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第23話 クッキングであ~~る!
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あれから数時間――やはりダンジョンは一筋縄ではいかない。
別に魔物が強いからという訳ではない。
僕にとって一番厄介なのは……下層に行けば行くほどダンジョンが広大になるということだ。
しかも、ただ単に広くなるだけではなく、ダンジョンとは迷宮。
つまり下に行くための階段を探すのが一苦労なんだ!
「もう疲れたアルよ」
「同感じゃ。こう何時間も似たような場所をぐるぐると歩かされていては、さすがの妾もくたびれてしまう」
もう歩けないと岩壁を背もたれにして、2人仲良く座り込んでしまった。
同時に妙な音が聞こえてくる。
――グゥゥウウウッ!
リリスとランランは恥ずかしそうにお腹を摩り、ガクッと頭を垂れた。
まぁ、無理もない。
昼にサンドイッチを食べたっきり何も口にしていないんだ。
正直僕もお腹ペコペコだった。
「そういえば……ワタシたち急いでダンジョンに来たから糧食を持参してないね」
「ということは……妾たちは飲まず食わずでダンジョンに潜るのか?」
「そんなの無理ね。ワタシ干からびてミイラになるよ」
「右に同じくじゃ」
「「ハァ~~~~ッ」」
情けなく長い溜息を吐き出す2人を一瞥し、僕は先ほど倒したハイオークの元まで歩き、それを引きずって2人の前に置いた。
「なんじゃ? そんな豚の死骸なんぞ持ってきて……臭いから向こうへ持っていくのじゃ」
「本当にひどい臭いね……タタリ悪戯良くないね!」
「違いますよ。お腹が空いていると思ってわざわざ運んできたんですよ」
「「ッ!?」」
「冗談ではないわッ!? 妾にこんなに臭い豚を食えと言うんじゃなかろうなッ! 絶対食わんぞッ! そんモノ食うくらいじゃったら飢えて死んだ方がまだマシじゃ!」
「リリスの言う通りね! 好き嫌いのないワタシでも、魔物なんて絶対に食わないね! ウ○チの臭いがするから早くあっちに持ってくよろしいッ!」
2人にハイオークを食べようと提案すると、先ほどまで一歩も動けないと嘆いていた癖に、タッと立ち上がって物凄い剣幕で抗議してくる。
もちろん僕だってこんな臭いハイオークの肉をそのまま食べようなんて思わない。
だけど、2人は僕がこのまま食べると勘違いしたのだろう。
とにかくお腹が空いている2人は機嫌が悪いし、美味しいものでもご馳走して機嫌を直してもらおう。
それに腹が減っては魔物とも満足に戦えない。
僕は腰袋から小さなカプセルを取り出して、後方にポイッと投げた。
するとあら不思議。
立ち込める白煙の中からキッチンと調味料を保管する棚や冷蔵庫が一瞬で殺伐としたダンジョンに設置される。
その光景を目の当たりにした2人は興味津々と言った様子で見ている。
「これは……何アルか!?」
「まさか……マジックアイテム収納カプセル!? お前さまはこんな便利なモノを所持しておったのか!」
「ポエマー族はみんな専用キッチンを所持しているんですよ」
リリスが驚くのも無理はないかな?
マジックアイテム収納カプセルはとても高価なモノなんだ。
だけど僕たちポエマー族は数百年かけて収納カプセルなどの便利アイテムを集め、代々受け継いで来た。
その中でもポエマー族の必需品がこのキッチンセットだ。
僕たちポエマー族は天幕生活をしているから住居にキッチンがない。
それにポエマー族が暮らす森はとても広大で、時には数日かけて狩りに出かけることもある。
そんな時、料理をするためのキッチンがないととても不便なので、ポエマー族は皆専用キッチンを収納カプセルに収めて持ち運んでいる。
「しかし……お前さまは見かけによらず料理ができるのか?」
「料理のできる男はとても需要があるね!」
「じゃが待つのじゃッ! キッチンがあっても肝心の食材がないではないか?」
「食材ならここに、新鮮な豚があるじゃないですか!」
「アイヤーーー! やっぱりワタシパスね! 今の発言は前言撤回ね。料理ができても糞料理は勘弁ね」
「同感じゃな」
本当に2人は何もわかっていないな。
僕は〝超〟がつくほどの一流シャーマンなのに……。
僕は2人に背を向けて、豚をキッチンまで運ぶとあるお方を黄泉の国より喚び出した。
「出番ですよ。ムッシュ《パスタ・マリゲリ~タ》さん」
僕は黄泉の国よりパスタ・マリゲリ~タさんというシェフを喚び出し、人格憑依という技を使用した。
死霊憑依の技の一つ、人格憑依は文字通り喚び出した死霊に体を貸し与える能力だ。
パスタ・マルゲリ~タさんを人格憑依させたことで、僕の頭には長くて立派な料理長帽子が現れる。
「ペペロンチ~~~~~ノッ! 久々の料理に腕がな~~~~るであります!」
「なッ、なんじゃ!? 急に変な口調になりおって」
「腹が空き過ぎてどうかしてしまったね」
「ハイオークを食べると吐かすくらいじゃからの……」
「可哀想なタタリね」
好き勝手言っている2人のことは放って置いて、僕は頭の中でパスタ・マルゲリ~タさんと会話をする。
(シェフ! 本日の食材は新鮮なハイオークなんですが、美味しく頂けますか?)
