ララのことが好きだった私が、ララの彼氏に操られて、彼の“彼女の一人”にされるまで

夜道に桜

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 火曜日の放課後。
 教室の隅で、私はずっとララの帰り支度を眺めていた。

 ピンク色のリップを、小さな手鏡で整える。
 斜めに流した前髪が、目にかからないように指先で払われる。
 スカートのプリーツを整えて、ちょっとだけ香水をつける。

 以前のララなら、こんなふうに“人の目”を意識する子じゃなかった。
 自分が“可愛くあること”を気にするよりも、楽しく笑うことを優先してた。
 でも今のララは、誰かに“見られる自分”を確かに作っていた。

 ――きっと、それは“タクマ”のためだ。

「先、帰るね。今日は寄り道するから」

「……うん」

 短く答えるだけで、精一杯だった。

 

 * * *

 

 金曜日の昼休み。
 コンビニの袋を広げながら、ララが嬉しそうに言った。

「タクマくんとね、この前プリ撮ったんだ~!」

「……え、プリ?」

「うん。見てみて」

 スマホの画面に映ったのは、柔らかく笑うララと、隣でピースする男。
 顔立ちは確かに整っていた。目元が優しくて、口元に人懐こさがある。
 でも――私の本能が警鐘を鳴らしていた。

 この男、危ない。

 それは根拠のない直感だった。
 でも、ララの笑顔よりも、彼の“笑い方”のほうが気になって仕方なかった。

「ねぇ、サナ。私ね……ちょっと変わったかもしれない」

「……うん」

「でも、楽しいんだよ。誰かのためにオシャレしたり、喜んでもらえるのって、案外悪くないなって思った」

「うん……そっか」

 言葉の一つ一つが、刃のように胸を刺す。
 私は、ララのその笑顔を“誰よりも知っていた”はずだったのに。
 今目の前にいるララが、まるで“別の誰か”に見える。

(このままじゃ、本当に遠くへ行ってしまう)

 焦りだけが、胸に募っていく。

 

 その日の放課後。
 私は駅前の文房具屋に寄る予定だった。
 ちょっとしたプリント用紙を買うだけ。
 でも、その偶然が――決定的な瞬間に立ち会わせた。

 

 通りを歩いていると、視界の端にララの姿が映った。
 小さなカフェの前。
 彼女は誰かと話している。

 隣にいるのは――タクマ。
 スマートなシャツに、無造作な髪。
 だけど私が視線を止めたのは、その手だった。

 タクマは、ララではなく――別の女の子の腰に手を回していた。
 そして、笑っていた。
 ララがあのプリで見せたのと同じような笑顔で。

「……」

 言葉が出なかった。
 心臓がどくんと跳ねて、呼吸が浅くなる。

 私のすぐ横を、制服姿の女子が二人通り過ぎていく。
 そのうちの一人が、携帯を開いてこう呟いた。

「今日も会うんだって、タクマくん。やっぱ彼女多すぎでしょ~」

「でもいいじゃん。全員了承してるんだし。私だって2番目でも全然いいもん」

 
 聞き間違いじゃない。

 私は、カフェの窓越しに笑うタクマの顔を見つめた。
 目が合った気がして、すぐ逸らす。

(あの人が……ララを、変えた)

 指先が震えた。
 逃げるように背を向けて、その場を離れた。

 

 夜、布団の中でスマホを握りしめていた。

 ララに伝えるべきか、それとも、何も言わないべきか。
 頭の中でぐるぐると考えが回る。
 でも――どこかでわかっていた。

 何を言っても、今のララには届かない。

 それどころか、私が“嫉妬してる”ように思われたら。
 親友としての関係すら壊れてしまうかもしれない。

(どうすればいいの……)

 その夜、私は一睡もできなかった。
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