【完結】水と夢の中の太陽

エウラ

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第三章 辺境編

いざ行かん 果ての森へ!

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「昨夜、クラビスに寝かせて貰えなかったんだって?」

顔を見て開口一番、フェイが言った言葉にカーーーッと顔が熱くなるのが分かった。

今は昼過ぎ。
そう、結局クラビスの宣言通り朝までコースで起きたのがさっき。
夜も朝もご飯抜きでさすがに死にそうで空腹で目が覚めた。

うっかり昼御飯も食べ損ねる所だったよ。

で、クラビスに甲斐甲斐しくお世話されて、今ココ。

遅い昼御飯も食べて、漸く降りてきたところでのフェイの一言。

「でもまあ、自業自得だよね」
「うっ、分かってるよ。・・・・・・フェイ達もごめんなさい。もうあんなコトしないからね」
「分かればいいんだよ。皆、心配したんだからな。自分の体を大事にしろよ」
「うん」

クラビスも、皆が忠言してくれた事を受けて、漸くホッと一安心したようだ。



「おう、漸く起きられたのか?」

サロンでお茶を頂いていたら、アーサーがやって来た。

その台詞・・・もしかして一晩中『あ”ーーー』な事をしてたことを邸中の皆が知って・・・?

にっこり笑顔で無言で応えてくれた。

ぎゃあああーーー!!

穴があったら入りたいぃ・・・・・・。



今日は一日休暇にあてて、英気を養うそうだ。
通りで皆、ゆったりしているはずだ。

・・・・・・うん、クラビスもしっかり英気を養ったよね?
俺?
気持ち的には養ったかもね・・・・・・。



そんなこんなで次の朝。

準備万端で朝食後に出発したのだが。

さすがに馬車では向かえないので各々馬での移動になって、俺はクラビスとタンデムしたんだけど。

その前に馬との顔合わせでまたもや俺がやらかしてしまって。
一匹?一頭?づつ撫でくり回して時間を食ってしまいました。

スミマセン!!

予定より1時間近く遅くなってしまって、思わず身体強化の魔法を無意識にかけて移動速度を上げてしまった。
森の手前まで来てから、あれ?って思ったんだけど。

皆、呆れていた。

「まあまあ、予定通りになったんだからヨシとしよう」

アーサーが笑って許してくれて助かったよ。


果ての森は何となくどんよりとした空気で重い感じがする。
実際濃くて重いんだろう。
昼間なのに、木々が生い茂ったせいというよりは、黒い霧が立ちこめていて暗いようだ。

今日は森には入らず、目撃情報のあった場所を見てまわる。
その場所を確認して、手がかりがないか見るのだそうだ。

「俺が魔法で探索してみようか?」

たぶんいけるよな。ソナーみたいな感じで魔力を広げる感じで。

「出来るのか?って・・・アルカスならやれるな」
「うん、たぶん大丈夫。マップで範囲指定してからやるけど、どこら辺を見る?」

周りに視認できるようにマップを展開した。

「・・・・・・お前達がやろうとしてることに口を出す気はないが、常識外れで怖いんだが」

アーサーが苦笑した。
まあ、こっちの常識をまだよく学んでないのでご勘弁を!(ほとんど寝てたので!)

「とりあえず入り口付近をここからこの辺まで探索しようか」
「そうだな。最近の目撃情報はこの辺りが多いから」

そう言ってアーサーが指差した所は結構浅い所で、普通なら有り得ないそうだ。
確かにグリフォンなんてちょくちょく出てたら騎士団も大変だろう。

「んじゃ、やりますか」

探索魔法を展開するが、何も引っかからない。
え?
生き物の気配がないんだけど・・・。

「クラビス、アーサー・・・何もないよ?」
「そうか。危険はないということかな?」
「・・・危険どころか、生き物がいない」

俺の言葉に皆、はっとした。

だって、本当に、小動物的なモノも感じられない。
コレって逆に異常じゃねえの?

「・・・・・・アルカス、もっと奥までいけるか?」

クラビスが思案顔で尋ねる。
その顔も格好いい!
じゃあなくて、らじゃ。

・・・・・・うーん。もっと奥まで。
今度は空撮してるみたいに映像を映しながら。

・・・あ、何か引っかか・・・・・・。

「・・・ひっ!」
「アルカス?!」

びびって探索切っちゃった。
アレって、アレって・・・・・・。

顔が蒼白なのは気付いていたが、無意識に震えていたらしい。
クラビスがぎゅっとしてくれて、初めて気付いた。

「アルカス?! どうしたんだ?!」

フェイやアーサー達が心配して声をかけてくるが、俺は声を出さずに、さっき探索で見えた映像を再生した。

ソレを見た皆が息を飲んだのが分かった。




件のグリフォンが、倒れていた。
いや、グリフォンのみならず、周囲にいるモノ全てが死んでいた。

ーーーコカトリスの猛毒にやられたのだ。

クラビス達は、グリフォンが何かに追い立てられて浅い所に来ているという可能性を少なからず抱いていたが、よもや相手がコカトリスとは想像していなかったのだ。


コカトリス。

アルカスも日本でファンタジー系の小説やゲームで知識はある。
見た目もソレと違わない。
たぶん能力もそうなんだろう。

が、なんの心構えもなく目の前に現れた凄惨な光景は、いくら状態異常無効化があったとしてもアルカスにはキツいモノがあった。

皆が唖然とする中、クラビスの腕の中でアルカスは暫く震えが止まらなかった。
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