「もちろんであ~~~るッ! ハイオ~~クはとてもトレビア~~~ンな食材であ~~る!)
(お腹ペコペコなので、早速調理をお願いしますですよ!)
(ちゃちゃっと作るであ~~~~るッ!)
シェフは心良く調理を引き受けてくれると、手際よくハイオークを捌き、棚から幾つかの香辛料と、冷蔵庫に保管してあった食材を取り出した。
(シェフ、ところでそれは何をしているんですか?)
(ハイオ~~クの肉は臭みが強くてそのままではとても食べれたものではあ~~りません。そこで一度調理しやすいように適度な大きさに切り分けてから、臭みの原因を取り除くので~~す)
(なるほどです!)
(臭みの原因は血抜きが不十分だからで~~す。血抜きの仕方は他の肉と同じで、水、牛乳、ヨーグルト、塩、麹などに通常は30分から一晩浸けて置きま~~す。しか~~し、それでは時間がかかってしまいま~~す。そこで私の能力クッキングで時間を短縮しま~~す)
パスタ・マルゲリ~タさんの能力、クッキングは下ごしらえにかかる調理時間を短縮してしまう効果がある。
人格憑依しているため、シェフの力も僕の体を通して使うことが可能なんだ。
本来魔物は家畜ではないので食べることはない。
だが、このようなダンジョンでは魔物を食すことが多々ある。
なぜならダンジョンの深さや広さは誰にもわからない。
そんな誰にもわからない未知のダンジョンに潜るとき、保存食などを持参していても尽きてしまう。
じゃあそんなとき、どうやって飢えを凌げばいいのか、答えは簡単だ。
魔物を喰らえばいい。
だけど魔物ってのは大半がひどく臭い上に硬くて不味い。
とてもじゃないけど食べれたものではない。
なので有名パーティーには魔物を専門に調理する、戦うコックさんが同行していることが多い。
僕が黄泉の国から喚び出した、パスタ・マルゲリ~タシェフもかつては勇者パーティーに所属していた。
シェフが考案した魔物料理の多くが、現在の魔物を専門に調理するコックさんたちの基礎になっている。
つまり、パスタ・マルゲリ~タさんは伝説のシェフである。
では、そんな凄い人をどうして僕が喚び出せるのかって?
それは、パスタ・マルゲリ~タシェフの料理人としての更なる探求心が、この世に未練を残しているからだ。
さらに、シェフはオーク種の肉を柔らかくする方法も教えてくれた。
オーク肉を柔らかくするコツ。
オーク肉は取ってすぐは硬いので、本来は少なくとも2~3日置いてから食べるのが吉。
そうすると肉質が柔らかくなって食べごろに……。
また、通常のオークとは違い、ハイオークは肉の脂肪分が少ないので、焼き過ぎると固くなってしまう。
焼いて食べるときは焼き過ぎないのがコツらしい。
血抜き作業に牛乳を使用すると、さらに肉質がやわらかくなり一石二鳥とのこと。
煮込むときは一度表面を焼いてから煮込むとさらに柔らかく、美味しい煮込み料理ができる。
焼かずに煮込むときにはかなり長時間煮る必要があるが、そこはシェフの能力クッキングがあるから問題ない。
通常は三時間以上煮込めば大変柔らかくなるとのこと。
そうこうしているうちに、あっと言う間に美味しそうな匂いがダンジョン内に漂ってくる。
その匂いに釣られて、先ほどまで絶対に食べないと頑なに拒んでいたリリスとランランも近づいて来た。
「なッ、なんじゃこの美味そうな料理はッ!?」
「信じられないね! 恐ろしく不味そうだったハイオークが……高級レストランのメニューに早変わりね!」
料理を見てヨダレを流す2人を傍目に、僕はシェフに別れを告げる。
(ありがとうです、シェフ!)
