男前で何が悪い!

エウラ

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15 魔獣討伐依頼 2

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セッカは村の周囲を案内して貰いながら探索魔法で辺りを確認していた。

「セッカさんはさぁ・・・幾つなの?」
「え? ああ、最近19歳になったところだよ」
「---え?! 本当?!」

ヨウはもの凄く驚いてそう言った。
失礼な。

「本当だよ。そりゃあ、成人してからはそんなに背は伸びてないけど。これでも170あるんだけど」
「・・・・・・冒険者って、そんなにヒョロくてもやっていけるんだ」

その馬鹿にしたような言葉に若干イラッとしながらセッカは言った。

「そんなわけ無いだろ。俺の見た目だけで判断してると・・・」

そして振り向き様にナイフをヨウの左頬すれすれに飛ばした。

「---っ!! なっ、何す・・・?!」
「・・・後ろ。一角兎ホーンラビット、ツッコまれたら死ぬぞ」
「・・・・・・え? ---っひっ!!」

セッカが指差す方向を振り返って見たヨウは、眉間にナイフを突き立てて絶命している魔獣に気付き、思わず悲鳴を上げそうになった。

セッカはそれに構わず近付き、ナイフを抜くと浄化魔法で綺麗にして、一角兎と一緒にインベントリにしまった。

「これくらい息を吸うように対処出来ないと」

セッカがそう言っている側から今度は猿の魔獣モンチーが数頭、後方の木の上から降ってきたので雷の魔法で撃ち落とす。

---もちろん無詠唱で。

「速攻で死ぬぞ」

笑ってない左目でにっこりと言われてゾクッと背中に悪寒が走ったしたヨウは首がもげそうなほど頷いていた。


大人しくなったヨウと並んで歩きながら、セッカは要の地点に魔導具を打ち込み、魔法で固定する。
これで取り外しは出来ない。

ぐるっと廻って4カ所に設置し、その間もずっと探索魔法を使って調べていたが・・・。

---驚くほど静かだな。

幸いなことに、この間襲われてから今日までまだ一度も魔獣達は襲ってきていないそうだ。

森の中にも気配はほとんど無い。

---いや、気になる反応はあるが、今はあまりにも小さくて普通では感じられないほどの違和感・・・。
おそらくコハクも気付いているだろう。
村に戻ったら要確認だな。


そうして大人しくなったヨウと村に戻る。

「あっ、お帰りなさい・・・、どうしたんだ、ヨウ?」

行きとは違い静かなヨウに村人達が心配して声をかけた。

---少し脅かしすぎたか。

自分セッカを見て、これなら俺でも、なんて安易な気持ちで冒険者になって早死にでもされたら後味が悪いと思って、わざと力を見せつけたのだが・・・。

「---かった」
「・・・え?」

震える声でぼそっと呟くヨウに、皆が近付いて声をかけようとして・・・。

「---凄かったんだよ、セッカさん! 一角兎をナイフで一撃でさ、木の上から襲ってきたモンチーは雷の魔法で見もしないでちゃちゃっとやっつけちゃうしさ!!」

急に興奮した声でガバッと顔を上げて子供らしくワクワクしたような仕草で語り出して、皆がポカンとした。

「---さすがAランクだけあるって思ったよ!! もの凄く強いんだ! ユーマ兄ちゃん、こんな凄い冒険者連れて来てくれてありがとう!!」
「ど、どういたしまして・・・?」

戸惑うユーマ達を他所にワイワイと語るヨウを置いて離れるセッカ。

「・・・そういう褒め言葉は、聞き慣れない・・・」

---恥ずかしい。

そそくさと村長の元へ行くと、結界の魔導具を設置して固定してきたから村の中なら心配はいらないことを告げて、村の適当な場所にテントを張る許可を求めた。

「それなら私共の家でも・・・」

サクマ村長はそう言ったが、セッカは断った。
テントの方が防犯にも優れているのだ。

「お気遣いなく。テントはしっかりとしたものを持っているので、場所さえお借りできれば大丈夫です」
「そうですか。でもまあ、あばら屋よりもテントの方がいいやもしれませぬ。あちらは畑ばかりなのでよろしければそちらを。その方が静かで落ち着きましょう」
「ありがとうございます。お借りします」

村長に断ってそちらへ向かう。

その時、コハクがひらりと舞い降りてセッカの肩に止まった。

ちょうど二人きりになったので、声を落としながら話す。

「お疲れ、どうだった?」
『森の奥に微かだがイヤな気配が少し』
「・・・・・・やはりか」
『向こうも様子を窺っているようだったな』
「・・・そうか。ひとまずテントを張ってから情報を共有しよう。・・・・・・腹が減った」
『おう、我も!!』

魔法で整地したところにテントを張ると、竈もインベントリから出して火を付ける。

「何、食う?」
『肉に決まっとろうが!!』
「・・・・・・たまには野菜も食えよ。最近体重が増えたんじゃないか? 肩に乗られるとやや重い気がするが・・・」

そう言うと顔を逸らしたコハク。
オイコラ自覚あるんかい。

『うっ・・・・・・うむ、セッカの料理なら・・・食わんことも無い・・・セッカの料理は今までで一番美味いからな!!』

気まずそうながらもコハクがそう言ってセッカの料理の腕を褒めてくれたので、セッカは照れ隠しに笑った。

「---っふ、ありがとう。じゃあ奮発して、さっき狩った一角兎の肉を照り焼きにするか」
『---!! やった、照り焼き!! ヒャッハー!!』
「オイコラ、火力がヤバくなるから翼で煽るな! 鍋やフライパンにゴミが入るだろう! 落ち着けアホ!!」

さっきまでヒソヒソ話で静かだったコハクが不意に羽根を広げてバッサバッサと跳ね回り、見るからにウキウキしていた。

漏れ聞こえた会話で、コハクがセッカの料理に喜んでいるだろう様子を遠目で見ていた村人達は、二人のやり取りを微笑ましそうに見ていたのだった。

---少しして、もの凄く良い匂いにつられてやって来た村人達にセッカが料理のレクチャーをする羽目になるのだが、今は知る由もない。









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