悪魔と契約した僕は伝説の『ブルオーガ』を右手に宿し、やがて世界最強。

葉月

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第11話 登場、スケベなライバル!?

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 憂鬱になりそうな坂を上りギルドへやって来ると、何やら騒がしい声が聞こえてきた。

「どうかお願いです。村をお救い下さい!」
「困ります……頭をあげて下さい!」

 ギルドの真ん中で膝を突き、深々と頭を下げる老人の姿。
 その老人を前に困り果てているシェリル。
 ギルドに居る冒険者たちも皆何事かと注目している。

 そんな中、僕はシェリルに近づきながら声をかけた。

「おはようございます。どうかされたんですか?」
「あっ! タタリちゃん! おはようございます」

 僕に気がついたシェリルは瞳を輝かせながら頭を下げて挨拶をしてくれたのだが……同時に大胆に開いた胸元を見せつけるように胸を寄せた。
 腰を90度に曲げて、その姿勢のまま僕を見てにやりと微笑みを見せる。

 明らかにわざと見せつけてるな。
 本当にドスケベなんだから。

「それで……何をしているんですか?」
「それが……」

 シェリルは困った様子で頬に手を当てながら事情を説明してくれた。
 その間も老人は一向に頭を上げようとはしなかった。

 シェリルの話しだと、この街からすぐ近くの小さな村にオークの群れが現れたらしい。
 村にはギルドもなく、戦える者もいなかったため、オークに村の女たちが拐われたというのだ。

 それで村の村長であるこの老人が駆け込んできたらしい。
 オークの群れから拐われた村娘たちを取り返す依頼をギルドに申請した老人だったが、依頼料はたったの金貨5枚だという。

 オークはそれほど強力な魔物ではないが、群れとなると話しは別だ。

 その規模がわからない上に群れを率いている上位種の魔物、ハイオークやチャンピオンオークなどがいるかもしれない。
 仮にチャンピオンオークが群れを率いていたとすれば……金貨10枚でも安い。

 しかも、群れで行動しているとなれば雇う冒険者の数も必然的に多くなる。
 金貨5枚を数名の冒険者で分けるとなれば……一人頭の取り分はもちろん下がってしまう。

 だが、チャンピオンオークが群れにいたとすれば、最低でもCランク冒険者が数名は必要だ。

 だからご覧の通り、冒険者たちは頭を下げる老人を見ても、見て見ぬ振りをし続けている。

「そんな安値で引き受ける者などいるはずないだろ。金を持って出直してくるんだな」

 吐き捨てるような言葉を老人に浴びせながら、こちらに近づいてきたのは4人組のパーティーだ。

 水色の髪を背で三つ編みに縛った男らしくない髪型の男。背には身の丈ほどありそうな大剣を担いでいる。
 残りの3名は女。

 可愛らしい双子姉妹と……めっちゃくちゃ可愛い女の子が一人!?

 淡いピンク色の髪を両サイドでお団子に結び、体にフィットしたミニスカートのマンダリンドレスに身を包んだ美少女。

 思わず見とれてしまった。
 だけど、男も僕の傍らに立つリリスにイヤらしい視線を向けて見とれている。

 なんだこいつは!?
 きっと向こうも同じことを思ったのだろう。
 なぜなら僕にガンを飛ばしていた。

「ああ~お前か……噂は聞いている。なんでもガキの癖に女を性奴隷として飼っているらしいじゃないか」
「リリスは望んで僕の……」

 いきなり失礼な言葉を剛速球で投げてきた男に、僕はムッとしながら言い返してやろうとしたのだが……。

「かわいそうに、でももう安心だよ。鬼畜なガキからこの勇者な俺……レイン・ディープスカイが君を助けてあげよう。だから……俺の女になりなさい」

 なッ、なんだこいつはッ!?
 僕を無視してリリスの手を握り、訳のわからないことをほざいている!

「何をするッ!?」
「それはこっちのセリフですよ! 僕のリリスに汚い手で触れないでもらえますか? ばい菌が移るです!」

 僕はリリスの手を握るレインとかいうクソ野郎の腕に、エンガチョチョップを食らわせてやった。

 睨み合う僕とレイン。
 リリスは僕を宥めるようにそっと背後に回りぷにゅぷにゅを押し付けてくれる。

 それを見たレインは奥歯を鳴らして、側にいたかわい子ちゃんを抱き寄せ、大きなおっぱいをギュッと鷲掴みにした。

「あっんっ……。 ナニするアルか! こんなところでそんなことをしたら、圧倒的屈辱、圧倒的羞恥ね」
「うっ、うるさい! お前も気を利かせてあれぐらいしたらどうなんだ!」

 レインは悔しそうにリリスを指差している。
 日頃の調教の成果だな。
 僕は勝ち誇ったようにレインに向けて笑を浮かべた。

 それにしても、かわい子ちゃんはどこか田舎の出身なんだろうか?
 独特の訛りだな。

 僕とレインの間に火花が飛び散る。

「あ、あの~、あなたさまは勇者さまなのでございますか?」
「はぁ?」
「今ご自分で勇者だと仰られておりましたので」
「まぁ……何れは勇者になる予定だ」
「でしたら……どうかわたくし共の村をお救い下さい!」
「冗談でじゃない! そんな安値で誰が引き受けるか。フンッ」