(礼などいいので~~す。それよりもまた、料理を作らせて欲しいのであ~~るッ)
(もちろんですよ。その時は是非、お願いするですよ)
僕はシェフにお礼言い、シェフは久々の料理に満足して黄泉の国へと還って行った。
「さてと、食べるとしますかね。本当はみんなと一緒に食べた方が美味しいんですが……僕一人で頂くとするですよ」
「こッ、こんなに沢山あっては……お前さま一人では食べきれんじゃろ?」
「リ、リリスの言う通りね!」
目の前に並べられたハイオークのソテーやテールスープに喉を鳴らす2人は、全然素直じゃない。
「別に無理して食べなくてもいいですよ。余ったら冷蔵庫で保存しますから。そうすれば明日も食べれますからね。いただきまーーーす!!」
――グゥゥウウッ!
なんて卑しい音を響かせるんだ。
それにそんなに見つめられたら食べにくいじゃないか!
「素直じゃない子には上げないですよ!」
「「…………」」
「妾が悪かった……腹が減りすぎて死にそうなんじゃ」
「ワタシも糞とか言ったこと謝るよ」
仕方ない、頭を下げる2人にもご馳走してあげますか。
それに食事はみんなで摂った方が美味しいしね。
「では、3人で仲良く食べましょう!」
「お前さまは本当にいい子じゃな!」
「タタリ大好きね!」
僕たちは3人で美味しくハイオークさんを頂いた。
そして、食事を済ませてダンジョン内で寛いでいると……。
「ワタシちょっとトイレね」
「あっ、妾もトイレじゃ」
「女同士の連れションね」
「下品じゃぞ、ランラン」
と、楽しそうな2人に、僕は無言でコップを差し出した。
「2人の持ち運び簡易おトイレですよ」
「「……………………ッ!?」」
悲しそうな顔でコップを握り締めるリリスとランラン。
どうせ野ションするんだから、コップでするのも同じだと思うんだけどな?
こうしてダンジョンでの、僕たちの長い一日が終を告げた。
それは同時に絶世の美女を求める、長い冒険の幕開けでもあったんだ。
別に魔物が強いからという訳ではない。
僕にとって一番厄介なのは……下層に行けば行くほどダンジョンが広大になるということだ。
しかも、ただ単に広くなるだけではなく、ダンジョンとは迷宮。
つまり下に行くための階段を探すのが一苦労なんだ!
「もう疲れたアルよ」
「同感じゃ。こう何時間も似たような場所をぐるぐると歩かされていては、さすがの妾もくたびれてしまう」
もう歩けないと岩壁を背もたれにして、2人仲良く座り込んでしまった。
同時に妙な音が聞こえてくる。
――グゥゥウウウッ!
リリスとランランは恥ずかしそうにお腹を摩り、ガクッと頭を垂れた。
まぁ、無理もない。
昼にサンドイッチを食べたっきり何も口にしていないんだ。
正直僕もお腹ペコペコだった。
「そういえば……ワタシたち急いでダンジョンに来たから糧食を持参してないね」
「ということは……妾たちは飲まず食わずでダンジョンに潜るのか?」
「そんなの無理ね。ワタシ干からびてミイラになるよ」
「右に同じくじゃ」
「「ハァ~~~~ッ」」
情けなく長い溜息を吐き出す2人を一瞥し、僕は先ほど倒したハイオークの元まで歩き、それを引きずって2人の前に置いた。
「なんじゃ? そんな豚の死骸なんぞ持ってきて……臭いから向こうへ持っていくのじゃ」
「本当にひどい臭いね……タタリ悪戯良くないね!」
「違いますよ。お腹が空いていると思ってわざわざ運んできたんですよ」
「「ッ!?」」
「冗談ではないわッ!? 妾にこんなに臭い豚を食えと言うんじゃなかろうなッ! 絶対食わんぞッ! そんモノ食うくらいじゃったら飢えて死んだ方がまだマシじゃ!」
「リリスの言う通りね! 好き嫌いのないワタシでも、魔物なんて絶対に食わないね! ウ○チの臭いがするから早くあっちに持ってくよろしいッ!」
2人にハイオークを食べようと提案すると、先ほどまで一歩も動けないと嘆いていた癖に、タッと立ち上がって物凄い剣幕で抗議してくる。
もちろん僕だってこんな臭いハイオークの肉をそのまま食べようなんて思わない。
だけど、2人は僕がこのまま食べると勘違いしたのだろう。
とにかくお腹が空いている2人は機嫌が悪いし、美味しいものでもご馳走して機嫌を直してもらおう。
それに腹が減っては魔物とも満足に戦えない。
僕は腰袋から小さなカプセルを取り出して、後方にポイッと投げた。
するとあら不思議。
立ち込める白煙の中からキッチンと調味料を保管する棚や冷蔵庫が一瞬で殺伐としたダンジョンに設置される。
その光景を目の当たりにした2人は興味津々と言った様子で見ている。
「これは……何アルか!?」
「まさか……マジックアイテム収納カプセル!? お前さまはこんな便利なモノを所持しておったのか!」
「ポエマー族はみんな専用キッチンを所持しているんですよ」
リリスが驚くのも無理はないかな?
