ララのことが好きだった私が、ララの彼氏に操られて、彼の“彼女の一人”にされるまで

夜道に桜

文字の大きさ
4 / 6

4

しおりを挟む
 その日も、ララとは一言も言葉を交わせなかった。

 朝の登校時、校門の前で私を見つけると、ララは小さく手を振った。
 だけどその手には、スマホが握られていて、画面に目を落としながら笑っていた。

(……タクマ?)

 すぐにそう思ってしまう自分がいた。
 勝手に想像して、勝手に苦しくなって、何も言えずにうつむく。

 私が手を振り返す前に、ララはクラスの友達に声をかけられて、そのままどこかへ行ってしまった。

 距離がある。
 気づけば、ララとのあいだに――何層もの壁ができていた。

 

 放課後。
 誰とも言葉を交わさず、私は一人で帰り道を歩いていた。

 信号待ち。
 ぽつんと立っていると、横からふいに声がかかった。

「――やっと見つけた」

 振り返ると、そこに立っていたのは――タクマだった。

 一瞬で、体中が強張る。
 心臓がどくんと跳ねる。

 見間違えるはずがない。
 あのプリの写真、あの街中の姿、あの腕の角度、あの笑顔。

 その“本物”が、目の前に立っていた。

「ごめんね。急に。ちょっとだけ……時間いい?」

 声はやわらかくて、笑顔も人当たりが良さそうだった。
 でも私は、本能でわかっていた。

 この男は――“危ない”。

「……なにか用ですか」

「うん。ララちゃんの親友、サナちゃんでしょ? 一度ちゃんと話しておこうと思って」

「……別に、話すことなんて」

「ララちゃんのこと――心配してるよね?」

 その一言で、私は言葉を失った。

「……っ」

 タクマは、すべてを見透かすように私を見ていた。
 人懐こいはずの目が、どこか冷たかった。

「近くにカフェあるんだけど、ちょっとだけ話せない? ララちゃんのこと、正直に話すから」

「……」

 断るべきだと思った。
 だけど、私はうなずいてしまっていた。

 

 * * *

 

 連れてこられたのは、繁華街の外れにある、人気のない雑居ビルの中のカラオケだった。

「……カフェじゃないんですか?」

「人が多いと落ち着かないから。ここ、よく使ってるんだ」

 そう言って笑ったタクマは、さっさと個室のドアを開けた。

(……帰ろう)

 そう思って、体を引こうとした瞬間――

「どうして、ララちゃんが俺に夢中かわかる?」

 その声に、私は足を止めた。

 タクマはスマホを取り出し、画面を私に見せた。

 そこには――何か見たことのない、奇妙なアプリの画面が映っていた。

 中央に、大きな写真が並んでいる。
 全員、見覚えのある女の子たち。

「この子も、この子も、この子も。みんな“俺の彼女”。でもケンカになったことは一度もないよ」

 タクマは、スライドする指を止めて、私の顔を見た。

「だって、みんな“同じ気持ち”になってるからさ。俺にとって、理想の女になってくれる。……このアプリで」

「……は?」

「信じられないよね。俺も最初はそうだった。……でもね、“ちょっとした仕組み”があれば、人の心なんて簡単に変えられる」

 私は言葉を失った。
 立ち尽くす私に、タクマは一歩近づいてくる。

「試してみようか?」

「……は?」

 スマホをこちらに向けたまま、タクマはニッと笑う。
 次の瞬間――パシャ、とシャッター音が響いた。

「……っ! なに勝手に撮って……!」

「今の写真、プロフィール登録した。これでもう――サナちゃんは、俺の女」

「……っ!?」

 スマホの画面が、奇妙な回転アニメーションとともに“登録完了”と表示された。

 次の瞬間だった。

 ――ガンッ、と頭の内側で鈍い衝撃が走る。

「……っ、あ……ああっ……!」

 視界が揺れる。
 身体が言うことを聞かない。
 痛みというより、“何かが書き換えられていくような”異常。

(なに……なにこれ……!?)

 タクマの姿が、ぼやけて――
 でも、その笑顔だけが、鮮明に焼き付いていた。

「ようこそ、サナちゃん」

 優しい声で、タクマは囁いた。

「これからは――ちゃんと、俺のことだけ考えて」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

処理中です...