 睨み合う僕たちの間に割って入ってきた老人が、口だけ詐欺勇者レインに助けを求めている。

 こんな口だけ男に頼るなんて……ああはなりたくないな。
 まっ、男の中の男である僕は絶対にああはならないけどね。

「シェリル、何か手頃で儲かりそうな依頼はありますか?」
「あっ、はい。すぐにタタリちゃんに合った依頼をピックアップしますね」

 僕はレインと老人を無視してシェリルに仕事を見繕ってくれるように頼み、受付に引っ込んだシェリルのカウンターへと移動しようとしたのだが……裾を引っ張られた。

「あなたも冒険者さまなのでございますよね? ならどうか私共の村をお救い下さい!」
「いいですかおじいさん? 僕は男の人や田舎娘なんかに興味はないんです。もしもオークに捕まったのが美女だと言うのなら、考えてあげなくもないですが」
「捕まった娘の中には私の孫娘もいるのです」
「あっ、そうですか。お気の毒ですね」
「これ……」
「ん……? ッ!?」

 老人は懐から一枚の写真を取り出して僕に見せてきた。
 そこに写っていたのは……目の前の老人の孫とは思えない程の美少女!

 僕が食い入るように写真を見ていると、レインのバカも気になったのか覗き込んできた。

「これ……本当におじいさんのお孫さんなんですか?」
「嘘だったら殺すぞ」
「本当です! としは19、未婚でございます。もしも孫を助けて下さったら……その方に、孫を嫁に出しても良いと考えております!」
「「ッ!?」」

 なんてことだ!
 それはつまり……現地妻にしてくれてもいいということかッ!?
(そこまで言っていない)

「おじいさん、僕はいつも人助けをしなさいと言われて育ってきたとてもいい子なんです。必ず僕が助けてあげますよ」
「未来の勇者第一候補たるこの俺……レイン・ディープスカイが必ずやお孫さんを助けてみせよう」
「「はぁッ!?」」

 写真の美少女を……現地妻にしてもいいと言うおじいさんの言葉を聞いたとたん、レインは態度を一変させた。
 呆れて声が漏れてしまう。

 本当にこいつは最低だな。
 こんな奴にだけはなりたくない。

「あなたはさっきおじいさんに悪態をついていたじゃないですか!」
「それはお前も一緒だろうが!」
「僕は美女が捕まっているなら助けてあげなくもないですよと、しっかりとおじいさんに伝えています。あなたのようなむっつりスケベとは違います」
「黙れッ! お前はただのオープンスケベなだけだろうがッ! とにかくこの依頼はこの俺が引き受けた」
「一生一人で言ってろです」
「なんだとッ!」
「何ですかッ!」
「「このドスケベッ!!」」

 僕は背伸びをして、レインは背を曲げながら額をゴリゴリとぶつけ合った。

「あ、あの~」
「なんですかッ!?」
「なんだよッ!?」

 老人は額の汗を拭いながら、提案を出してきた。

「では、先に孫娘を……村の娘たちを助けて頂いた方に報酬と孫を……というのでいかがでしょうか?」
「……いいでしょう。そうしましょう」
「望むところだ」

 それから僕はシェリルに見繕ってもらっていた仕事はキャンセルだと伝え、老人にオークの棲みかなどを尋ねた。

 レインとかいう詐欺師勇者に遅れを取らないよう、僕が足早にギルドを後にしようとすると……。

「おい、待て!」

 突然レインに呼び止められた。

「なんですか?」
「どうせなら賭けをしないか」
「賭け?」
「そうだ。この依頼を先に達成した方が仲間の……パーティーの女を一晩好きにできるというのはどうだ?」

 レインは見下すようなニヤけ面で、とんでもないことを口にしている。

「ちょっと待つね! オマエナニ言ってるアルか! ワタシたちはオマエの所有物違うね」
「安心しろランラン! こいつの〝タグ〟をよく見てみろ。白色だ!」

 レインは僕が首から下げた冒険者タグを指差して、バカにしたように笑いを堪えている。

 僕は昨日ダンジョンから戻り、駆け出しのFランクから見習いのEランクに昇格したのだが、FランクからEランクへの昇格はとにかく簡単だ。

 なんでもいいから魔物を一匹でも狩ることができたら昇格する。
 要はFもEも大差ない、駆け出しという事なんだ。

 一方、レインたちのタグの色は銀色。
 銀が指し示すランクはC、中級冒険者の証だ。

「そういうことを言ってるんじゃないね。ワタシはオマエの物ではないと言ってるアルよ」
「…………で、どうだ?」
「ナニ無視してるか、圧倒的傲慢ね」

 レインはランランという名のかわい子ちゃんの言葉を無視して続けた。
 ランランは怒り心頭と言った様子だが……これは美味しいな。

 正直負ける気がしない。

「いいですよ。じゃあ僕が賭けに勝ったあかつきには……そちらのランランお姉さんを一晩貸していただきます」
「いいだろう」
「オマエらナニ言ってるかッ! ワタシの体は誰の物でもないね」
「安心して下さいランラン。きっとスペシャルな……忘れられない夜になりますよ」
「そういうことを言ってるんじゃないアルよ! 圧倒的スケベ小僧ね」

 呆れるリリスや女子メンバーをよそ目に、僕とレインの高笑いがギルドに木霊し続けた。


 このレインとの賭け……美少女がかかっているだけに絶対に負けられない。
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