マジックアイテム収納カプセルはとても高価なモノなんだ。
だけど僕たちポエマー族は数百年かけて収納カプセルなどの便利アイテムを集め、代々受け継いで来た。
その中でもポエマー族の必需品がこのキッチンセットだ。
僕たちポエマー族は天幕生活をしているから住居にキッチンがない。
それにポエマー族が暮らす森はとても広大で、時には数日かけて狩りに出かけることもある。
そんな時、料理をするためのキッチンがないととても不便なので、ポエマー族は皆専用キッチンを収納カプセルに収めて持ち運んでいる。
「しかし……お前さまは見かけによらず料理ができるのか?」
「料理のできる男はとても需要があるね!」
「じゃが待つのじゃッ! キッチンがあっても肝心の食材がないではないか?」
「食材ならここに、新鮮な豚があるじゃないですか!」
「アイヤーーー! やっぱりワタシパスね! 今の発言は前言撤回ね。料理ができても糞料理は勘弁ね」
「同感じゃな」
本当に2人は何もわかっていないな。
僕は〝超〟がつくほどの一流シャーマンなのに……。
僕は2人に背を向けて、豚をキッチンまで運ぶとあるお方を黄泉の国より喚び出した。
「出番ですよ。ムッシュ《パスタ・マリゲリ~タ》さん」
僕は黄泉の国よりパスタ・マリゲリ~タさんというシェフを喚び出し、人格憑依という技を使用した。
死霊憑依の技の一つ、人格憑依は文字通り喚び出した死霊に体を貸し与える能力だ。
パスタ・マルゲリ~タさんを人格憑依させたことで、僕の頭には長くて立派な料理長帽子が現れる。
「ペペロンチ~~~~~ノッ! 久々の料理に腕がな~~~~るであります!」
「なッ、なんじゃ!? 急に変な口調になりおって」
「腹が空き過ぎてどうかしてしまったね」
「ハイオークを食べると吐かすくらいじゃからの……」
「可哀想なタタリね」
好き勝手言っている2人のことは放って置いて、僕は頭の中でパスタ・マルゲリ~タさんと会話をする。
(シェフ! 本日の食材は新鮮なハイオークなんですが、美味しく頂けますか?)
「もちろんであ~~~るッ! ハイオ~~クはとてもトレビア~~~ンな食材であ~~る!)
(お腹ペコペコなので、早速調理をお願いしますですよ!)
(ちゃちゃっと作るであ~~~~るッ!)
シェフは心良く調理を引き受けてくれると、手際よくハイオークを捌き、棚から幾つかの香辛料と、冷蔵庫に保管してあった食材を取り出した。
(シェフ、ところでそれは何をしているんですか?)
(ハイオ~~クの肉は臭みが強くてそのままではとても食べれたものではあ~~りません。そこで一度調理しやすいように適度な大きさに切り分けてから、臭みの原因を取り除くので~~す)
(なるほどです!)
