っこで巨体を小さくしながらこそこそと一杯やっていたガウェインに視線があつまり、開き直った表情で語り始める。 
 
 「ったく見せる戦いなんてするもんじゃないぜ!負け惜しみじゃないが、俺のあの包囲網を抜けれるのはそう簡単じゃない、それをスルスルと抜けてズドン!だもんな。太陽の加護を突き抜けた一撃なんて修業時代の師匠にくらった以来だったなぁ。料理なら牛タン!これに限る!程よく乗った脂にしっかりとした肉の味!なにより考えてみろ!肉だって脂ばっかじゃなく程よく赤身が混ざってる方が美味いだろ?それなら牛タンは最高だぜ!」 
 
 「リナリア嬢の話も聞かせてくれよ!!」 
 
 「あたしもしてやられたね、ラーメンクィーンなんてふざけた名前で出て来るから見誤ったけど、実力は本物だよ。でも二度目はないね!次があるならあたしは負けない!!!そんでもって料理なら痛風鍋!っていってもあんたら知らないだろ、斗真の旦那が特別に作ってくれた、グラナダの海鮮をふんだんに使った鍋!あれはやばいよ!斗真の旦那に交渉してレシピも譲ってもらったんだ!グラナダ領の名物になるね!問題は酒なんだよ!斗真の旦那が出す米で作った最高の酒!これが手に入んないのがねぇ」 
 
 「うひゃ~海鮮鍋!!くいてぇ!!!絶対美味いだろうなぁ!」 
 
 「俺はもっと聞き捨てならねぇ事を聞いた!米でできた最高の酒なんかあんのか!今出てるのよりも美味いのか!?」 
 
 リナリア嬢は静かに微笑んで無視をした。 
 
 「うわぁ!まじかよ!お前ら俺たちの知らないなかで、美味い酒までご馳走になってんのかよ~!まじかよ~斗真の旦那~俺にも米の酒くれよぉ~」 
 
 リリが奥の暖簾をくぐって出てくると、にっこり笑て言う。 
 
 「今出てるのも、いつもよりいいお酒ですよ!お兄ちゃんがいってました。米の名産地新潟の辛口酒で景虎といいます。飲みたい人は言ってくださいね~、次のも名酒十四代という美味しいお酒をお出ししますからね~」 
 
 「まじかぁ!八百万最高!!」 
 
 「辛口の割には飲みやすなぁ、なんか他の店とは全然違うぞ、邪魔なものが入っていないというか?喉が変にイガイガする事もない、酒ってこんなに飲みやすくて美味かったっけ?」 
 
 「嫌、確かに集中して飲むといつものものより旨味が違うな、てか安いから勝手に安酒だと思っていたが、普段から結構いい酒だしてんだな八百万」 
 
 「アーサーさんとメフィストの旦那もこっちで飲めばいいのになぁ、俺たちがいると気軽に飲めないだろうって宿の方で一杯やってるみたいだが、水臭いぜ!」 
 
 「ん?でもさっき外でのんびり飲んでるのみたよ、顔出すっていってたし、ほらぁ!噂をすれば!我らが偉大なる領主と医療界の大貴族で庶民の味方!アーサー様とファウスト様だ!ほらほらガウェインさんとリナリアさんの所の席あけてあげて~」 
 
 みんなが新たに椅子をもってきて場所を自然と開ける。 
 
 「気にしなくて飲んでていいのに、いやぁ独断で試合を終わらせたからみんな怒ってると思ったんだが」 
 
 「ふふふふっウェールズの冒険者は気前がいい奴らが多いなぁ、私なんて王都では避けられてばかりなのだがね。薄気味悪いとよく言われるよ・・・・・」 
 
 「冗談言うなよ!ファウスト様!!あんだけいい試合みさせてもらって、文句言う奴はこの街にはいませんぜ!さぁ飲んでくださいよぉ!それとお二人は八百万で印象に残ってる料理や好物はありますか?」 
 
 駆けつけ一杯、酒を仰ぎながらアーサーは答えた。 
 
 「寿司だ!みんなにもいつか食べてほしい!!!寿司は最高の料理だ!一見米の上に魚を乗せただけに見えるが、これがそう簡単じゃないんだ!」 
 
 「肉の炙り寿司を私も食べたが、あれの海鮮版か、ふむ私は八百万にまだ数回しか足を運んでいないから、皆ほど知らないのだが、確かにアーサー殿の言う寿司は美味かった」 
 
 「地龍の炙り寿司!あれにノックアウトされた客も多い!確かにあれは腰が抜けるほど美味かった!」 
 
 「酒ともあうしな!」 
 
 いつも以上に会話が盛り上がる中、ニーア達が姿を現した。 
 
 「くぇ~めちゃめちゃ混んでるな!とうま~腹減ったよぉ~」 
 
 「すっかり猫なで声だして、恥ずかしいシャンとしなさい!」 
 
 後ろにいるクリスタにスパンと尻を叩かれるニーア。 
 
 「あたしに負けた癖に生意気!!」 
 
 「リングアウトで負けただけで、これっぽちも本気じゃないわよ!!」 
 
 店の奥から斗真が顔を出して二人を出迎えた。 
 
 「二人ともお疲れ様、先にお風呂でもはいります?それとも飯にします?」 
 
 「「ごはんで!!!」」 
 
 「なんにします?今日は好きなもの出しますよ」 
 
 「まじかぁ!じゃああたしイール!うな重と蕎麦と角煮とクリスピーポーク!!!」 
 
 「私はすき焼き定食お願いします!!」 
 
 「はいよ!後ろのギムレッドさん達はどうしますか?」 
 
 クリスタ達の後ろにはギムレッドさんにフィガロさんルーカスさんが立っていた。 
 
 「いたなら声かければいいのに」 
 
 「別に目的地は一緒なんですから、いいじゃないですか。私は濃厚どろ系ラーメンにライスと餃子お願いします!」 
 
 「俺はチキン南蛮をたのむわ」 
 
 「俺はとろけサバの味噌煮とヴァサゴの姿揚げにグラナダ貝を焼きと揚げで三個ずつ頼む!酒はこの前の焼酎三人分頼む」 
 
 「は~い了解です。さぁ中にどうぞ!ああっクラウスさんお疲れ様、ご飯まだなら食べていって、ルーナさんも」 
 
 「やれやれ、宿も大盛況でしたが、八百万も凄いですな。大変そうなら給仕我々も手伝います」 
 
 「ありがとう、でも大丈夫だよ。クラウスさん達も今日は疲れたでしょ、ゆっくりお酒もごはんも楽しんでいってよ。今日は好きな物出すよ」 
 
 「斗真様が用意してくれる料理は毎回美味しいですからなぁ、覚える事に苦も無く記憶に刻まれますよ」 
 
 「私はハンバーグがいいです!斗真様のハンバーグは世界一ですっ!」 
 
 「私はこの間出た、太麺の塩ラーメンをお願いします。あの唯一無二ののど越しにすっかりはまりまして、しかもお店で出すわけでもないのにスープの強烈な旨味!塩イコールさっぱりしていると言う概念が吹っ飛ぶまさにスペシャルな一杯でした」 
 
 「ああっこの間の、それじゃあエビチリとか春巻きも出そうか」 
 
 英雄達の勢ぞろいで宴はまだまだ続く。
 
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