(臭みの原因は血抜きが不十分だからで~~す。血抜きの仕方は他の肉と同じで、水、牛乳、ヨーグルト、塩、麹などに通常は30分から一晩浸けて置きま~~す。しか~~し、それでは時間がかかってしまいま~~す。そこで私の能力クッキングで時間を短縮しま~~す)
パスタ・マルゲリ~タさんの能力、クッキングは下ごしらえにかかる調理時間を短縮してしまう効果がある。
人格憑依しているため、シェフの力も僕の体を通して使うことが可能なんだ。
本来魔物は家畜ではないので食べることはない。
だが、このようなダンジョンでは魔物を食すことが多々ある。
なぜならダンジョンの深さや広さは誰にもわからない。
そんな誰にもわからない未知のダンジョンに潜るとき、保存食などを持参していても尽きてしまう。
じゃあそんなとき、どうやって飢えを凌げばいいのか、答えは簡単だ。
魔物を喰らえばいい。
だけど魔物ってのは大半がひどく臭い上に硬くて不味い。
とてもじゃないけど食べれたものではない。
なので有名パーティーには魔物を専門に調理する、戦うコックさんが同行していることが多い。
僕が黄泉の国から喚び出した、パスタ・マルゲリ~タシェフもかつては勇者パーティーに所属していた。
シェフが考案した魔物料理の多くが、現在の魔物を専門に調理するコックさんたちの基礎になっている。
つまり、パスタ・マルゲリ~タさんは伝説のシェフである。
では、そんな凄い人をどうして僕が喚び出せるのかって?
それは、パスタ・マルゲリ~タシェフの料理人としての更なる探求心が、この世に未練を残しているからだ。
さらに、シェフはオーク種の肉を柔らかくする方法も教えてくれた。
オーク肉を柔らかくするコツ。
オーク肉は取ってすぐは硬いので、本来は少なくとも2~3日置いてから食べるのが吉。
そうすると肉質が柔らかくなって食べごろに……。
また、通常のオークとは違い、ハイオークは肉の脂肪分が少ないので、焼き過ぎると固くなってしまう。
焼いて食べるときは焼き過ぎないのがコツらしい。
血抜き作業に牛乳を使用すると、さらに肉質がやわらかくなり一石二鳥とのこと。
煮込むときは一度表面を焼いてから煮込むとさらに柔らかく、美味しい煮込み料理ができる。
焼かずに煮込むときにはかなり長時間煮る必要があるが、そこはシェフの能力クッキングがあるから問題ない。
通常は三時間以上煮込めば大変柔らかくなるとのこと。
そうこうしているうちに、あっと言う間に美味しそうな匂いがダンジョン内に漂ってくる。
その匂いに釣られて、先ほどまで絶対に食べないと頑なに拒んでいたリリスとランランも近づいて来た。
「なッ、なんじゃこの美味そうな料理はッ!?」
「信じられないね! 恐ろしく不味そうだったハイオークが……高級レストランのメニューに早変わりね!」
料理を見てヨダレを流す2人を傍目に、僕はシェフに別れを告げる。
(ありがとうです、シェフ!)
(礼などいいので~~す。それよりもまた、料理を作らせて欲しいのであ~~るッ)
(もちろんですよ。その時は是非、お願いするですよ)
僕はシェフにお礼言い、シェフは久々の料理に満足して黄泉の国へと還って行った。
「さてと、食べるとしますかね。本当はみんなと一緒に食べた方が美味しいんですが……僕一人で頂くとするですよ」
「こッ、こんなに沢山あっては……お前さま一人では食べきれんじゃろ?」
「リ、リリスの言う通りね!」
目の前に並べられたハイオークのソテーやテールスープに喉を鳴らす2人は、全然素直じゃない。
「別に無理して食べなくてもいいですよ。余ったら冷蔵庫で保存しますから。そうすれば明日も食べれますからね。いただきまーーーす!!」
――グゥゥウウッ!
なんて卑しい音を響かせるんだ。
それにそんなに見つめられたら食べにくいじゃないか!
「素直じゃない子には上げないですよ!」
「「…………」」
「妾が悪かった……腹が減りすぎて死にそうなんじゃ」
「ワタシも糞とか言ったこと謝るよ」
仕方ない、頭を下げる2人にもご馳走してあげますか。
それに食事はみんなで摂った方が美味しいしね。
「では、3人で仲良く食べましょう!」
「お前さまは本当にいい子じゃな!」
「タタリ大好きね!」
僕たちは3人で美味しくハイオークさんを頂いた。
そして、食事を済ませてダンジョン内で寛いでいると……。
「ワタシちょっとトイレね」
「あっ、妾もトイレじゃ」
「女同士の連れションね」
「下品じゃぞ、ランラン」
と、楽しそうな2人に、僕は無言でコップを差し出した。
「2人の持ち運び簡易おトイレですよ」
「「……………………ッ!?」」
悲しそうな顔でコップを握り締めるリリスとランラン。
どうせ野ションするんだから、コップでするのも同じだと思うんだけどな?
こうしてダンジョンでの、僕たちの長い一日が終を告げた。
それは同時に絶世の美女を求める、長い冒険の幕開けでもあったんだ。
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